[PG70] 小学校の保健室の入口の開放と悩みにおける認識の関連性
キーワード:小学校保健室, 悩み, 入口の開放
問題と目的
保健室入り口は,養護教諭の調査よりドアや窓をできるだけ開放し児童生徒にとって入りやすい保健室であるための配慮をしていることを相川(1991)が示しており,文部科学省が2012年の中央教育審議会答申で提唱している養護教諭の役割として求められている保健室の学校保健活動のセンター的役割が発揮されている。冨澤(2009)は,一橋大学学生相談室の移転にともない入口を大きなガラス張りの自動ドアにし,外から中の様子が見渡せるようにしたところ,ドアノブを回して開く重い扉であったときに比べ,相談件数が約10倍となったことを明らかにしている。2011年に日本学校保健会が行った保健室利用状況調査によると小学校の保健室来室理由として「けがの手当て」「体調が悪い」等救急処置を求めるものがある中,「友達の付き添い」「なんとなく」「先生と話がしたい」等の理由もあり,身体だけでなく悩みなど心の面でも需要度は高い。一方で小学生の保健室の入口に関する認識も外から中の様子が見えることで来室しやすいかということに対する先行研究は見当たらない。これらのことを明らかにし保健室の入口の開放を望む子どもの特性を知ることは,子どもの心身の健康問題に関する悩みや子どもたちが日々の学校生活をいきいきと過ごすために新たな提言ができると考える。そこで本研究では,小学生の悩みの差異や保健室の入口の開放の効果を検討する。
研 究
目的
小学生なやみ尺度(健康版)(自作)と保健室の入口の開放の希望についての関連を明らかにすることである。
方法(調査対象者・調査時期・調査手続き)
A県内B公園利用者173名,公立C小学校24名を対象とし,2017年2月~3月に実施した。フェイスシートにて保健室の入口開放希望の有無を質問するとともに小学生なやみ尺度(健康版)(自作)の質問紙調査を行った。
倫理的配慮
A県内B公園を管理する土木事務所および公園管理事務所に事前に公園内で調査をすることへの許可を得た。研究者が,公園を利用する4~6年生本人と同行している保護者に直接調査の依頼をして,回答は任意であり,回答しないことによる不利益は生じないこと,個人が特定されないことを口頭説明と説明文書によって説明し,研究協力の同意を得られた児童を対象に調査を行った。C小学校では学校長に調査することへの許可を得た。各学級担任を通して,5年6年の在籍児童に質問紙への回答を依頼した。あらかじめ児童および保護者に対して,回答は任意であり,回答しないことによる不利益は生じないこと,個人が特定されないことを説明文書によって教示し,研究協力の同意を得た。
結果と考察
保健室の入口の開放の希望と小学生なやみ尺度(健康版)の3下位尺度得点の関連を検討するために保健室の入口の開放の希望を独立編数としてt検定を行った(Table1)結果,保健室の入口の開放希望群が「他者信頼傾向」では5%水準で有意であり,「思い込み傾向」では10%水準で有意な傾向であった。このことから,保健室の入り口の解放を希望する児童は,困ったことがあった時は他者に助けを求めることができ、悩みを担任や保健室で話したいと思っていることがわかった。一方で、「こだわり傾向」に関しては有意な差は見られなかった。「こだわり傾向」に有意な差が無かった要因として,学校での悩みについて限定して質問をしており,少数の学校で調査すると,その学校の保健室の雰囲気や養護教諭の存在に影響があると考えられるため,一つの学校に限らず様々な学校の子どもたちで調査できる公園という子どもたちが集う場所で調査をしたため,学校での悩みがイメージしにくい状態だったからだと考える。
今後の課題
本研究では,公園と一つの小学校で調査を実施した。公園では様々な学校の児童に対して調査をすることができたことは広い調査ができ効果があったといえる。公園を利用する児童はどちらかというと活発な児童が多かったので,学校に登校することができない児童など対象児童を変えることで悩みに関するさらなる課題が見つかる可能性がある。また,長期にわたる現地調査で保健室の入口の希望に関する具体的な子どもの声を聞き出すことができれば,保健室の入口の開放の希望に関する調査に広がりが出ると考えられる。そして,調査対象を子どもだけでなく学校に勤務する職員や保護者,養護教諭自身に広げることも必要である。いつでもだれでも入りやすい保健室,そして入口が開放していることで安心感が提供できる保健室であるために調査方法を今後も検討し分析をして行く必要がある。
