[PH28] 日本人英語学習者の主語選択に関する実験的研究
新旧情報構造か,興味・関心か!
キーワード:英文の主語選択, 新旧情報構造, 興味・関心
問題と目的
英語の特徴は,日本語と比較して文構造が語順優位の言語である。日本人英語学習者が英文を発話する際,まず,主語を選択する。主語選択の視点を能動文,受動文の選択を素材として明らかにする。
先行研究
Anisfeld & Klenbort (1973)らは,能動文と受動文の選択の条件について言語学や心理言語学などの多数の研究や実験を詳細に検討し,特に,談話の情報構造(新・旧情報)により能動文と受動文の選択が行われていることを説明している。
また,Jespersen (1924;1933)は,受動文は,能動文でも表現できる内容をただ単に別の統語構造で表現しているのではなく談話内における話し手の興味・関心の焦点の置き場所の違いによって用いられると述べた。
いずれも英語母語話者を対象とした研究であるが,これらをもとに次の仮説を立てた。
仮 説
(1) Given-New Hypothesis (GN仮説)
話し手は,聞き手がすでに了解している内容(「旧情報」)を文の主語として選択する。この主語選択にもとづいて能動文と受動文の選択がおこなわれる。
(2) Emphatic-Subject Hypothesis (ES仮説)
この仮説では,文の主語のもうひとつの機能を考える。話し手の興味・関心の焦点をここでは,“Emphatic focus”として,話し手はその焦点を当てている対象を継続して文の主語として表現する。これにより,能動文と受動文の選択が行われる。
手続き・方法
実験参加者:日本人大学生118名
実験課題と手続き:実験課題は,文脈文が与えられ,それに続く文として(1a)か(1b)のどちらかを直観的に判断して選択するよう指示した。実験冊子にはGN仮説とES仮説それぞれについて10組,Passive Bias,Active Bias については,10組中それぞれ5組ずつとした。
“Given-New” Bias for the passive
“the contextual stimulus”
My friend bought a new house last year.
?
“the target sentence”
(1a) The house was destroyed by atyphoon last week.
(1b) A typhoon destroyed the house last week.
“Emphatic-Subject” Bias for the active
“the contextual stimulus”
The hungry lion found the deer.
?
“the target sentence”
(2a) The deer was attacked by the lion.
(2b) The lion attacked the deer.
結 果
考 察
日本人の英語学習者にとって,受動文の選択使用は,「新旧の情報構造」に敏感であったが,本来の能動文と受動文の談話内での機能上の違いが意識されているとはいえなかった。そのひとつに受動文の統語構造のみが強調される傾向があること,日本語の影響,無標・有標の区別が弱いことがあげられる。
英語の特徴は,日本語と比較して文構造が語順優位の言語である。日本人英語学習者が英文を発話する際,まず,主語を選択する。主語選択の視点を能動文,受動文の選択を素材として明らかにする。
先行研究
Anisfeld & Klenbort (1973)らは,能動文と受動文の選択の条件について言語学や心理言語学などの多数の研究や実験を詳細に検討し,特に,談話の情報構造(新・旧情報)により能動文と受動文の選択が行われていることを説明している。
また,Jespersen (1924;1933)は,受動文は,能動文でも表現できる内容をただ単に別の統語構造で表現しているのではなく談話内における話し手の興味・関心の焦点の置き場所の違いによって用いられると述べた。
いずれも英語母語話者を対象とした研究であるが,これらをもとに次の仮説を立てた。
仮 説
(1) Given-New Hypothesis (GN仮説)
話し手は,聞き手がすでに了解している内容(「旧情報」)を文の主語として選択する。この主語選択にもとづいて能動文と受動文の選択がおこなわれる。
(2) Emphatic-Subject Hypothesis (ES仮説)
この仮説では,文の主語のもうひとつの機能を考える。話し手の興味・関心の焦点をここでは,“Emphatic focus”として,話し手はその焦点を当てている対象を継続して文の主語として表現する。これにより,能動文と受動文の選択が行われる。
手続き・方法
実験参加者:日本人大学生118名
実験課題と手続き:実験課題は,文脈文が与えられ,それに続く文として(1a)か(1b)のどちらかを直観的に判断して選択するよう指示した。実験冊子にはGN仮説とES仮説それぞれについて10組,Passive Bias,Active Bias については,10組中それぞれ5組ずつとした。
“Given-New” Bias for the passive
“the contextual stimulus”
My friend bought a new house last year.
?
“the target sentence”
(1a) The house was destroyed by atyphoon last week.
(1b) A typhoon destroyed the house last week.
“Emphatic-Subject” Bias for the active
“the contextual stimulus”
The hungry lion found the deer.
?
“the target sentence”
(2a) The deer was attacked by the lion.
(2b) The lion attacked the deer.
結 果
考 察
日本人の英語学習者にとって,受動文の選択使用は,「新旧の情報構造」に敏感であったが,本来の能動文と受動文の談話内での機能上の違いが意識されているとはいえなかった。そのひとつに受動文の統語構造のみが強調される傾向があること,日本語の影響,無標・有標の区別が弱いことがあげられる。