[PC55] 保育士からみた“気になる保護者”の行動に関する検討
Keywords:保育士, 保護者, 養育態度
問題と目的
近年,わが国における保育需要はますます増加している。保育士には子育て支援全般に対する支援的,社会的役割が求められるようになり,その重要性の高まりとともに負担も大きくなっている(田中他,2012)。先行研究では,不適切な態度をとる保護者によって,保育士による育児支援が阻害されることがあることが指摘されている(花田,2004)。実際,保育士は日常的に様々な“気になる保護者”と出会い,対応していると思われる。しかし,保育士がどのような行動をとる保護者にどの程度出会っているのかについては十分に検討されてこなかった。そこで本研究では,第一に,保育士が気になる行動をとる保護者に出会う頻度を測定するための尺度を作成することを目的とする。第二に,保育士が担当している子どもの年齢によって,“気になる保護者”に出会う頻度が異なるかについて検討することを目的とする。
方 法
調査協力者 保育士80名(男性3名,女性77名)を対象として質問紙調査を実施した。平均年齢は37.80歳(SD=8.34),保育士としての平均経験年数は15.19年(SD=7.66)であった。
調査内容 (1)保育士からみた気になる保護者の行動:黒川他(2014),花田(2004)などを参考に気になる保護者の行動に関する質問項目を作成して用いた。20項目に対し,「全く出会わない(1点)」~「よく出会う(4点)」の4件法で回答を求めた。(2)現在の職場で担当している子どもの年齢:0歳~5歳児のうち,保育士として主に担当している子どもの年齢について回答を求めた。なお調査時には調査の趣旨を説明し,調査票の表紙には本調査が無記名により実施されること,回答は統計的に処理され個人が特定されないことを明記した。
結果と考察
気になる保護者の行動尺度20項目について因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行った。負荷量が.35未満であった6項目を削除し,残りの14項目を用いて,再度同様の方法で因子分析を行った。その結果,4因子解が最もまとまりがよく,適切と判断された(Table1)。初期の固有値は3.98~1.30で,累積寄与率は59.46%であった。
下位尺度ごとにCronbachのα係数を算出した結果,第4因子のα係数が.572と低かった。今後は,項目内容や尺度構成についてさらに検討する必要があると考えられる。
次に,調査協力者を0~2歳児担当群(N=40)と3~5歳児担当群(N=34)に分類した。そして,各下位尺度得点に2群間で差がみられるかを検討するため,t検定を行った。その結果,すべての下位尺度において有意な差はみられなかった(Table2)。保育士は,担当の子どもの年齢の高低によらず,同じ程度の頻度でこれらの気になる保護者に対応していると考えられる。今後は,調査協力者を増やしたうえでさらに検討する必要があるだろう。
近年,わが国における保育需要はますます増加している。保育士には子育て支援全般に対する支援的,社会的役割が求められるようになり,その重要性の高まりとともに負担も大きくなっている(田中他,2012)。先行研究では,不適切な態度をとる保護者によって,保育士による育児支援が阻害されることがあることが指摘されている(花田,2004)。実際,保育士は日常的に様々な“気になる保護者”と出会い,対応していると思われる。しかし,保育士がどのような行動をとる保護者にどの程度出会っているのかについては十分に検討されてこなかった。そこで本研究では,第一に,保育士が気になる行動をとる保護者に出会う頻度を測定するための尺度を作成することを目的とする。第二に,保育士が担当している子どもの年齢によって,“気になる保護者”に出会う頻度が異なるかについて検討することを目的とする。
方 法
調査協力者 保育士80名(男性3名,女性77名)を対象として質問紙調査を実施した。平均年齢は37.80歳(SD=8.34),保育士としての平均経験年数は15.19年(SD=7.66)であった。
調査内容 (1)保育士からみた気になる保護者の行動:黒川他(2014),花田(2004)などを参考に気になる保護者の行動に関する質問項目を作成して用いた。20項目に対し,「全く出会わない(1点)」~「よく出会う(4点)」の4件法で回答を求めた。(2)現在の職場で担当している子どもの年齢:0歳~5歳児のうち,保育士として主に担当している子どもの年齢について回答を求めた。なお調査時には調査の趣旨を説明し,調査票の表紙には本調査が無記名により実施されること,回答は統計的に処理され個人が特定されないことを明記した。
結果と考察
気になる保護者の行動尺度20項目について因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行った。負荷量が.35未満であった6項目を削除し,残りの14項目を用いて,再度同様の方法で因子分析を行った。その結果,4因子解が最もまとまりがよく,適切と判断された(Table1)。初期の固有値は3.98~1.30で,累積寄与率は59.46%であった。
下位尺度ごとにCronbachのα係数を算出した結果,第4因子のα係数が.572と低かった。今後は,項目内容や尺度構成についてさらに検討する必要があると考えられる。
次に,調査協力者を0~2歳児担当群(N=40)と3~5歳児担当群(N=34)に分類した。そして,各下位尺度得点に2群間で差がみられるかを検討するため,t検定を行った。その結果,すべての下位尺度において有意な差はみられなかった(Table2)。保育士は,担当の子どもの年齢の高低によらず,同じ程度の頻度でこれらの気になる保護者に対応していると考えられる。今後は,調査協力者を増やしたうえでさらに検討する必要があるだろう。