[PE19] 台湾の大学生を対象にした自伝的記憶の感情価に関する研究
Keywords:自伝的記憶, 感情価, 台湾の大学生
問題・目的
これまでの一連の研究から,小,中,高校時代などの,「時代」をもとに自伝的記憶を想起させる場合(兵藤・野内,2004, 2005, 2006),および,「親」や「進路」といった「想起テーマ」をもとに想起させる場合(兵藤・佐藤,2014)において,想起された出来事の感情価ごとの割合は快・不快・中立の順にほぼ5:3:2になる,あるいは快な出来事が不快な出来事より多く想起されるという結果が得られている。これらの結果は,斎藤(1993, 1994)と一致する一方,自伝的記憶の想起の安定性を検討した神谷(1993,1994)のように不快な出来事の方が快な出来事よりも多く想起されたという結果も報告されている。
本研究では,台湾の大学生を調査対象として,中学時代,高校時代に関する自伝的記憶の想起された出来事の感情価について検討した。
方 法
実験参加者 36名(男性,9名,女性27名,平均年齢20.28歳,範囲18-23歳)
実験デザイン 1要因2水準(想起テーマ:中学時代・高校時代; within)の参加者内計画であった。
手続き 実験は大学の講義後,集団法で実施された。自伝的記憶想起課題では,ページ上部に書かれた「中学時代」あるいは「高校時代」のいずれかの想起テーマに関する「現在の自己に影響を与えた自分自身に起こった出来事」を5分間,思い出した順に,できるだけ多く記述するよう実験参加者に求め,それぞれの出来事について1行ずつ記述させた。自伝的記憶想起課題および想起後の気分評定を終えた後は,想起された出来事すべてに対して感情価(1とても不快~5とても快),重要度(1全く重要でない~5とても重要である),鮮明度(1全く鮮明でない~5とても鮮明である)を評価させた。実験に要した時間は20分程度であった。
結 果
記入漏れのあった2名のデータを分析から除外した。Table 1は想起テーマごとの想起数,感情価,重要度,鮮明度の平均値および標準偏差を示したものである。想起数,感情価,重要度及び鮮明度について,それぞれ(中学時代・高校時代)を要因とした対応のあるt検定を行った結果,想起数においては有意な差は認められなかった(t(35) = 0.33, n.s.)。感情価においては高校時代のほうが感情価の評定値が高い傾向にあった(t (69) = 1.90, p = .07)。重要度と鮮明度において,それぞれ有意な差が認められ((t(35) = 2.61, p < .05);(t(35) = 2.15, p < .05.))。「高校時代」のほうが「中学時代」よりも重要度鮮明度が高かった。
次に,感情価評定の値ごとに,評定値1,2を“不快”,評定値3を“中立”,評定値4,5を“快”として分類を行い各条件の感情価ごとの想起率を算出した。(Table 2)
考 察
これまでの一連の結果と一致し,台湾の大学生においても感情価に関しては,快:不快:中立の順であることが確認できた。ただし,中学校においては,不快が日本のデータと比べて多いことが注目される。
これまでの一連の研究から,小,中,高校時代などの,「時代」をもとに自伝的記憶を想起させる場合(兵藤・野内,2004, 2005, 2006),および,「親」や「進路」といった「想起テーマ」をもとに想起させる場合(兵藤・佐藤,2014)において,想起された出来事の感情価ごとの割合は快・不快・中立の順にほぼ5:3:2になる,あるいは快な出来事が不快な出来事より多く想起されるという結果が得られている。これらの結果は,斎藤(1993, 1994)と一致する一方,自伝的記憶の想起の安定性を検討した神谷(1993,1994)のように不快な出来事の方が快な出来事よりも多く想起されたという結果も報告されている。
本研究では,台湾の大学生を調査対象として,中学時代,高校時代に関する自伝的記憶の想起された出来事の感情価について検討した。
方 法
実験参加者 36名(男性,9名,女性27名,平均年齢20.28歳,範囲18-23歳)
実験デザイン 1要因2水準(想起テーマ:中学時代・高校時代; within)の参加者内計画であった。
手続き 実験は大学の講義後,集団法で実施された。自伝的記憶想起課題では,ページ上部に書かれた「中学時代」あるいは「高校時代」のいずれかの想起テーマに関する「現在の自己に影響を与えた自分自身に起こった出来事」を5分間,思い出した順に,できるだけ多く記述するよう実験参加者に求め,それぞれの出来事について1行ずつ記述させた。自伝的記憶想起課題および想起後の気分評定を終えた後は,想起された出来事すべてに対して感情価(1とても不快~5とても快),重要度(1全く重要でない~5とても重要である),鮮明度(1全く鮮明でない~5とても鮮明である)を評価させた。実験に要した時間は20分程度であった。
結 果
記入漏れのあった2名のデータを分析から除外した。Table 1は想起テーマごとの想起数,感情価,重要度,鮮明度の平均値および標準偏差を示したものである。想起数,感情価,重要度及び鮮明度について,それぞれ(中学時代・高校時代)を要因とした対応のあるt検定を行った結果,想起数においては有意な差は認められなかった(t(35) = 0.33, n.s.)。感情価においては高校時代のほうが感情価の評定値が高い傾向にあった(t (69) = 1.90, p = .07)。重要度と鮮明度において,それぞれ有意な差が認められ((t(35) = 2.61, p < .05);(t(35) = 2.15, p < .05.))。「高校時代」のほうが「中学時代」よりも重要度鮮明度が高かった。
次に,感情価評定の値ごとに,評定値1,2を“不快”,評定値3を“中立”,評定値4,5を“快”として分類を行い各条件の感情価ごとの想起率を算出した。(Table 2)
考 察
これまでの一連の結果と一致し,台湾の大学生においても感情価に関しては,快:不快:中立の順であることが確認できた。ただし,中学校においては,不快が日本のデータと比べて多いことが注目される。