日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-71)

2018年9月16日(日) 16:00 〜 18:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号16:00~17:00 偶数番号17:00~18:00

[PF15] 保育系大学生の絵本の認知度と態度

平山祐一郎 (東京家政大学)

キーワード:絵本, 学年比較, 保育者養成

目  的
 平山(2016)は,保育系大学生の絵本への関与について調査した。その結果,「絵本志向」「絵本経験」「読み聞かせ志向」の3つの因子を見出した。
 平山(2017)は4年生を対象に,3因子の得点と絵本認知度の関係を調べた。その結果,相関係数は絵本志向,絵本経験,読み聞かせ志向の順で高かった。なお,絵本認知度は2種類に分けた。絵本認知度Aは52冊の絵本の認知度とし(付記参照),絵本認知度Bは52冊の絵本の中から,回答者集団にほとんど知られていない,あるいはほとんどに知られている絵本を除いた絵本の認知度とした。3因子の得点との相関係数は,絵本認知度Aよりも絵本認知度Bにおいて高めの値となった。
 平山(2018)は3因子の得点と絵本認知度を学年進行で把握したところ,絵本志向得点は4年生が下位の学年よりも低かった。絵本認知度Aは4年生が下位学年よりも高く,絵本認知度Bは4年生と3年生が各々の下位学年より高い値となった。
 平山(2017)の調査は4年生2016年12月時のものであり,平山(2018)の調査は1~4年生2017年4月時のものである。そこで,この2つのデータを試行的に接続し,3因子の得点と絵本認知度の変化をより幅広く把握することを目的とする。

方  法
調査時期 2016年12月及び2017年4月 調査対象 2016年12月時調査は保育系女子大学生4年生182名,2017年4月時調査は保育系女子大学生1年生240名,2年生219名,3年生218名,4年生223名であった。質問紙 6段階評定で絵本の認知度を問うもの(52項目),同様に絵本への関与を問うもの(20項目)で構成。 教示 「このアンケートは教育や研究にとって非常に重要なものです。回答結果は全て数値化され,統計的処理をしますので,回答者が特定されることはありません。また,この結果は学会発表や報告書,あるいは論文にて公表し,教育や研究に役立てる予定です。強制的な調査ではありませんが,ぜひ回答をしていただき,ご提出いただければ幸いです。」

結  果
分析対象 無回答や回答の指示にそっていないものを除くと,1年生215名,2年生209名,3年生204名,4年生4月時215名,4年生12月時179名の合計1022名であった。 指標 52冊の絵本の評定値の合計を絵本認知度Aとした。評定の平均値が2未満の絵本と5以上の絵本を除いた14冊への評定値の合計を絵本認知度Bとした。また,3因子を構成する項目の評定値を合計し,絵本志向得点,絵本経験得点,読み聞かせ志向得点とした。 分析 学年(1・2・3・4年生4月時,4年生12月時)を独立変数として,1要因5水準の分散分析を行ったところ,絵本経験得点を除いて,有意な差が見られた。主な結果を下表に示した。

考  察
 絵本認知度Bは1年生4月時から4年生12月時までの間に,かなり大きく伸びている。これは授業や実習で,絵本に関する知識を確実に増やしたためだろう。絵本志向得点や読み聞かせ志向得点は微弱な変化である。しかし,前者は学年進行とともに減少傾向で,後者は上昇傾向である。これは保育の学びが進むにつれ,絵本そのものよりも読み聞かせに関心が向いたためであろう。なお,絵本認知度Aは表示を省略したが,その平均値(標準偏差)は,1年生4月時99.05(21.66)から4年生12月時117.87(23.06)へと、絵本認知度Bに比べ顕著ではないが,大きく伸びたといえる。

引用文献
平山祐一郎(2016). 保育系大学生の読書の傾向について ―「絵本関与」の観点を加えて― 日本教育心理学会第58回総会発表論文集,245.
平山祐一郎(2017). 絵本への関与と絵本認知度の関係について ~保育者養成における読書教育の心理学的研究~ 東京家政大学教員養成教育推進室年報,4,41-45.
平山祐一郎(2018). 絵本への関与と絵本認知度の発達的変化について ~保育者養成における読書教育の心理学的研究 その2~ 東京家政大学教員養成教育推進室年報,5(1), 39-43.

付  記
クレヨンハウス社のブッククラブ「絵本の本棚」(2016年版)の年少・年中・年長向けの絵本リストの使用をお認めいただいたクレヨンハウス社に感謝いたします。