日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-71)

2018年9月16日(日) 13:30 〜 15:30 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:30~14:30 偶数番号14:30~15:30

[PE42] 子どもを育む学校・家庭・地域間連携に関する研究(2)

地域住民や教師が保護者のチームワークに及ぼす影響

吉澤寛之1, 吉田琢哉2, 浅野良輔3, 玉井颯一4, 吉田俊和5 (1.岐阜大学, 2.岐阜聖徳学園大学, 3.久留米大学, 4.名古屋大学大学院, 5.岐阜聖徳学園大学)

キーワード:学校運営チームワーク, 保護者, 地域住民

 学校教育での地域住民・保護者との学校運営におけるチームワークは,子どもへの教育効果が期待され,教育政策上のニーズが高い問題である(文部科学省, 2015)。吉田他(2018)は,学校運営チームワーク尺度を作成し,尺度の信頼性と妥当性を確認している。さらに,保護者のチームワークが,子どもの社会的スキルや学級適応に影響することを実証している。近年,こうした保護者の学校関与が,近隣住民の影響を受けるとする知見も報告され始めている(e.g., Bhargava & Witherspoon, 2015)。本研究では,保護者のチームワークを高める要因として地域住民と教師の役割に注目し,3者の関与を高める剰余変数に位置づけられる地域への愛着を統制した上で,校区単位での関連をマルチレベル分析により検討する。

方  法
対象者 市内の全小中学校がコミュニティ・スクールに指定されているA市内の24小学校と11中学校(いずれも55学級)において,小学6年生と中学3年生の保護者とその子どもが通う学校の学校運営協議会委員(地域住民),教師を対象に調査を実施した。回答に不備のなかった小学校保護者1552名(Mage = 41.28,SD = 6.59;母1407,父87,その他58;PTA役員247,PTA会員1164,未加入61),中学校保護者1515名(Mage = 43.92,SD = 5.60;母1395,父80,その他40;PTA役員224,PTA会員1156,未加入70),学校運営協議会委員280名(女87,男193;Mage = 60.79,SD = 13.14;委員活動年数M = 3.40,SD = 2.54),教師280名(女141,男139;教職歴M = 19.74,SD = 11.14;現任校における勤務年数M = 3.23,SD = 1.90)を対象に分析した。
測定内容 保護者からは,(a) 学校運営チームワーク:チーム志向性,チーム・リーダーシップ,チームプロセスの3因子からなる吉田他(2018)の尺度31項目,(b) 地域に対する愛着:尾関他(2009)の尺度5項目,(c) 階層帰属意識:Sakurai et al.(2010)の尺度(5段階評定で得点が高いほど自身が社会階層の上層に位置すると認知)を測定した。学校運営協議会委員と教師からは,(a)と(b)を各立場向けの表現にして測定した。

結果と考察
 地域住民と教師データは,各校別に算出した地域住民と教師の平均値を保護者データセットに結合して分析した。保護者変数の級内相関係数は低いものの全変数で有意な相関(r =.014~.050, ps <.001)が得られたため,地域住民と教師の校区単位(Between)の影響を個別に検討するMplus ver. 7.31によるマルチレベル分析を実施した(地域住民(Table 1):χ2 (42, N = 2257) = 3243.361, p < .001, CFI = 1.000, RMSEA = .000, SRMR = .003 (within), .001 (between);教師:χ2 (42, N = 2195) = 3201.393, p < .001, CFI = 1.000, RMSEA = .000, SRMR = .000 (within), .001 (between);保護者属性と階層帰属意識はwithinで統制)。保護者のチーム志向性には,地域住民のチーム志向性が有意な正の関連を示した。保護者のチーム・リーダーシップには有意な関連が認められず,保護者のチームプロセスには地域住民のチーム・リーダーシップとの間に有意な負の関連が認められた。保護者と教師の変数には有意な関連が認められなかった。
 保護者が学校運営にチームとして関わる意識(チーム志向性)を高めるためには,地域住民のチームとしての意識が重要であることが示された。一方で,教師のチームワークが保護者に及ぼす影響は見られず,地域住民のリーダーシップは,保護者の具体的な連携行動(チームプロセス)を損なう可能性も示唆された。今後は,因果関係を明確にするため,学校運営協議会への介入効果を検証するアクションリサーチや縦断研究が求められる。