[PG04] 触覚が乳幼児の発達段階に及ぼす影響
心地よさの観点による検証
キーワード:触覚, 乳幼児, 発達段階
背景と目的
乳幼児の発達に「触覚」がいかに大切であるか,ルソーは「感覚こそ子どもの知識にとって大事な基本的な素材であり,指で得た感覚を眼で確かめて学ぶと述べ,五感教育の中でも触覚を重視している(『エミール』1965,p46-47)。乳幼児の発達における「触覚」という視点からのアプローチによって研究された先行文献は少ない。そこで,本研究は新たに制作した玩具や活動中に触れる素材を通して「触覚」が乳幼児の発達段階に及ぼす影響について研究することを目的とした。
研究1
「触覚」に関する論文をCiniiによってキーワード「触覚,触感,乳幼児,幼児」で検索した。「触覚・乳幼児」では6件(1983-2017),「触感・乳幼児」は4件(2001-2016),「触覚・幼児」は45件(1971-2017),「触感・幼児」は12件(1994-2017)であった。研究領域に関する文献をまとめた内容は次のとおりである。
1歳頃までの触覚刺激を重要視し,一週目ごろでは「生命を脅かす程度かどうか」,二週目ごろは「生命を脅かすものかそうでない程度のものか」,三週目ごろは,二週目ごろの反応に加えて「生命を躍動させる程度のものかどうか,「快-不快」という無数の触覚刺激に発達する。また,5歳児はさまざまな基準に目を向け,複数の基準を用いた分類が可能であること,さらに視覚だけでなく触覚という感覚を意識しながら“もの”を見ることで心が動くこと,自分自身の感情の動きをしっかり自覚するための活動であることを確認する。「触覚」の再発見は子どもの「自分とは違う他者を理解する」心を培い,「自己理解」へと深化していく。
研究2
乳幼児を対象とした素材の選択と玩具の制作にあたり,玩具,触覚遊びの素材と形を検討した。先行文献より色の差異が認められないこと,1歳前後のアプローチの触覚が重要であること,5歳未満に対応するものとして,無数の触覚刺激,複数の基準を用いた分類が可能である状況から,玩具の素材を3種類準備し,色は統一せず同型の玩具で中身を3種類選択し制作する。また,玩具だけでなく触覚の遊びを検討することとした。実践者6名のうち,中身の違う同型の玩具の制作は4名,触覚遊びは2名で実習期間中や子どもが集まる会などで実践した。
目的:年齢によって素材の好みに差異はあるか。
対象:0~6歳(保育園児)
実施期間:平成29年6月~7月,12月
方法:玩具,触覚遊びを通して観察・記録
仮説 柔らか素材を好む傾向が高いが,年齢によっては適度な固さを求め玩具で他の素材を選択する子どもの率は低くない。それは遊びを通して体験を重ね,安全であると認知できるからである。
結果と考察
3種類の玩具(柔らかい素材①中間②固い素材③)を準備した。その結果①を好む子どもが多く,理由の一つに,「布団やぬいぐるみに似ている」があった。②,③を選択した子どもの理由に,「ブロックのつぶつぶに似ている,おもちゃのミニカーに似ている」とあった。日常で遊ぶ玩具と提示した玩具を比較し,固さにおける共通項を見いだし選択したと考えられ,体験を重ねたことによる影響があったと推測できる。年齢による遊び方の変化が触覚に影響があるのではないかと推測される。同型で中身の違う玩具での実践では,形による影響はなかったと考えられる。日常で関心のある玩具に似た傾向のものを選択したことは,触覚だけの影響とは考えにくい。また,選択理由で安全であることを認知したかどうかの検証はできなかった。床素材,触覚あそびに関しては,データが少なく結果報告のみとなり,柔らかな素材の床を好むとは言及できなかった。
本研究で選択した玩具は,触覚に対する心地よさ(好み)だけでなく,関心のある他の玩具との比較で,それと似たものを好むことがわかった。また,同型の玩具3種類から選択する方法により,形を気にすることなく指で触れただけで他のものと比較し素材の違いを判別できることがわかった。触覚の違いは心地よさの違いか,好むものと心地よいと感じるものの違いはあるのかについてのデータ分析はできなかった。あえていろいろな形式で試みたため,分析に十分なデータを得られなかった。今後は「心地よさと好みとの違いをどのように区別するか。触るときの圧力,握力の差異や素材の違い,視覚と触覚の相関をどのように分析するか」の点を課題として年齢の違い触覚に及ぼす影響について研究を深めていきたいと考えている。
