日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-71)

2018年9月16日(日) 13:30 〜 15:30 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:30~14:30 偶数番号14:30~15:30

[PE30] 中学校英語で年間を通したライティング指導

OREO writingを用いて

道田泰司 (琉球大学)

キーワード:批判的思考, ライティング

 第二言語習得において,批判的思考は比較的多くの研究が行われているが(小林, 2014; 小山, 2017; 道田, 2003;),中学校英語科に関してはわが国では,実践の構想が紹介されたもの(大井, 2008)ぐらいしか見当たらない。
 しかし中学校外国語科に関しては, H29告示学習指導要領では,「情報を整理しながら考えなどを形成し,英語で表現したり,伝え合ったりすることに関する事項」が明示され,情報を整理しながら考えを形成して論理的に表現することなどが求められている。
 本研究では,批判的思考のうちの論理的側面を育成する方法として,OREO writingを用いて,年間を通して行った実践を報告する。

方  法
 対象授業 中学3年生が対象であり,教科書に沿って,単元1(4月)から単元8(12月)まで,OREO writingを含んだやり方で行った。授業者は本務の英語教師であった。
 実践の概要 OREW writingとは,opinion - reason - explanation / example / evidence / experience - opinion の順番で書くことにより,論理的にまとまりのある文章を書くという方法であるが,これを紹介している山本 (2016) には,2ページで概要しか書かれていない。本実践では,年間を通し,OREO writingを基本的にすべての単元で行うこととした。
 どの単元も,第一時は「事前アンケート」として,単元で扱われる内容に関わる既有知識を活性化させたり,予想を行う質問が書かれたワークシートを埋めさせた(たとえば「あなたが知っているクリーンエネルギーは何ですか?」,「日本のエネルギー自給率は何パーセントぐらいだと思いますか?」など)。そのうえで,その内容に関わる英作文を,OREOの形で書かせた(たとえば,「あなたがやっている/やれそうな省エネ対策について,OREOを使って4文以上で書きなさい」)。
 単元末には,単元とほぼ同様の課題(たとえば「風力,太陽光,波力,地熱発電のどれが一番よいと思うか,OREOを使って5文以上で書きなさい」について回答させた。
 単元の頭と末尾にこのような活動を入れる以外は,基本的には通常の英語の授業が行われた。


結  果
 実践の実際 単元3の事前作文における作文の構成要素を見ると,例や説明は書けているものの,理由が書けていない生徒が相対的に多かった。また適切な接続語を使うのが難しかったため,OREOで使用する言葉(in my opinion, first, for example, in conclusionなど)を用いたBINGOゲームを行った。また,単元3末のwriting時には,まず頭の中を整理するために,環境問題に関するイメージマップを作らせてから,それをOREOの形式に当てはめて作文化するというプロセスを踏んだ。さらに,書いた作文をグループ内で回し読みし,「いいところ」と「アドバイス」を指摘しあうピア・フィードバックを行い,それを踏まえて作文を改定させた(単元テスト裏面に)。
 単元4(物語文),5(教育実習生が担当)は,OREO writingは行わなかった。
 単元8は,最も良いと思うクリーンエネルギーについて書かせたが,やや難易度が高いと考え,まずは,それぞれのエネルギーの長所と短所を考えさせ,各自表で整理してから作文に入った。
 実践の評価 単元末の作文時には,ALTに相談をしたり,持ち帰って検討したりを可能にしていたため,ここでは単元の事前作文で生徒の変化を検討する。
 10名の生徒を抽出し,単元2と単元8の事前作文を比較したところ,文数は2.7→4.0と増加しており,単語数も25.9→30.8と増加していた。そのうち,前年度最後の定期テストで英語の成績が中下位の生徒で見ると,文数は2.5→4.0,単語数は23.3→28.8と,ほぼ同様の変化を示していた。
 なかでも変化の大きかった生徒は,単元2(事前)は,簡単な2文(10語)のみ書いていたが,単元8では,5文(38語)書いており,Rには”Because”,2つめのOには”In conclusion”などの語を用いていた。

考  察
 年間を通して単元の最初と最後にOREO writingを課すことで,それ以外の指導をあまり入れなくても,論理的な表現が可能になることが示唆された。実戦の精度を上げ,より的確な評価を行うのが今後の課題である。

付  記
本研究はH28-H31科研費(基盤C 16K04306研究代表者:道田泰司)の助成を受けた。