[PE38] インストラクショナルデザインに基づいた心肺蘇生法研修における医療学生の学習意欲の差
性別・学科の違いは学習意欲に差を生むのか?
キーワード:インストラクショナルデザイン, アクティブラーニング, カークパトリック
背 景
文部科学省は「心肺蘇生法実技講習会の実施について」(1)などにおいて,各都道府県教育委員会教育長あてに教員などに対して心肺蘇生法(人工呼吸及び胸骨圧迫)の技能の習得をするように実施をしてきている。一方,参加者である児童・生徒・学生がその講習会前後で反応,自信,モチベーションに変化が現れたかどうかという研究は少ない。参加者の属性により変化が現れるのなら,それにあわせた学習方略が必要である可能性がある。
方 法
日時:2017年4月7日
場所:栃木県日光市
実験参加者:A大学1年生 看護学科103名,理学療法学科90名,作業療法学科59名,言語聴覚学科25名,合計277名であった。
実験内容:心肺蘇生法の国際基準の策定の中心的存在であるアメリカ心臓協会が制作した,非医療現場向け心肺蘇生法プログラム「ファミリーアンドフレンズCPR」映像教材を利用し,心肺蘇生法を学生たちに指導した。学生たちの反応・学習意欲の変化を見るために,質問を設定し,受講の前後で内容に変化があるかを測った。デモグラフィック項目として,性別,学科別で変化があるかに注目し,統計処理を施した。質問項目は以下のようにした。質問1:これまで,蘇生に関するニュースなど興味・関心を持って見ていた。質問2:人形相手なら心肺蘇生法が正しく実施できそう。質問3:人形相手ならAEDが正しく利用できそう。質問4:人間相手にでも心肺蘇生法が正しく実施できそう。質問5:人間相手にでもAEDが正しく利用できそう。質問6:有料(または医療職向け)の講習会を受けてみたい。
これらを,1:そう思わない,2:あまりそう思わない,3:どちらでもない,4:だいたいそう思う,5:そう思う,の5点法で答えさせるようにした。結果は,Wilcoxonの符号付き順位検定により統計処理した。
結 論
性別により,点数が異なるという帰無仮説は全学科において棄却された。学科別により,点数が異なるという帰無仮説は,看護学科,理学療法学科,言語聴覚学科の学生においては6問全て棄却された。作業療法学科の学生においては,質問6のみ棄却されなかった。
考 察
実験参加者は大学1年生であり,実験日は4月初旬であり大学の授業はまだ始まっていないことから,この実験は当該学科の学習内容というよりは,当該学科を目指した学生たちが高校卒業時までにどのようなメンタリティを身に着けてきたかを測定したことになると考えられる。性別による差は認められなかったため,特に性別による学習内容に変更は必要ない可能性がある。また,学科による差は4学科中一学科(作業療法学科)のみに認められた。これが作業療法学科を目指した学生の何らかの差に基づくものなのか,そうでないのかはこの実験だけでは言及することは困難である。
以上の点から,今回の実験デザインにおいては,性別や学科別による反応,自信,モチベーションに変化は,概ね現れなかったと考えられる。
参考文献
(1)心肺蘇生法実技講習会の実施について,1992,文部科学省, 文体学第九三号
文部科学省は「心肺蘇生法実技講習会の実施について」(1)などにおいて,各都道府県教育委員会教育長あてに教員などに対して心肺蘇生法(人工呼吸及び胸骨圧迫)の技能の習得をするように実施をしてきている。一方,参加者である児童・生徒・学生がその講習会前後で反応,自信,モチベーションに変化が現れたかどうかという研究は少ない。参加者の属性により変化が現れるのなら,それにあわせた学習方略が必要である可能性がある。
方 法
日時:2017年4月7日
場所:栃木県日光市
実験参加者:A大学1年生 看護学科103名,理学療法学科90名,作業療法学科59名,言語聴覚学科25名,合計277名であった。
実験内容:心肺蘇生法の国際基準の策定の中心的存在であるアメリカ心臓協会が制作した,非医療現場向け心肺蘇生法プログラム「ファミリーアンドフレンズCPR」映像教材を利用し,心肺蘇生法を学生たちに指導した。学生たちの反応・学習意欲の変化を見るために,質問を設定し,受講の前後で内容に変化があるかを測った。デモグラフィック項目として,性別,学科別で変化があるかに注目し,統計処理を施した。質問項目は以下のようにした。質問1:これまで,蘇生に関するニュースなど興味・関心を持って見ていた。質問2:人形相手なら心肺蘇生法が正しく実施できそう。質問3:人形相手ならAEDが正しく利用できそう。質問4:人間相手にでも心肺蘇生法が正しく実施できそう。質問5:人間相手にでもAEDが正しく利用できそう。質問6:有料(または医療職向け)の講習会を受けてみたい。
これらを,1:そう思わない,2:あまりそう思わない,3:どちらでもない,4:だいたいそう思う,5:そう思う,の5点法で答えさせるようにした。結果は,Wilcoxonの符号付き順位検定により統計処理した。
結 論
性別により,点数が異なるという帰無仮説は全学科において棄却された。学科別により,点数が異なるという帰無仮説は,看護学科,理学療法学科,言語聴覚学科の学生においては6問全て棄却された。作業療法学科の学生においては,質問6のみ棄却されなかった。
考 察
実験参加者は大学1年生であり,実験日は4月初旬であり大学の授業はまだ始まっていないことから,この実験は当該学科の学習内容というよりは,当該学科を目指した学生たちが高校卒業時までにどのようなメンタリティを身に着けてきたかを測定したことになると考えられる。性別による差は認められなかったため,特に性別による学習内容に変更は必要ない可能性がある。また,学科による差は4学科中一学科(作業療法学科)のみに認められた。これが作業療法学科を目指した学生の何らかの差に基づくものなのか,そうでないのかはこの実験だけでは言及することは困難である。
以上の点から,今回の実験デザインにおいては,性別や学科別による反応,自信,モチベーションに変化は,概ね現れなかったと考えられる。
参考文献
(1)心肺蘇生法実技講習会の実施について,1992,文部科学省, 文体学第九三号