[PG71] 小学校若手教員のインフォーマルな場におけるベテラン教員とのコミュニケーションが同僚性に及ぼす影響
キーワード:若手教員, 同僚性, コミュニケーション
問題と目的
近年,学校現場では,団塊の世代の大量退職に伴い,若手教員の割合が大幅に増加している。そこで,組織的な対応の基盤となるのが職場の助け合えるような人間関係,つまり「同僚性」であると井上(2014)は指摘している。若手教員の同僚性を高めるには,OJTのような「フォーマル」な場での研修等を通して世代や経験値の違い等から生じるベテラン教員との意識の差を埋めるだけでなく,日常会話を中心とした「インフォーマル」な場でのコミュニケーションも大変重要であると考える。そこで本研究では,若手教員がインフォーマルな場で,世代間のコミュニケーションを密にしながら,「同僚性」を高める方策の検討を行うことを目的とする。
方 法
調査時期・協力者 2017年7月から8月に公立及び私立小学校の常勤講師及び教諭362名を対象に調査を行った(有効回答率98.2%)。分析対象は教職経験6年目までの254名とした。
調査内容 3種類の質問紙調査。江頭(2013)の尺度を参考に小学校教員用に適用した「インフォーマルな場におけるコミュニケーション尺度」,宮入(2007)の尺度を参考に作成した「職場雰囲気尺度」,井上(2014)の尺度に1項目を加えた「同僚性尺度」を用いた。4件法で回答を求めた。
結果と考察
(1)各尺度の因子分析 因子分析(主因子法・プロマックス回転)の結果,インフォーマルな場におけるコミュニケーション尺度については「支え合い促進」「教員の能力情報交換」「働きやすさ促進」「気軽な情報交換」「迅速な情報交換」の5因子(α=.89~.64),職場雰囲気尺度については「活性的な雰囲気」(α=.84),「同調的な雰囲気」(α=.63)の2因子,同僚性尺度については,「同僚教員への道具的サポート」「協働による授業改善」「同僚教員への情緒的サポート」「個業の意識」「教室開示」の5因子(α=.79~.63)が抽出された。
(2)職種及び性別による差異 各因子分析において抽出された下位尺度得点を従属変数とする2要因分散分析を行った。その結果,インフォーマルな場におけるコミュニケーション尺度では,性別の主効果は「支え合い促進」(F(1,248)=10.582,p<.01),「働きやすさ促進」(F(1,249)=4.796,p<.05),「迅速な情報交換」(F(1,247)=10.966,p<.01)で,女性は男性よりも有意に高かった。職場雰囲気尺度では,「活性的な雰囲気」(F(1,247)=5.790,p<.05)において職種の主効果が認められ,常勤講師は教諭よりも有意に高かった。同僚性尺度では,「同僚教員への道具的サポート」(F(1,247)=4.659,p<.05)において交互作用が認められ,単純主効果の検定を行った結果,教諭において男性は女性よりも高い傾向がみられた(F(1,247)=3.476,p=.063)。「個業の意識」(F(1,250)=8.534,p<.05)においては性別の主効果が認められ,男性は女性よりも有意に高かった。
(3)インフォーマルな場におけるコミュニケーションが同僚性に及ぼす影響 若手教員の同僚性に対して,インフォーマルな場におけるコミュニケーションが影響を及ぼし,職場雰囲気はコミュニケーションを媒介として直接的だけでなく間接的にも影響を及ぼしていると仮定したモデルをたて,パス解析を行った。その結果,男女合わせたデータでは,適合指標の値はGFI=.908,CFI=.912,RMSEA=.091となり,モデルを支持することが示された(Figure1)。また,女性教員のみであればモデルの適合度(GFI=.923,CFI=.957,RMSEA=.061)は一層高くなることが分かったが,男性教員のみを対象とした場合(GFI=.838,CFI=.852,RMSEA=.128),仮説モデルは支持されなかった。
標準化係数の値からは,活性的な職場雰囲気は若手教員の同僚性を育成する直接的な影響よりも,ベテラン教員とのコミュニケーションを促進することを媒介した間接的な影響の方が大きいことが確認された。つまり,若手教員は職場の活性的な雰囲気の中でベテラン教員と様々なコミュニケーションを図ることによって,同僚性を構築できるということが示唆された。
