[PG55] 中学生の社会的スキル,同性・異性友人からのソーシャル・サポート,精神的健康の関連
Keywords:社会的スキル, ソーシャル・サポート, 精神的健康
目 的
中学生の時期は,異性に対する親和的指向が急激に高まる(富重, 2000) 一方,異性に関する悩みの主観的ストレス度が高まることが明らかにされており (内田・松浦, 2001),異性とのコミュニケーションにおいても,上手く自分の気持ちを伝えられずに葛藤を感じる場面が増えると予想される。大学生においては,同性だけでなく異性の友人と適切にコミュニケーションをとれることが精神的健康の維持に重要であると示唆されており (牧野, 2013),中学生においても同様のことが予想される。また,精神的健康に影響をおよぼす対人的要因にソーシャル・サポートがある。これまでの中学生を対象とした研究においては,「友人」が「異性」「同性」に分けて検討されていない。そこで,本研究では,中学生の社会的スキルと「同性」「異性」それぞれの友人からのソーシャル・サポートが精神的健康に与える影響について検討することを目的とした。なお,本研究では精神的健康の指標として,抑うつと不安を扱った。
方 法
対象 公立A中学校の3年生4学級の生徒115名 (男子61名,女子54名)
調査内容 (1) 中学生用社会的スキル尺度25項目 (嶋田, 1998),(2) 岡安・高山 (1999) のソーシャル・サポート領域4項目のサポート源を「男子の友人」「女子の友人」に改変して使用,(3) 子ども用抑うつ自己評価尺度 (DSRS-C: 村田他, 1996) のうちいじめと自殺に関する項目を除いた16項目,(4) 短縮版児童用不安尺度8項目 (Short-CAS: 石川他, 印刷中)
結 果
分析対象者は,男子44名,女子45名であった。本研究で扱う変数は,先行研究において性差が確認されているため,男女別に分析を行った。はじめに,各尺度得点における相関係数を算出した (Table 1)。
次に社会的スキル,同性,異性友人それぞれからのソーシャル・サポートが抑うつ,不安それぞれに与える影響を検討するために階層的重回帰分析を行った。抑うつを目的変数とした分析においては,男子は同性友人サポート,異性友人サポートの増分は有意ではなかった。女子においては,同性友人サポートの増分が有意,異性友人サポートの増分が有意傾向を示した (Table 2)。
不安を目的変数とした分析の結果,男子は同性,異性にかかわらず友人からのソーシャル・サポートは有意な影響を及ぼしていなかった。女子は,異性友人サポートが有意に影響することが示された (Table 3)。
考 察
本研究の結果,女子においては,抑うつ低減には同性友人からのサポート,不安低減には異性友人からのサポートを高めることが有効であり,同性友人,異性友人との関係を良好に保つことが精神的健康の維持に重要であると示唆された。一方,男子においては,同性,異性にかかわらず,友人からのサポートは,抑うつや不安の低減にあまり効果がないことが示された。
男子は他者からの援助を受けずに独力で困難な問題を解決することが期待されがちである社会的・文化的要因 (嶋, 1992) を反映した結果であると考えられた。男子の抑うつ低減には社会的スキルの向上が有効であるが,不安の低減には他者との相互作用にかかわる変数よりも個人内の変数に着目することが望ましいと考えられる。
中学生の時期は,異性に対する親和的指向が急激に高まる(富重, 2000) 一方,異性に関する悩みの主観的ストレス度が高まることが明らかにされており (内田・松浦, 2001),異性とのコミュニケーションにおいても,上手く自分の気持ちを伝えられずに葛藤を感じる場面が増えると予想される。大学生においては,同性だけでなく異性の友人と適切にコミュニケーションをとれることが精神的健康の維持に重要であると示唆されており (牧野, 2013),中学生においても同様のことが予想される。また,精神的健康に影響をおよぼす対人的要因にソーシャル・サポートがある。これまでの中学生を対象とした研究においては,「友人」が「異性」「同性」に分けて検討されていない。そこで,本研究では,中学生の社会的スキルと「同性」「異性」それぞれの友人からのソーシャル・サポートが精神的健康に与える影響について検討することを目的とした。なお,本研究では精神的健康の指標として,抑うつと不安を扱った。
方 法
対象 公立A中学校の3年生4学級の生徒115名 (男子61名,女子54名)
調査内容 (1) 中学生用社会的スキル尺度25項目 (嶋田, 1998),(2) 岡安・高山 (1999) のソーシャル・サポート領域4項目のサポート源を「男子の友人」「女子の友人」に改変して使用,(3) 子ども用抑うつ自己評価尺度 (DSRS-C: 村田他, 1996) のうちいじめと自殺に関する項目を除いた16項目,(4) 短縮版児童用不安尺度8項目 (Short-CAS: 石川他, 印刷中)
結 果
分析対象者は,男子44名,女子45名であった。本研究で扱う変数は,先行研究において性差が確認されているため,男女別に分析を行った。はじめに,各尺度得点における相関係数を算出した (Table 1)。
次に社会的スキル,同性,異性友人それぞれからのソーシャル・サポートが抑うつ,不安それぞれに与える影響を検討するために階層的重回帰分析を行った。抑うつを目的変数とした分析においては,男子は同性友人サポート,異性友人サポートの増分は有意ではなかった。女子においては,同性友人サポートの増分が有意,異性友人サポートの増分が有意傾向を示した (Table 2)。
不安を目的変数とした分析の結果,男子は同性,異性にかかわらず友人からのソーシャル・サポートは有意な影響を及ぼしていなかった。女子は,異性友人サポートが有意に影響することが示された (Table 3)。
考 察
本研究の結果,女子においては,抑うつ低減には同性友人からのサポート,不安低減には異性友人からのサポートを高めることが有効であり,同性友人,異性友人との関係を良好に保つことが精神的健康の維持に重要であると示唆された。一方,男子においては,同性,異性にかかわらず,友人からのサポートは,抑うつや不安の低減にあまり効果がないことが示された。
男子は他者からの援助を受けずに独力で困難な問題を解決することが期待されがちである社会的・文化的要因 (嶋, 1992) を反映した結果であると考えられた。男子の抑うつ低減には社会的スキルの向上が有効であるが,不安の低減には他者との相互作用にかかわる変数よりも個人内の変数に着目することが望ましいと考えられる。