日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

2018年9月16日(日) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD47] 完璧主義と対人適応感の関係に自尊感情が及ぼす影響

菊池瞳1, 安藤寿康2 (1.慶應義塾大学大学院, 2.慶應義塾大学)

キーワード:自尊感情, 対人適応感, 完璧主義

目  的
 本研究の目的は,大学生の完璧主義と自尊感情が対人関係にもたらす影響を検討することである。完璧主義な人は自分のすべきことはてきぱきこなすが,相手に対する要求水準も高いためにトラブルを発生しやすくしてしまう,また周りの求めるニーズと自分の追求する完璧さのずれによって周囲からの評価を受けにくいなどの対人関係上の問題があげられている。
 しかし,先行研究において完璧主義と自尊感情の双方がどのように関係しあい,対人関係の認知に影響を及ぼすかについての検討はなされていない。そのため本研究では,自尊感情が完璧主義(TCIにおける固執の下位尺度)と対人適応感の間にもたらす影響について検討した。

方  法
調査方法
 2017年7月上旬から10月中旬にかけて大学生212名(男性: 58名,女性: 154名; M = 20.66,SD = 1.40,レンジ: 18-26歳)を対象に質問紙調査を行った。質問紙は筆者が調査協力者に直接回答を依頼し,配布・回収を行った。
使用した尺度
 ローゼンバーグ自尊感情尺度日本語版,10項目,4件法(桜井,2000)
 対人的疎外感尺度,21項目,5件法(杉浦,2000; 2007)
 完璧主義得点(日本語版TCI-Rにおける固執の下位尺度),5項目,5件法(Kijima,N.,Tanaka,E.,Murohashi,H.,& Kitamura,T.,submitted)を使用した。

結  果
 強制投入法による階層的重回帰分析を行った。従属変数に対人的疎外感を投入した。Step1に独立変数として中心化したTCI(固執)の下位尺度である完璧主義得点,Step2に調整変数として中心化した自尊感情得点を投入し,Step3に完璧主義×自尊感情の交互作用項を投入した。調整済みR2係数はStep3において最大となり,AICも同様に交互作用項を投入したモデルが最適であった。対人的疎外感に対し自尊感情のみ主効果が有意であり(p < .001),交互作用も有意であったため(p < .05),単純傾斜分析を用いて下位検定を行った(Figure 1)。

考  察
 自尊感情が高い場合には完璧主義が高くなるほど対人適応感が高まる傾向を示した。しかし,自尊感情が低い場合には完璧主義が高いほど対人関係における不適応感が高まった。
 本研究において,対人適応感は完璧主義だけでなく自尊感情の調整によって変化することが明らかとなった。目的で挙げたように,完璧主義であることは対人関係に軋轢を生むと考えられる傾向にある。しかし,完璧主義が高い場合,完璧主義得点が低い場合よりも顕著に,自尊感情の高低が対人関係における適応感に影響を与えることが結果において示された。つまり,対人関係における適応感は完璧主義という一側面だけでは説明されず,自尊感情の影響も大きく関係することが明らかになった。