[PG45] 対人依存が対人葛藤場面における対人感情および行動パターンに及ぼす影響
Keywords:対人依存, 対人感情, 行動パターン
目 的
本研究では,依存的な人にとってストレスのかかる対人拒否(Zuroff & Mongrain,1987)を含む対人葛藤場面に焦点を当て,対人依存が対人態度に及ぼす影響を検討した。拒否の有無にかかわらず,依存高群は低群よりも,ネガティブな対人感情を抱きやすいこと(仮説1),自我縮小行動や自我拡大行動を用いること(仮説2),ネガティブな他者認知をすること(仮説3)が予測された。
方 法
参加者 大学生136名(男性46名,女性90名:Mage=18.92,SD=1.08)。
質問紙 異なる対象人物(母親,親友)との2種類の対人葛藤場面(遅刻場面,誘い場面)を提示し,それぞれ対人感情,行動,および他者認知について回答を求めた。最後に依存欲求について回答を求めた。(1)対人葛藤場面:遅刻場面(意図的な拒否を含む)は大迫・高橋(1994)をもとに,誘い場面(意図的な拒否を含まない)はCollins et al.(2006)をもとに作成した。(2)対人感情・行動:対人感情尺度および葛藤処理方略尺度(大迫・高橋,1994)(3)対人依存:対人依存欲求尺度(竹澤・小玉,2004)(4)他者認知:Collins et al.(2006)のPossible Explanationをもとに作成した。
結 果
分析 各対人感情因子,行動因子,他者認知因子を従属変数とし,2(依存欲求:高vs.低)×2(対象人物:母親vs.親友)の分散分析を行った。なお,依存欲求に有意な男女差が見られなかったため(t(134)=-1.38,n.s.),参加者全体を中間値で依存高群と低群に分けた。
遅刻場面 悲しさ(F(1,134)=3.02, p<.10,ηp²=.02),イライラ(F (1,134)=4.23,p<.05,ηp² = .03)において依存と対象人物の交互作用が有意であった。親友場面でのみ,依存高群は低群よりも得点が高かった。自我拡大行動(F(1,134)=13.50, p<.001,ηp²=.09),自我縮小行動(F(1,134)=9.84,p<.01,ηp²=.07)において依存の主効果が有意であり,依存高群が低群よりも得点が高かった。ネガティブ解釈において,依存の主効果に有意傾向があり(F(1,134)=3.64, p<.10,ηp²=.03),依存高群が低群よりも得点が高い傾向が見られた。
誘い場面 恐怖(F(1,134)=8.02,p<.01,ηp²=.06),イライラ(F(1,134)=4.36,p<.05,ηp²=.03)において,依存と対象人物の交互作用が有意であり,親友場面でのみ,依存高群が低群よりも得点が高かった。また依存高群は,母親より親友に対して恐怖得点が高く,依存低群は母親よりも親友においてイライラ得点が低かった。また,自己主張行動において依存の主効果が見られ(F(1,134)=13.89,p<.001,ηp²=.09),依存高群が低群よりも得点が高かった。取り繕い行動では依存の主効果に有意傾向があり(F(1,134)=3.59,p<.10,ηp²=.03),依存高群が低群より得点が高い傾向が見られた。ネガティブ解釈においては,依存と対象人物の交互作用が見られ(F(1,134)=8.27,p<.01,ηp²=.06),親友場面でのみ,依存高群は低群よりも得点が高かった。
考 察
依存高群は低群よりネガティブな対人感情をより抱くという結果が得られ,仮説1は支持された。依存的な人が他者の態度に敏感であることや,見捨てられ不安が高いことをふまえると(Bornstein et al.,2003),意図的な拒否がなくとも他者から誘いを断られることは依存高群にとってある種の拒否であり,ネガティブな対人感情を高めることがわかった。また依存高群は自我拡大および自我縮小行動をとる結果が得られ,仮説2は支持された。特に誘い場面では「それでも食事に行きたいと言う」などの自己主張傾向が見られたが,依存高群の自己の要望を通すことへのこだわりは,先行研究とも一致する結果である(Haggerty et al.,2015)。
また,これらの感情や行動は相手によっても変わることがわかった。特に誘い場面では,依存高群の恐怖は親友よりも母親に対して低まる一方で,イライラは差がなかった。友人など流動的な対人関係における対人葛藤では,関係維持のため慎重な対応が必要だが,家族にはそうした配慮は必要ない(Laursen,1993)。こうした結果は他の要因においても見られ,依存が対人感情や行動にどう影響するかは相手によって異なることがわかった。
さらに,依存高群は友人との葛藤場面においてのみ,依存低群よりネガティブ解釈をしやすいという結果が得られ,仮説3は一部支持された。依存高群が対人葛藤場面においてネガティブな対人感情をより感じる背景には,ネガティブな他者認知も関わっていることが示唆された。
総 括
本研究は,依存が他者とのやり取りの中でどのような意味を持つのかといったより社会的な観点から依存を捉えた。他者とのやり取りにおいて依存がどのように表出されるかは,状況や他者との関係性よっても変わるということが示された。
