[PC54] 疲労感の高い大学生の特徴と緩和法の検討
ストレスコーピングとレジリエンスの観点から
キーワード:大学生, 疲労, ストレスコーピング
目 的
疲労感を自覚している人の割合は56%で,そのうちの半数を超える人が半年以上疲労感の続く慢性疲労に悩んでいる(文部科学省,2004)。大学生では,59.2%が慢性的に疲労を感じていた(赤澤ら,2001)。また,大学生の疲労感に与える要因には,ストレスコーピングの「自責」とレジリエンスの「他者心理の理解」が見出されている(山本,2017)。大学生にとって疲れの自覚やコントロールは,卒業後社会人として就労を継続していく上で非常に重要となる。そこで,大学生の疲労感の緩和法を探索すべく,疲労度の程度によって大学生を3群に分類し,ストレスコーピングやレジリエンスなどの要因の差の検討を行なった。
方 法
1.調査対象者
大学生304名。全回答を得られたのは267名で,回答率は88.0%(男性151人,女性116人)。
2.調査手続き
2017年1月と2018年1月に実施した。講義終了後,学生に研究内容を説明し,同意が得られた者に質問紙を配布し,記入後に回収を行なった。
3.調査票の構成
(1)フェイスシート(学年,性別,年齢)
(2)質問紙尺度
Checklist Individual Strength(CIS)日本語版(Aratake et al., 2007),Hospital Anxiety and Depression Sacle(HAD)日本語版(八田ら,1998),Ways of Coping Checklist(WCCL)日本語版(Nakano,1991),二次元レジリエンス要因尺度(Bidimensional Resilience Scale: BRS)(平野,2010)を用いた。
結 果
1.疲労度による3群分類
CISの合計得点の平均値±0.5SDにより,大学生をCIS高群(84名),CIS中群(95名),CIS低群(88名)の3群に分類した。
2.疲労度による3群比較
HAD,WCCL,BRSの各下位尺度において,疲労度の3群間で差があるかどうか検討するため,分散分析を行なった。その結果,(1)HADの「不安」「抑うつ」,WCCLの「希望的観測」において1%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS高群>CIS中群・低群であった。(2)WCCLの「回避」において5%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS高群>CIS低群であった。(3)BRSの「統制力」において1%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS低群>CIS中群>CIS高群であった。(4)BRSの「社交性」において5%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS低群>CIS中群>CIS高群であった。(5)WCCLの「積極的認知対処」,BRSの「楽観性」「他者心理の理解」において1%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS低群>CIS高群であった。(6)BRSの「行動力」において1%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS低群・中群>CIS高群であった。(7)BRSの「問題解決志向」において1%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS低群>CIS中群・高群であった。
考 察
1.疲労感の高い大学生の特徴
疲労感と同時に不安や抑うつなどの精神症状が高く,身体面でのケアだけでなく,心理面でのケアの必要性が示唆された。ストレスコーピングでは,非建設的な対処法である「希望的観測」「回避」が高く,逆に建設的な対処法である「積極的認知対処」が低かった。レジリエンスでは,資質的・獲得的要因の双方が低く,「疲労感」に対して自分自身で柔軟に対処することの難しさが示唆された。
2.疲労感の緩和法
不安や抑うつなどの精神症状が高いことや,WCCLの「積極的認知対処」が低いことから,「疲労感」を悲観的な一側面で捉え,肯定的・多面的な視点をもつことの難しさが考えられる。そのため,「疲れ」の捉え方のバリエーションを増やし,認知の幅を広げていくことが疲労感の緩和に役立つと考える。また,疲れに対して具体的に対処する方法を知り,自己コントロールすることが可能であることを実体験することも有効であると考える。これは,BRSの獲得的要因の一つである「問題解決志向」を伸ばすことにもつながるだろう。
疲労感を自覚している人の割合は56%で,そのうちの半数を超える人が半年以上疲労感の続く慢性疲労に悩んでいる(文部科学省,2004)。大学生では,59.2%が慢性的に疲労を感じていた(赤澤ら,2001)。また,大学生の疲労感に与える要因には,ストレスコーピングの「自責」とレジリエンスの「他者心理の理解」が見出されている(山本,2017)。大学生にとって疲れの自覚やコントロールは,卒業後社会人として就労を継続していく上で非常に重要となる。そこで,大学生の疲労感の緩和法を探索すべく,疲労度の程度によって大学生を3群に分類し,ストレスコーピングやレジリエンスなどの要因の差の検討を行なった。
方 法
1.調査対象者
大学生304名。全回答を得られたのは267名で,回答率は88.0%(男性151人,女性116人)。
2.調査手続き
2017年1月と2018年1月に実施した。講義終了後,学生に研究内容を説明し,同意が得られた者に質問紙を配布し,記入後に回収を行なった。
3.調査票の構成
(1)フェイスシート(学年,性別,年齢)
(2)質問紙尺度
Checklist Individual Strength(CIS)日本語版(Aratake et al., 2007),Hospital Anxiety and Depression Sacle(HAD)日本語版(八田ら,1998),Ways of Coping Checklist(WCCL)日本語版(Nakano,1991),二次元レジリエンス要因尺度(Bidimensional Resilience Scale: BRS)(平野,2010)を用いた。
結 果
1.疲労度による3群分類
CISの合計得点の平均値±0.5SDにより,大学生をCIS高群(84名),CIS中群(95名),CIS低群(88名)の3群に分類した。
2.疲労度による3群比較
HAD,WCCL,BRSの各下位尺度において,疲労度の3群間で差があるかどうか検討するため,分散分析を行なった。その結果,(1)HADの「不安」「抑うつ」,WCCLの「希望的観測」において1%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS高群>CIS中群・低群であった。(2)WCCLの「回避」において5%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS高群>CIS低群であった。(3)BRSの「統制力」において1%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS低群>CIS中群>CIS高群であった。(4)BRSの「社交性」において5%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS低群>CIS中群>CIS高群であった。(5)WCCLの「積極的認知対処」,BRSの「楽観性」「他者心理の理解」において1%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS低群>CIS高群であった。(6)BRSの「行動力」において1%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS低群・中群>CIS高群であった。(7)BRSの「問題解決志向」において1%水準で有意差が見られ,多重比較の結果,CIS低群>CIS中群・高群であった。
考 察
1.疲労感の高い大学生の特徴
疲労感と同時に不安や抑うつなどの精神症状が高く,身体面でのケアだけでなく,心理面でのケアの必要性が示唆された。ストレスコーピングでは,非建設的な対処法である「希望的観測」「回避」が高く,逆に建設的な対処法である「積極的認知対処」が低かった。レジリエンスでは,資質的・獲得的要因の双方が低く,「疲労感」に対して自分自身で柔軟に対処することの難しさが示唆された。
2.疲労感の緩和法
不安や抑うつなどの精神症状が高いことや,WCCLの「積極的認知対処」が低いことから,「疲労感」を悲観的な一側面で捉え,肯定的・多面的な視点をもつことの難しさが考えられる。そのため,「疲れ」の捉え方のバリエーションを増やし,認知の幅を広げていくことが疲労感の緩和に役立つと考える。また,疲れに対して具体的に対処する方法を知り,自己コントロールすることが可能であることを実体験することも有効であると考える。これは,BRSの獲得的要因の一つである「問題解決志向」を伸ばすことにもつながるだろう。