日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-71)

2018年9月16日(日) 13:30 〜 15:30 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:30~14:30 偶数番号14:30~15:30

[PE28] 初回面接場面における印象評定要因について

井上清子 (文教大学)

キーワード:面接, 印象, 非言語

はじめに
 本研究では,ピアカウンセリングというface to face communicationの面接場面において,初対面のクライエントが受けるカウンセラーの印象の評定要因について明らかにすることを目的とする。

方  法
(1)対象
 「カウンセリング」の授業を受講中の大学1,2年生のうち,研究の目的と方法について説明し同意が得られた80名(男性22名,女性58名)をクライエントとして質問紙調査の対象とした。
ピアカウンセラーは,「心理アセスメント実習」の授業を受講中の3,4年生50名。ピアカウンセラーは,全員1年時に「カウンセリング」の授業を履修し単位を取得している。
(2)方法
 事前に,クライエントとピアカウンセラーの組み合わせを記した用紙を配布し,初対面の相手であることを対象者に確認した。
 全15回の授業の7回目を合同授業として,「大学生活と進路について」というテーマで,20分間の対面法による個人面接を行った。クライエントとピアカウンセラーの割合から,一人のピアカウンセラーが1-2名のクライエントを担当した。面接後に,対象者に質問紙への回答を求めた。
(3)質問紙の構成
①ピアカウンセラーの第一印象(出会いから1分くらいの印象)の善し悪しを5件法で問う
②その理由を,Ivey・Ivey(2004),日本カウンセラー協会(2004),井上・石川(2011)などの先行研究を基に作成した「表情」「視線」「姿勢・体の動き」「容姿」「話し方」「傾聴・はげまし」「質問」「反映・共感」「はげまし」「質問」「反映・共感」「支持・受容」「自己開示」「情報提供・助言」「その他」の12項目の中から3つまで選び,その具体的な様子の記述を求める。
③カウンセリング全体を通してのカウンセラーの印象の善し悪しを5件法で問う。
④その理由を前記の12項目の中から3つまで選択し,その具体的な様子の記述を求める。

結果と考察
(1)カウンセラーに対する第一印象とその要因
 カウンセラーの第一印象を5件法で問うたところ,「とても悪い」「やや悪い」「どちらともいえない」と回答した者はおらず,「やや良い」10名(12.5%),「とても良い」70名(87.5%)と,全員がカウンセラーに対して良い第一印象を持っていた。
 そのような第一印象の評定要因として,一番多かったものは「表情」で73名(91.3%)の者が選択していた。さらに,「表情」と回答した者の約9割(91.8%)が具体的には,「笑顔」と記述していた。
 2番目に多かった要因は,「話し方」44名(55%)であった。具体的には「聞きやすい」「優しい」「丁寧」「はっきり」などが記述されていた。
 3番目に多かった要因は,「視線」39名(48.9%)で,具体的には全員が「目を見て話していた」というような内容だった。
 これらの結果から,面接における第一印象の評定要因としては,言語内容よりも,表情,視線,話し方などの,非言語や準言語の割合が高いことが確認された。
(2)全般的印象とその要因
 カウンセラーの面接全体を通しての印象を問うたところ,「やや良い」6名(7.5%),「とても良い」74名(92.5%)と全員がカウンセラーに対して良い印象を持っていた。
 その評定要因として一番多かったものは,やはり「表情」41名(51.3%)であった。具体的には,「笑顔」が33名(「表情」を選択した者の80.5%)が一番多かったが,そのほかに「優しい表情」「会話を一緒に楽しんでいる表情」「気持ちに添って変わる表情」などの記述もみられた。
2番目に多かったのは「反映・共感」33名(41.3%),3番目は「情報提供・助言」32名(40%)であった。
 面接全体を通しての印象評定要因としては,非言語や準言語に加えて,言語内容も重要であるといえるだろう。言語内容としては,クライエントによって話す内容が違っており,それに応じて各カウンセラーが臨機応変に様々な技法を使ったために,印象評定の要因となった技法にもばらつきが出たものと推測された。

まとめ
 面接における第一印象の評定要因としては,表情の影響が圧倒的に大きく,そのほかにも非言語や準言語の要因が多かった。面接全体の印象評定には,言語内容も重要となるが,表情は面接全体を通しての印象評定にも関わっていることが確認された。