The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-76)

Mon. Sep 17, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PG32] 放課後学習支援事業における「問題解決としての省察」活動への参加要件

市本早香1, 富田英司2 (1.倉敷市立連島東小学校, 2.愛媛大学)

Keywords:学習支援, 協働省察, アクションリサーチ

本研究の目的
 本研究の問いは,本来は問題解決過程の一環として連続的に行われる省察活動に,教育実践を開始したばかりの学生が自発的に参加するにはどのような工夫が必要かということである。本研究では,「放課後学習支援事業」の大学生参加者(以後,支援学生)に省察を促すために様々な取組みを行い,その効果を検討する。省察の定着による問題解決過程では,各々の参加者の試行錯誤が見られた。徐々に変化する参加者の姿を捉えることにより,問題解決に至る省察活動の要件を提案したい。

本事業の問題点
 本事業では,2016年9月より支援学生と指導教員が活動中の様子について協働省察する,議論の場として「運営協議会」を設けた。しかし,運営協議会に参加する支援学生は少なく,主な構成員は指導教員とゼミ生であった。しかし,運営協議会に不参加の支援学生の中には,学習支援に継続的に参加する者や個人的に問題点や解決策のアイディアを出す者もいた。また,多くの支援学生の不参加によって,運営協議会での決定事項が支援学生全体に伝わらず,本事業の目的や方針,対応方法が共有されなかった。そこで,本研究では支援学生の協働省察の場を改善し,支援学生の協働省察への参加を促すことに取組むこととした。
 運営協議会を導入し改善に取組むまでは,開催頻度が月1回程度であり,各回の開催時間は1時間程度であった。開催日時の告知は,支援学生間の連絡手段として用いていたメッセンジャーを利用して,開催日の3日前までに行った。

方  法
参加者:支援学生 19名
時期:2016年9月~2017年11月
手続き:半構造化面接,フィールドノーツ,SNSの記録を用いたエスノグラフィー。

取組みの成果
 本研究の取組みの結果,運営協議会への参加者数は増加しており,その変化の過程と取組みの導入には特徴が見られた。取組みを導入した時期ごとに,2016年7月~2017年5月を「フェイズ1:省察活動を促す取組みを行っていなかった時期」,2017年6月~9月を「フェイズ2:省察活動を個別的かつ積極的に促した時期」,2017年10月~11月を「フェイズ3:実践者間で共有する省察活動を促した時期」として区切り,分析を行った。
フェイズ1:省察活動を促す取組みを行っていなかった時期 この時期は,筆者から支援学生に省察活動を促す取組みをしておらず,支援学生の自主的な省察活動に任せた状態であった。運営協議会への参加者は,参加頻度が一定ではないものの,主にゼミ生で構成されていた。こうした状況の下,指導教員のファシリテートによる運営協議会が開催され,問題解決を目指した議論が行われた。
フェイズ2:省察活動を個別的かつ積極的に促した時期」 この時期は支援学生の個人的な省察を促すことを重視した時期であったため,運営協議会への参加者は少ないままであり,問題解決の成果を確認するには至っていなかった。そこで筆者は,インタビュー調査によって運営協議会への不参加理由や参加を促すアイディアを支援学生に尋ね,フェイズ3とされる時期に,支援学生の意見やアイディアをもとにした取組みを実施した。
フェイズ3:実践者間で共有する省察活動を促した時期 この時期は,フェイズ2で支援学生から提案されたアイディアや意見に基づいて取り組んだ。主な取組みとして,2017年10月~11月に開催された運営協議会においてポストイットを用いたグループワークを導入した結果,運営協議会へ参加する支援学生の人数が増加した(Figure 1)。グループワーク後,参加した支援学生の多くは,ポストイットを用いたことによって参加者が対等な立場で意見交換をすることができたと報告した。

協働省察への参加を促す取組み
 本研究の結果より,活動への参加者の問題解決の一環として行われる協働省察への参加を促すには,単に議論の場を設定するだけでなく,個人的省察と協同省察を循環的に行う場を設定することが重要であった。さらに,参加者同士での関わりを通して,議論へのネガティブなイメージを解消し,参加者自身によって「安心」で「対等に」議論できる場を作り出す必要があったと考えられる。