[PG22] 女子短大生に対するグループワークプログラム実践の試み(6)
Keywords:グループワーク, 社会的スキル, 問題解決スキル
問 題
近年,大学でのコミュニケーション力の育成に期待が集まっている。厚生労働省(2007)は「若年者就職基礎能力」の中で意思疎通・協調性・自己表現力の必要性をあげている。そこで高岡ら(2013;2014)は,大学生のコミュニケーション能力として重視されている社会的スキルを高めるためのプログラムを開発し,継続してその効果検証を行っている。その結果,大学生活の充実感という点で有意な効果を認めたものの,具体的なコミュニケーションスキルに対する効果は明らかにならず,より焦点化した結果の検証が必要であると挙げている。
そこで本研究では,高岡ら(2014)のプログラムを実施し,他者からの評価懸念,アサーションスキル,問題解決スキルに焦点を当てた効果検証を行い,本プログラムが特にどのスキル向上に役立つのかを検証することを目的とした。
方 法
対象者:女子大学生17名が登録し最終的に16名(平均年齢18.73歳,SD=0.59)が継続的にプログラムに参加した。
プログラムの概要:本プログラムは各180分,全15回で構成され(高岡ら,2014),X年9月~X+1年1月の講義時間内に実施した。第1回は心理教育を行い,第2回~第9回は社会的スキル訓練,第10回~第15回は問題解決スキル訓練を中心に扱った。また,実生活への般化やスキル維持促進を狙って,毎回ホームワークを課した。
測定尺度:①機能的アサーション尺度;下位因子として課題達成,語用論的配慮(Mitamura,2017),②Problem Solving Inventory 邦訳版(PSI:丸山ら,1995),③Fear of Negative Evaluation Scale 短縮版(FNE:笹川ら,2004),を使用した。
測定時期:すべての尺度について介入前と中間演習後(第10回),介入後に測定を行った。
結 果
分析は回答に欠損がなかった15名を対象とした。プログラム効果を検討するため,機能的アサーション尺度,PSI,FNE,を従属変数,時期(介入前,中間,介入後)を独立変数とする1要因分散分析を行った。その結果,PSI(F[2,28]=.13),FNE(F[2,28]=.39)については有意な時期の主効果が認められなかったが,機能的アサーション総得点(F[2,28]=4.14,p<.05),その下位因子である課題達成(F[2,28]=6.58,p<.01)については有意な時期の主効果が認められ,Tukey-b法による多重比較を行ったところ,機能的アサーションでは介入前,中間よりも介入後が有意に高く,課題達成では介入前よりも介入後が高い結果となった(table1)。さらに,効果サイズとして介入前後のCohen’s dを算出したところ,機能的アサーションではd=.61,課題達成ではd=.77であり,効果量が中~大とされる結果であった(竹内ら,2008)。
また,問題解決スキル訓練前後における解決法の案出数について対応のあるt検定を実施したところ,有意な増加が認められた(t(14)=3.88,p<.01)。
考 察
研究結果から,本プログラムは社会的スキルのうち,アサーションスキルの向上に大きな影響力を持つことが明らかとなった。アサーションスキルの向上は大学生のQOLにも深く関わるとされるため(前田ら,2017),プログラムは学生生活の質の向上にも貢献できるものと考える。一方で,他者からの評価懸念や問題解決スキルという点についてはプログラムの効果が認められなかった。松原ら(2017)は解決スキルを多側面から測定する必要性について述べており,本研究では解決法の案出数を測定した。その結果,有意に増加しており,一部の効果は評価できる。問題解決スキル訓練については,プログラム全体の最後に取り上げたテーマであったため,介入後の測定時点では般化に至っていなかった可能性も考えられる。したがって今後の課題としては,全15回のプログラム終了後,一定期間後に再度測定を行う,フォローアップセッションを行うなど,評価の仕方についてさらに検討する必要があると考えられる。
近年,大学でのコミュニケーション力の育成に期待が集まっている。厚生労働省(2007)は「若年者就職基礎能力」の中で意思疎通・協調性・自己表現力の必要性をあげている。そこで高岡ら(2013;2014)は,大学生のコミュニケーション能力として重視されている社会的スキルを高めるためのプログラムを開発し,継続してその効果検証を行っている。その結果,大学生活の充実感という点で有意な効果を認めたものの,具体的なコミュニケーションスキルに対する効果は明らかにならず,より焦点化した結果の検証が必要であると挙げている。
そこで本研究では,高岡ら(2014)のプログラムを実施し,他者からの評価懸念,アサーションスキル,問題解決スキルに焦点を当てた効果検証を行い,本プログラムが特にどのスキル向上に役立つのかを検証することを目的とした。
方 法
対象者:女子大学生17名が登録し最終的に16名(平均年齢18.73歳,SD=0.59)が継続的にプログラムに参加した。
プログラムの概要:本プログラムは各180分,全15回で構成され(高岡ら,2014),X年9月~X+1年1月の講義時間内に実施した。第1回は心理教育を行い,第2回~第9回は社会的スキル訓練,第10回~第15回は問題解決スキル訓練を中心に扱った。また,実生活への般化やスキル維持促進を狙って,毎回ホームワークを課した。
測定尺度:①機能的アサーション尺度;下位因子として課題達成,語用論的配慮(Mitamura,2017),②Problem Solving Inventory 邦訳版(PSI:丸山ら,1995),③Fear of Negative Evaluation Scale 短縮版(FNE:笹川ら,2004),を使用した。
測定時期:すべての尺度について介入前と中間演習後(第10回),介入後に測定を行った。
結 果
分析は回答に欠損がなかった15名を対象とした。プログラム効果を検討するため,機能的アサーション尺度,PSI,FNE,を従属変数,時期(介入前,中間,介入後)を独立変数とする1要因分散分析を行った。その結果,PSI(F[2,28]=.13),FNE(F[2,28]=.39)については有意な時期の主効果が認められなかったが,機能的アサーション総得点(F[2,28]=4.14,p<.05),その下位因子である課題達成(F[2,28]=6.58,p<.01)については有意な時期の主効果が認められ,Tukey-b法による多重比較を行ったところ,機能的アサーションでは介入前,中間よりも介入後が有意に高く,課題達成では介入前よりも介入後が高い結果となった(table1)。さらに,効果サイズとして介入前後のCohen’s dを算出したところ,機能的アサーションではd=.61,課題達成ではd=.77であり,効果量が中~大とされる結果であった(竹内ら,2008)。
また,問題解決スキル訓練前後における解決法の案出数について対応のあるt検定を実施したところ,有意な増加が認められた(t(14)=3.88,p<.01)。
考 察
研究結果から,本プログラムは社会的スキルのうち,アサーションスキルの向上に大きな影響力を持つことが明らかとなった。アサーションスキルの向上は大学生のQOLにも深く関わるとされるため(前田ら,2017),プログラムは学生生活の質の向上にも貢献できるものと考える。一方で,他者からの評価懸念や問題解決スキルという点についてはプログラムの効果が認められなかった。松原ら(2017)は解決スキルを多側面から測定する必要性について述べており,本研究では解決法の案出数を測定した。その結果,有意に増加しており,一部の効果は評価できる。問題解決スキル訓練については,プログラム全体の最後に取り上げたテーマであったため,介入後の測定時点では般化に至っていなかった可能性も考えられる。したがって今後の課題としては,全15回のプログラム終了後,一定期間後に再度測定を行う,フォローアップセッションを行うなど,評価の仕方についてさらに検討する必要があると考えられる。