乳幼児の発達に「触覚」がいかに大切であるか,ルソーは「感覚こそ子どもの知識にとって大事な基本的な素材であり,指で得た感覚を眼で確かめて学ぶと述べ,五感教育の中でも触覚を重視している(『エミール』1965,p46-47)。乳幼児の発達における「触覚」という視点からのアプローチによって研究された先行文献は少ない。そこで,本研究は新たに制作した玩具や活動中に触れる素材を通して「触覚」が乳幼児の発達段階に及ぼす影響について研究することを目的とした。
研究1
「触覚」に関する論文をCiniiによってキーワード「触覚,触感,乳幼児,幼児」で検索した。「触覚・乳幼児」では6件(1983-2017),「触感・乳幼児」は4件(2001-2016),「触覚・幼児」は45件(1971-2017),「触感・幼児」は12件(1994-2017)であった。研究領域に関する文献をまとめた内容は次のとおりである。
1歳頃までの触覚刺激を重要視し,一週目ごろでは「生命を脅かす程度かどうか」,二週目ごろは「生命を脅かすものかそうでない程度のものか」,三週目ごろは,二週目ごろの反応に加えて「生命を躍動させる程度のものかどうか,「快-不快」という無数の触覚刺激に発達する。また,5歳児はさまざまな基準に目を向け,複数の基準を用いた分類が可能であること,さらに視覚だけでなく触覚という感覚を意識しながら“もの”を見ることで心が動くこと,自分自身の感情の動きをしっかり自覚するための活動であることを確認する。「触覚」の再発見は子どもの「自分とは違う他者を理解する」心を培い,「自己理解」へと深化していく。
研究2
乳幼児を対象とした素材の選択と玩具の制作にあたり,玩具,触覚遊びの素材と形を検討した。先行文献より色の差異が認められないこと,1歳前後のアプローチの触覚が重要であること,5歳未満に対応するものとして,無数の触覚刺激,複数の基準を用いた分類が可能である状況から,玩具の素材を3種類準備し,色は統一せず同型の玩具で中身を3種類選択し制作する。また,玩具だけでなく触覚の遊びを検討することとした。実践者6名のうち,中身の違う同型の玩具の制作は4名,触覚遊びは2名で実習期間中や子どもが集まる会などで実践した。
目的:年齢によって素材の好みに差異はあるか。
対象:0~6歳(保育園児)
実施期間:平成29年6月~7月,12月
方法:玩具,触覚遊びを通して観察・記録
仮説 柔らか素材を好む傾向が高いが,年齢によっては適度な固さを求め玩具で他の素材を選択する子どもの率は低くない。それは遊びを通して体験を重ね,安全であると認知できるからである。
結果と考察
3種類の玩具(柔らかい素材①中間②固い素材③)を準備した。その結果①を好む子どもが多く,理由の一つに,「布団やぬいぐるみに似ている」があった。②,③を選択した子どもの理由に,「ブロックのつぶつぶに似ている,おもちゃのミニカーに似ている」とあった。日常で遊ぶ玩具と提示した玩具を比較し,固さにおける共通項を見いだし選択したと考えられ,体験を重ねたことによる影響があったと推測できる。年齢による遊び方の変化が触覚に影響があるのではないかと推測される。同型で中身の違う玩具での実践では,形による影響はなかったと考えられる。日常で関心のある玩具に似た傾向のものを選択したことは,触覚だけの影響とは考えにくい。また,選択理由で安全であることを認知したかどうかの検証はできなかった。床素材,触覚あそびに関しては,データが少なく結果報告のみとなり,柔らかな素材の床を好むとは言及できなかった。
本研究で選択した玩具は,触覚に対する心地よさ(好み)だけでなく,関心のある他の玩具との比較で,それと似たものを好むことがわかった。また,同型の玩具3種類から選択する方法により,形を気にすることなく指で触れただけで他のものと比較し素材の違いを判別できることがわかった。触覚の違いは心地よさの違いか,好むものと心地よいと感じるものの違いはあるのかについてのデータ分析はできなかった。あえていろいろな形式で試みたため,分析に十分なデータを得られなかった。今後は「心地よさと好みとの違いをどのように区別するか。触るときの圧力,握力の差異や素材の違い,視覚と触覚の相関をどのように分析するか」の点を課題として年齢の違い触覚に及ぼす影響について研究を深めていきたいと考えている。