本研究では,依存的な人にとってストレスのかかる対人拒否(Zuroff & Mongrain,1987)を含む対人葛藤場面に焦点を当て,対人依存が対人態度に及ぼす影響を検討した。拒否の有無にかかわらず,依存高群は低群よりも,ネガティブな対人感情を抱きやすいこと(仮説1),自我縮小行動や自我拡大行動を用いること(仮説2),ネガティブな他者認知をすること(仮説3)が予測された。
方 法
参加者 大学生136名(男性46名,女性90名:Mage=18.92,SD=1.08)。
質問紙 異なる対象人物(母親,親友)との2種類の対人葛藤場面(遅刻場面,誘い場面)を提示し,それぞれ対人感情,行動,および他者認知について回答を求めた。最後に依存欲求について回答を求めた。(1)対人葛藤場面:遅刻場面(意図的な拒否を含む)は大迫・高橋(1994)をもとに,誘い場面(意図的な拒否を含まない)はCollins et al.(2006)をもとに作成した。(2)対人感情・行動:対人感情尺度および葛藤処理方略尺度(大迫・高橋,1994)(3)対人依存:対人依存欲求尺度(竹澤・小玉,2004)(4)他者認知:Collins et al.(2006)のPossible Explanationをもとに作成した。
結 果
分析 各対人感情因子,行動因子,他者認知因子を従属変数とし,2(依存欲求:高vs.低)×2(対象人物:母親vs.親友)の分散分析を行った。なお,依存欲求に有意な男女差が見られなかったため(t(134)=-1.38,n.s.),参加者全体を中間値で依存高群と低群に分けた。
遅刻場面 悲しさ(F(1,134)=3.02, p<.10,ηp²=.02),イライラ(F (1,134)=4.23,p<.05,ηp² = .03)において依存と対象人物の交互作用が有意であった。親友場面でのみ,依存高群は低群よりも得点が高かった。自我拡大行動(F(1,134)=13.50, p<.001,ηp²=.09),自我縮小行動(F(1,134)=9.84,p<.01,ηp²=.07)において依存の主効果が有意であり,依存高群が低群よりも得点が高かった。ネガティブ解釈において,依存の主効果に有意傾向があり(F(1,134)=3.64, p<.10,ηp²=.03),依存高群が低群よりも得点が高い傾向が見られた。
誘い場面 恐怖(F(1,134)=8.02,p<.01,ηp²=.06),イライラ(F(1,134)=4.36,p<.05,ηp²=.03)において,依存と対象人物の交互作用が有意であり,親友場面でのみ,依存高群が低群よりも得点が高かった。また依存高群は,母親より親友に対して恐怖得点が高く,依存低群は母親よりも親友においてイライラ得点が低かった。また,自己主張行動において依存の主効果が見られ(F(1,134)=13.89,p<.001,ηp²=.09),依存高群が低群よりも得点が高かった。取り繕い行動では依存の主効果に有意傾向があり(F(1,134)=3.59,p<.10,ηp²=.03),依存高群が低群より得点が高い傾向が見られた。ネガティブ解釈においては,依存と対象人物の交互作用が見られ(F(1,134)=8.27,p<.01,ηp²=.06),親友場面でのみ,依存高群は低群よりも得点が高かった。
考 察
依存高群は低群よりネガティブな対人感情をより抱くという結果が得られ,仮説1は支持された。依存的な人が他者の態度に敏感であることや,見捨てられ不安が高いことをふまえると(Bornstein et al.,2003),意図的な拒否がなくとも他者から誘いを断られることは依存高群にとってある種の拒否であり,ネガティブな対人感情を高めることがわかった。また依存高群は自我拡大および自我縮小行動をとる結果が得られ,仮説2は支持された。特に誘い場面では「それでも食事に行きたいと言う」などの自己主張傾向が見られたが,依存高群の自己の要望を通すことへのこだわりは,先行研究とも一致する結果である(Haggerty et al.,2015)。
また,これらの感情や行動は相手によっても変わることがわかった。特に誘い場面では,依存高群の恐怖は親友よりも母親に対して低まる一方で,イライラは差がなかった。友人など流動的な対人関係における対人葛藤では,関係維持のため慎重な対応が必要だが,家族にはそうした配慮は必要ない(Laursen,1993)。こうした結果は他の要因においても見られ,依存が対人感情や行動にどう影響するかは相手によって異なることがわかった。
さらに,依存高群は友人との葛藤場面においてのみ,依存低群よりネガティブ解釈をしやすいという結果が得られ,仮説3は一部支持された。依存高群が対人葛藤場面においてネガティブな対人感情をより感じる背景には,ネガティブな他者認知も関わっていることが示唆された。
総 括
本研究は,依存が他者とのやり取りの中でどのような意味を持つのかといったより社会的な観点から依存を捉えた。他者とのやり取りにおいて依存がどのように表出されるかは,状況や他者との関係性よっても変わるということが示された。