[PF05] 養育・教育関係者における発達観の特徴と課題
幼児期の行動に着目して
キーワード:発達段階, 発達の諸機能連関, 発達観
子どもの発達を理解し,養育と教育にうまくつなげてゆくことが求められている。「小1プロブレム」に含まれる発達上の問題は,就学前の養育や保育の課題でもあろう。児童期前期に示される発達的共感及び系列操作の発達は本来であれば幼児期後期に見られる自己の多面的評価や「間」の世界の獲得を土台にしたものである。
子どもの発達は,家庭養育や学校教育と密接な結びつきがあり,養育や教育のもつ主導的役割を今こそ確認する必要がある。親及び教師が子どもの学習や発達特性をしっかり理解して実践化することが大切である。子どもの発達上の問題を解決するために,養育・教育と発達の相互作用の問題を明らかにする必要があろう。
本調査研究では親,幼稚園と小学校の教師,そして教師志望の学生を対象にして,発達段階・水準,発達の機能連関性の理解程度を明らかにして,今後の課題を示すことを目的にする。
方 法
1. 調査対象 国立大学教育学部学生22名,幼稚園教師31名,小学校教師31名,保護者22名,計98名。
2. 調査内容 幼児期の子どもの行動22項目及びDistracter項目1項目,計23項目。運動(7項目),手指操作(8項目),言語・認識(7項目)の各発達機能に関する行動が,1歳半,2歳半~3歳ごろ,4歳,5歳~6歳ごろの4時期に区分される。
3. 調査手続き 学生に対して授業中に,教師は夏季認定講習時に,そして保護者に対しては保育所主催の発達講演会時に調査シートを配布し回答を要請する。全23項目を4発達時期に区分するように教示する。
結 果
1. 正答率の比較分析:幼児期の行動に関して,運動7項目,手指操作8項目,そして言語・認識7項目を区分し,各々平均正答数<全体正答率>を比較した。学生(運動2.6手指4.1言語4.5全体11.1<50.4%>,幼稚園(運動2.2手指3.4言語3.8全体9.4<42.6%>,小学校(運動2.9手指3.6言語3.9全体
10.5<47.4%>,そして保護者(運動1.7手指3.7言語2.6全体8.0<36.3%>であった。全体正答率をみると,保護者が30%台と最も低く,他は40%~50%台であった(学生>保護者;χ2=4.047,p<.05)。とくに保護者の運動と言語・認識に関する正答率の低さが顕著に示された。
2. 誤答率の比較分析:過大(スパルタ的)・過小(放任的)評価に関して,全体的に学生及び小学校教師が過小評価傾向を示したのに対して,保護者は過大評価する傾向が示された(各々χ2=3.430,P<.10;χ2=3.560,p<10)。
運動機能に関して,幼稚園(42.97%)及び保護者(49.37%)に比べて,学生(65.85%)の方が過小評価率が高かった(各々,χ2=5.282,p<.05
;χ2=5.560,P<.02)。
手指操作機能では4群ともに過小評価率が高く,とくに幼稚園教師が81.6%を示し,子どもの手の発達を低く見積もってしまっていた。
言語認識機能では,手指操作とは反対に4群ともに過重評価率が高かった。特に小学校教師(63.80%)に比べて保護者は70.03%であり,7割が子どもの言語を過度に発達評価する傾向であった。(χ2=0.876,p>.05)。
3. 機能連関性の分析運動,手指操作,言語・認識の各発達機能における正答数をもとに機能連関に対する意識レベルを分析した。運動―手指操作連関に関して,4群ともに低型が中間型を上回り,特に学生と保護者に認められた(小学校―保護者χ2=12.878,p<.001)。手指―言語連関性では,保護者を除く3群はいずれも中間型%が高かった。運動―言語連関性では,小学校が低型に比べて中間型が高く,他の3群は逆に低型%が高く,とくに保護者に顕著に認められた。幼稚園が低型を高く示したのに対して,小学校教師は中間型%を高くした(χ2=4.937,p<.05)。運動―手指―言語連関性では,4群ともに低型%高かった。幼稚園教師と小学校では型%間に差異はなかった(χ2=0.739,p>.05)。
考 察
