[PG39] 大学生の考える「Eメールの好ましさ」とは
読み手の視点に立った場合
キーワード:Eメール, 好ましさ, 読み手
問題の所在と目的
近年,学生にとってのEメールは公的な相手(e.g.教員)とのコミュニケーションツールである。一方で,学生に書かれたEメールには不備がみられることが指摘されている(佐藤・小笠原・布川,2015)。この現象の原因は定かではない。だが,自分の書いたEメールが相手に好ましくないと思われるとわかっていて送る学生はいないであろう。では,学生はどのようなEメールを好ましいと認識しているのだろうか。本研究では,学生が読み手の立場になったときにどのようなEメールを好ましいと評価するのかを探索的に調査した。
方 法
参加者 大学生・大学院生男女127名が参加した。このうち,読み手意識尺度への回答に不備があったもの2名と,社会人経験があると考えられる30歳以上の参加者6名を除いた119名のデータ(男性48名,女性71名,18歳10ヶ月~25歳4ヶ月)を分析対象とした。調査の内容および手続きについては,あらかじめ法政大学文学部心理学科・心理学専攻倫理委員会の了承を得た(平成29年11月22日 承認番号:17-0123)。
質問項目 Eメールの好ましさに関する質的調査(菊池,2017a,b)の結果から,読み手の立場におけるEメールの好ましさに関わる尺度(29項目)を作成した。また,基準関連妥当性を検討するために岸他(2014)の読み手意識尺度(16項目)を用いた。
手続き 参加者ペースで個別に回答させた。回答時には指導教員や大学の職員と公的なEメールをやりとりする場面を想像するように教示した。所要時間は5~10分程度であった。読み手の立場における好ましさに関する項目は5件法(1:全く当てはまらない~5:非常によく当てはまる)で,読み手意識尺度は4件法(1:当てはまらない~4:当てはまる)で回答させた。回答の偏りを排除するため,項目の並びのパターンを複数作成し,各参加者にランダムに配布した。また,順序効果を相殺するため,尺度の提示順を操作した。
結果・考察
まず,項目分析を行ったところ,「絵文字がない」と「顔文字がない」に強い相関関係がみられた(r=.856)。そこで,先行研究などをふまえ,「顔文字がない」を分析項目として採用した。その後,探索的因子分析(重み付けのない最小2乗法,プロマックス回転)を行った。因子は,スクリープロットとその解釈のしやすさをふまえて抽出した。さらに,いずれの因子にも.40以上の負荷量を持たない項目と,複数の因子に.40以上の負荷量を持つ項目を削除し,因子分析を再度行った。最終的に,読み手の立場における好ましさとして 4因子を抽出した(累積寄与率52.04%)。それぞれ高い負荷量を示した項目から,第1因子は「簡潔さ因子」,第2因子は「書き手明示因子」,第3因子は「読み手配慮因子」,第4因子は「用件明示因子」と命名した(Table 1)。加えて,全ての因子の間に弱い~中程度の正の相関がみられた。
一方,基準関連妥当性を検討するために,これらの因子と読み手意識尺度の四つの下位尺度との相関関係を検討した。その結果,「簡潔さ因子」は全ての下位尺度と,その他三つの因子は下位尺度の中の「説明意識」と「メタ理解」と弱い正の相関関係がみられ,尺度の妥当性は担保されたといえる。以上の結果から,読み手となった学生は,簡潔で,書き手が誰であるかと用件がわかりやすく,自分に配慮されたEメールを好ましいと評価すると考えられる。
主な引用文献
岸 学・辻 義人・籾山香奈子(2014).説明文産出における「読み手意識尺度」の作成と妥当性の検討 東京学芸大学紀要総合教育科学系,65,109-117.
付 記
なお,本発表の一部は,平成30年2月24日に開催された第24回ディスコース心理学研究部会で発表された。
近年,学生にとってのEメールは公的な相手(e.g.教員)とのコミュニケーションツールである。一方で,学生に書かれたEメールには不備がみられることが指摘されている(佐藤・小笠原・布川,2015)。この現象の原因は定かではない。だが,自分の書いたEメールが相手に好ましくないと思われるとわかっていて送る学生はいないであろう。では,学生はどのようなEメールを好ましいと認識しているのだろうか。本研究では,学生が読み手の立場になったときにどのようなEメールを好ましいと評価するのかを探索的に調査した。
方 法
参加者 大学生・大学院生男女127名が参加した。このうち,読み手意識尺度への回答に不備があったもの2名と,社会人経験があると考えられる30歳以上の参加者6名を除いた119名のデータ(男性48名,女性71名,18歳10ヶ月~25歳4ヶ月)を分析対象とした。調査の内容および手続きについては,あらかじめ法政大学文学部心理学科・心理学専攻倫理委員会の了承を得た(平成29年11月22日 承認番号:17-0123)。
質問項目 Eメールの好ましさに関する質的調査(菊池,2017a,b)の結果から,読み手の立場におけるEメールの好ましさに関わる尺度(29項目)を作成した。また,基準関連妥当性を検討するために岸他(2014)の読み手意識尺度(16項目)を用いた。
手続き 参加者ペースで個別に回答させた。回答時には指導教員や大学の職員と公的なEメールをやりとりする場面を想像するように教示した。所要時間は5~10分程度であった。読み手の立場における好ましさに関する項目は5件法(1:全く当てはまらない~5:非常によく当てはまる)で,読み手意識尺度は4件法(1:当てはまらない~4:当てはまる)で回答させた。回答の偏りを排除するため,項目の並びのパターンを複数作成し,各参加者にランダムに配布した。また,順序効果を相殺するため,尺度の提示順を操作した。
結果・考察
まず,項目分析を行ったところ,「絵文字がない」と「顔文字がない」に強い相関関係がみられた(r=.856)。そこで,先行研究などをふまえ,「顔文字がない」を分析項目として採用した。その後,探索的因子分析(重み付けのない最小2乗法,プロマックス回転)を行った。因子は,スクリープロットとその解釈のしやすさをふまえて抽出した。さらに,いずれの因子にも.40以上の負荷量を持たない項目と,複数の因子に.40以上の負荷量を持つ項目を削除し,因子分析を再度行った。最終的に,読み手の立場における好ましさとして 4因子を抽出した(累積寄与率52.04%)。それぞれ高い負荷量を示した項目から,第1因子は「簡潔さ因子」,第2因子は「書き手明示因子」,第3因子は「読み手配慮因子」,第4因子は「用件明示因子」と命名した(Table 1)。加えて,全ての因子の間に弱い~中程度の正の相関がみられた。
一方,基準関連妥当性を検討するために,これらの因子と読み手意識尺度の四つの下位尺度との相関関係を検討した。その結果,「簡潔さ因子」は全ての下位尺度と,その他三つの因子は下位尺度の中の「説明意識」と「メタ理解」と弱い正の相関関係がみられ,尺度の妥当性は担保されたといえる。以上の結果から,読み手となった学生は,簡潔で,書き手が誰であるかと用件がわかりやすく,自分に配慮されたEメールを好ましいと評価すると考えられる。
主な引用文献
岸 学・辻 義人・籾山香奈子(2014).説明文産出における「読み手意識尺度」の作成と妥当性の検討 東京学芸大学紀要総合教育科学系,65,109-117.
付 記
なお,本発表の一部は,平成30年2月24日に開催された第24回ディスコース心理学研究部会で発表された。