近年,学校現場では,団塊の世代の大量退職に伴い,若手教員の割合が大幅に増加している。そこで,組織的な対応の基盤となるのが職場の助け合えるような人間関係,つまり「同僚性」であると井上(2014)は指摘している。若手教員の同僚性を高めるには,OJTのような「フォーマル」な場での研修等を通して世代や経験値の違い等から生じるベテラン教員との意識の差を埋めるだけでなく,日常会話を中心とした「インフォーマル」な場でのコミュニケーションも大変重要であると考える。そこで本研究では,若手教員がインフォーマルな場で,世代間のコミュニケーションを密にしながら,「同僚性」を高める方策の検討を行うことを目的とする。
方 法
調査時期・協力者 2017年7月から8月に公立及び私立小学校の常勤講師及び教諭362名を対象に調査を行った(有効回答率98.2%)。分析対象は教職経験6年目までの254名とした。
調査内容 3種類の質問紙調査。江頭(2013)の尺度を参考に小学校教員用に適用した「インフォーマルな場におけるコミュニケーション尺度」,宮入(2007)の尺度を参考に作成した「職場雰囲気尺度」,井上(2014)の尺度に1項目を加えた「同僚性尺度」を用いた。4件法で回答を求めた。
結果と考察
(1)各尺度の因子分析 因子分析(主因子法・プロマックス回転)の結果,インフォーマルな場におけるコミュニケーション尺度については「支え合い促進」「教員の能力情報交換」「働きやすさ促進」「気軽な情報交換」「迅速な情報交換」の5因子(α=.89~.64),職場雰囲気尺度については「活性的な雰囲気」(α=.84),「同調的な雰囲気」(α=.63)の2因子,同僚性尺度については,「同僚教員への道具的サポート」「協働による授業改善」「同僚教員への情緒的サポート」「個業の意識」「教室開示」の5因子(α=.79~.63)が抽出された。
(2)職種及び性別による差異 各因子分析において抽出された下位尺度得点を従属変数とする2要因分散分析を行った。その結果,インフォーマルな場におけるコミュニケーション尺度では,性別の主効果は「支え合い促進」(F(1,248)=10.582,p<.01),「働きやすさ促進」(F(1,249)=4.796,p<.05),「迅速な情報交換」(F(1,247)=10.966,p<.01)で,女性は男性よりも有意に高かった。職場雰囲気尺度では,「活性的な雰囲気」(F(1,247)=5.790,p<.05)において職種の主効果が認められ,常勤講師は教諭よりも有意に高かった。同僚性尺度では,「同僚教員への道具的サポート」(F(1,247)=4.659,p<.05)において交互作用が認められ,単純主効果の検定を行った結果,教諭において男性は女性よりも高い傾向がみられた(F(1,247)=3.476,p=.063)。「個業の意識」(F(1,250)=8.534,p<.05)においては性別の主効果が認められ,男性は女性よりも有意に高かった。
(3)インフォーマルな場におけるコミュニケーションが同僚性に及ぼす影響 若手教員の同僚性に対して,インフォーマルな場におけるコミュニケーションが影響を及ぼし,職場雰囲気はコミュニケーションを媒介として直接的だけでなく間接的にも影響を及ぼしていると仮定したモデルをたて,パス解析を行った。その結果,男女合わせたデータでは,適合指標の値はGFI=.908,CFI=.912,RMSEA=.091となり,モデルを支持することが示された(Figure1)。また,女性教員のみであればモデルの適合度(GFI=.923,CFI=.957,RMSEA=.061)は一層高くなることが分かったが,男性教員のみを対象とした場合(GFI=.838,CFI=.852,RMSEA=.128),仮説モデルは支持されなかった。
標準化係数の値からは,活性的な職場雰囲気は若手教員の同僚性を育成する直接的な影響よりも,ベテラン教員とのコミュニケーションを促進することを媒介した間接的な影響の方が大きいことが確認された。つまり,若手教員は職場の活性的な雰囲気の中でベテラン教員と様々なコミュニケーションを図ることによって,同僚性を構築できるということが示唆された。