子育て中の親,教育実践者である教師,そして教員志望の国立大学教育学部生を対象にして,子どもの発達理解を調査した結果,全体的にみて発達段階や諸機能連関性の知識不足が大きいことが明らかにされた。養育を含めて,「発達と教育の相互作用」を十分に理解することは子育ての中心にあるものと考えられる。能力主義あるいは点数主義の中で子どもを全人的に見ることが難しくなり,それに人的・物的な面から子どもの発達的環境の剥奪が影響していると推察される。
子どもの発達は,家庭養育や学校教育と密接な結びつきがあり,養育や教育のもつ主導的役割を今こそ確認する必要がある。親及び教師が子どもの学習や発達特性をしっかり理解して実践化することが大切である。子どもの発達上の問題を解決するために,養育・教育と発達の相互作用の問題を明らかにする必要があろう。
本調査研究では親,幼稚園と小学校の教師,そして教師志望の学生を対象にして,発達段階・水準,発達の機能連関性の理解程度を明らかにして,今後の課題を示すことを目的にする。
方 法
1. 調査対象 国立大学教育学部学生22名,幼稚園教師31名,小学校教師31名,保護者22名,計98名。
2. 調査内容 幼児期の子どもの行動22項目及びDistracter項目1項目,計23項目。運動(7項目),手指操作(8項目),言語・認識(7項目)の各発達機能に関する行動が,1歳半,2歳半~3歳ごろ,4歳,5歳~6歳ごろの4時期に区分される。
3. 調査手続き 学生に対して授業中に,教師は夏季認定講習時に,そして保護者に対しては保育所主催の発達講演会時に調査シートを配布し回答を要請する。全23項目を4発達時期に区分するように教示する。
結 果
1. 正答率の比較分析:幼児期の行動に関して,運動7項目,手指操作8項目,そして言語・認識7項目を区分し,各々平均正答数<全体正答率>を比較した。学生(運動2.6手指4.1言語4.5全体11.1<50.4%>,幼稚園(運動2.2手指3.4言語3.8全体9.4<42.6%>,小学校(運動2.9手指3.6言語3.9全体
10.5<47.4%>,そして保護者(運動1.7手指3.7言語2.6全体8.0<36.3%>であった。全体正答率をみると,保護者が30%台と最も低く,他は40%~50%台であった(学生>保護者;χ2=4.047,p<.05)。とくに保護者の運動と言語・認識に関する正答率の低さが顕著に示された。
2. 誤答率の比較分析:過大(スパルタ的)・過小(放任的)評価に関して,全体的に学生及び小学校教師が過小評価傾向を示したのに対して,保護者は過大評価する傾向が示された(各々χ2=3.430,P<.10;χ2=3.560,p<10)。
運動機能に関して,幼稚園(42.97%)及び保護者(49.37%)に比べて,学生(65.85%)の方が過小評価率が高かった(各々,χ2=5.282,p<.05
;χ2=5.560,P<.02)。
手指操作機能では4群ともに過小評価率が高く,とくに幼稚園教師が81.6%を示し,子どもの手の発達を低く見積もってしまっていた。
言語認識機能では,手指操作とは反対に4群ともに過重評価率が高かった。特に小学校教師(63.80%)に比べて保護者は70.03%であり,7割が子どもの言語を過度に発達評価する傾向であった。(χ2=0.876,p>.05)。
3. 機能連関性の分析運動,手指操作,言語・認識の各発達機能における正答数をもとに機能連関に対する意識レベルを分析した。運動―手指操作連関に関して,4群ともに低型が中間型を上回り,特に学生と保護者に認められた(小学校―保護者χ2=12.878,p<.001)。手指―言語連関性では,保護者を除く3群はいずれも中間型%が高かった。運動―言語連関性では,小学校が低型に比べて中間型が高く,他の3群は逆に低型%が高く,とくに保護者に顕著に認められた。幼稚園が低型を高く示したのに対して,小学校教師は中間型%を高くした(χ2=4.937,p<.05)。運動―手指―言語連関性では,4群ともに低型%高かった。幼稚園教師と小学校では型%間に差異はなかった(χ2=0.739,p>.05)。
考 察
子育て中の親,教育実践者である教師,そして教員志望の国立大学教育学部生を対象にして,子どもの発達理解を調査した結果,全体的にみて発達段階や諸機能連関性の知識不足が大きいことが明らかにされた。養育を含めて,「発達と教育の相互作用」を十分に理解することは子育ての中心にあるものと考えられる。能力主義あるいは点数主義の中で子どもを全人的に見ることが難しくなり,それに人的・物的な面から子どもの発達的環境の剥奪が影響していると推察される。