保健室入り口は,養護教諭の調査よりドアや窓をできるだけ開放し児童生徒にとって入りやすい保健室であるための配慮をしていることを相川(1991)が示しており,文部科学省が2012年の中央教育審議会答申で提唱している養護教諭の役割として求められている保健室の学校保健活動のセンター的役割が発揮されている。冨澤(2009)は,一橋大学学生相談室の移転にともない入口を大きなガラス張りの自動ドアにし,外から中の様子が見渡せるようにしたところ,ドアノブを回して開く重い扉であったときに比べ,相談件数が約10倍となったことを明らかにしている。2011年に日本学校保健会が行った保健室利用状況調査によると小学校の保健室来室理由として「けがの手当て」「体調が悪い」等救急処置を求めるものがある中,「友達の付き添い」「なんとなく」「先生と話がしたい」等の理由もあり,身体だけでなく悩みなど心の面でも需要度は高い。一方で小学生の保健室の入口に関する認識も外から中の様子が見えることで来室しやすいかということに対する先行研究は見当たらない。これらのことを明らかにし保健室の入口の開放を望む子どもの特性を知ることは,子どもの心身の健康問題に関する悩みや子どもたちが日々の学校生活をいきいきと過ごすために新たな提言ができると考える。そこで本研究では,小学生の悩みの差異や保健室の入口の開放の効果を検討する。
研 究
目的
小学生なやみ尺度(健康版)(自作)と保健室の入口の開放の希望についての関連を明らかにすることである。
方法(調査対象者・調査時期・調査手続き)
A県内B公園利用者173名,公立C小学校24名を対象とし,2017年2月~3月に実施した。フェイスシートにて保健室の入口開放希望の有無を質問するとともに小学生なやみ尺度(健康版)(自作)の質問紙調査を行った。
倫理的配慮
A県内B公園を管理する土木事務所および公園管理事務所に事前に公園内で調査をすることへの許可を得た。研究者が,公園を利用する4~6年生本人と同行している保護者に直接調査の依頼をして,回答は任意であり,回答しないことによる不利益は生じないこと,個人が特定されないことを口頭説明と説明文書によって説明し,研究協力の同意を得られた児童を対象に調査を行った。C小学校では学校長に調査することへの許可を得た。各学級担任を通して,5年6年の在籍児童に質問紙への回答を依頼した。あらかじめ児童および保護者に対して,回答は任意であり,回答しないことによる不利益は生じないこと,個人が特定されないことを説明文書によって教示し,研究協力の同意を得た。
結果と考察
保健室の入口の開放の希望と小学生なやみ尺度(健康版)の3下位尺度得点の関連を検討するために保健室の入口の開放の希望を独立編数としてt検定を行った(Table1)結果,保健室の入口の開放希望群が「他者信頼傾向」では5%水準で有意であり,「思い込み傾向」では10%水準で有意な傾向であった。このことから,保健室の入り口の解放を希望する児童は,困ったことがあった時は他者に助けを求めることができ、悩みを担任や保健室で話したいと思っていることがわかった。一方で、「こだわり傾向」に関しては有意な差は見られなかった。「こだわり傾向」に有意な差が無かった要因として,学校での悩みについて限定して質問をしており,少数の学校で調査すると,その学校の保健室の雰囲気や養護教諭の存在に影響があると考えられるため,一つの学校に限らず様々な学校の子どもたちで調査できる公園という子どもたちが集う場所で調査をしたため,学校での悩みがイメージしにくい状態だったからだと考える。
今後の課題
本研究では,公園と一つの小学校で調査を実施した。公園では様々な学校の児童に対して調査をすることができたことは広い調査ができ効果があったといえる。公園を利用する児童はどちらかというと活発な児童が多かったので,学校に登校することができない児童など対象児童を変えることで悩みに関するさらなる課題が見つかる可能性がある。また,長期にわたる現地調査で保健室の入口の希望に関する具体的な子どもの声を聞き出すことができれば,保健室の入口の開放の希望に関する調査に広がりが出ると考えられる。そして,調査対象を子どもだけでなく学校に勤務する職員や保護者,養護教諭自身に広げることも必要である。いつでもだれでも入りやすい保健室,そして入口が開放していることで安心感が提供できる保健室であるために調査方法を今後も検討し分析をして行く必要がある。