日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-73)

2018年9月17日(月) 13:00 〜 15:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PH65] 教師の伝え方が保護者に与える影響

子どもの発達理解に着目して

米川純子 (聖徳大学)

キーワード:教師の伝え方, 子どもの発達理解, 保護者の受けとめ方

問題と目的
 平成20年度「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」以降,宮城県特別支援教育グランドモデル地域の報告の中で,事業の課題とその解決のために必要な取り組みとして,相談支援ファイルの有効活用が挙げられている。
 相談支援ファイルに今までの対応,具体的な支援の仕方,今後の見通しなど,アドバイスされたことを細かく記述しておくことによって,その子どもへのより具体的で的確な支援を行うことができる。一方で,これらのことを保護者が支援者から伝えられた場合,どのような受けとめ方をし,記述していくかということが課題となってくることが予想される。相談支援ファイルを有効に活用していくためにも,保護者と支援チームとの連携が重要だということが考えられる。
 本研究では,保護者が子どもの発達に関しての受容スタイルを確認し,他者からみられる子どもの姿と認知の相違点がどの程度なのかを図り,さらに教師が児童の発達理解に対して,どの視点に着目し保護者に伝えるのかを検討した。

方  法
 公立A小学校3年生の保護者70名と小学校教員40名,公立B小学校3年生の保護者70名と小学校教員40名に対して回収できた保護者114名と小学校教員27名を調査対象とした。
調査内容
 第1調査は,小学校3年生の保護者を対象に小学校に入学した頃に比べて子どもが成長したと感じることは何か,子どもの現在の課題は何か,他者から子どものことを言われて悩んだことは何かを自由記述調査を行った。第2調査は,小学校教員を対象に発達課題を抱えた児童に対して,児童の発達課題のどの部分に着目して保護者に伝えるのかを事例を挙げて設問し自由記述を行った。

結果と考察
 調査した自由記述の回答を基に,心理学を専攻する大学院生5名とKJ法を用いて分類を行った。
 その結果, 第1調査の保護者の子どもに対する「成長した姿の認知」は,「家庭環境の中」でみせる子どもの姿を重視する傾向が強いということが明らかになった。保護者が望む子どもの発達課題とは,学習面というより家庭での生活環境での習慣性のある事象に対して高く望む傾向がある。その為保護者は,子どもがあらゆる場面でみせる姿に,発達課題がどのように連動しているのかが理解しにくいことが推察される。第2調査は,小学校教員を対象に発達課題を抱えた児童に対して,児童の発達課題のどの部分に着目して保護者に伝えるのかを検討した。その結果,「受容型」・「指摘型」・「説明型」の3つに分類された。保護者の子どもの発達課題に対する認知を肯定する傾向が強いが,子どもの発達課題と思われる姿に対して,保護者に細かな対応やスキルを伝えること(説明型)は総回答数の3割程であった。子どもの発達課題の認知が,行動に連動性があることを理解しにくい保護者に対して,支援者の説明不足を示唆していることになる。