日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

2019年9月14日(土) 10:00 〜 12:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA56] 授業場面における交流活動と内発的動機づけ

岡田涼 (香川大学)

キーワード:交流活動、内発的動機づけ

問題と目的
 これまで,仲間との協同が学習成果につながることが示されている。協同学習に関する研究では,仲間との協同を取り入れた授業が児童の学業成績や動機づけを促すことが明らかにされてきた(Johnson et al., 2008; Slavin et al., 2003)。協同学習に関する研究では,協同学習の原理をもとに構成された授業プログラムの効果が検証されている。
 小学校においては,多くの授業で交流活動が取り入れられている。その中には,必ずしも特定の協同学習の技法ではなく,それぞれの教師が授業展開に即して工夫しながら交流活動を取り入れている。また,授業において交流活動を取り入れたとしても,個々の児童によって活動への取り組みの度合は異なる部分がある。
 本研究では,小学校において日常的に行われている交流活動が内発的動機づけに及ぼす効果について検討する。その際,学級レベルでの取り組みの効果と個々の児童の取り組みの効果を弁別して検討する。
方  法
調査協力者 公立小学校6校に在籍する3~6年生児童1554名。学級数は55であり,1学級あたりの児童数の平均は28.25名であった。
質問紙 ①内発的動機づけ:鹿毛(1994),桜井・高野(1985)の概念整理などを参考に,6項目を作成した(「勉強するのは楽しいことだと思う」など)。普段の授業全般について,4件法で回答を求めた。②交流活動:授業場面での交流活動について,独自に4項目を作成した(「クラスの友だちとグループになって活動する」など)。普段の授業全般について,4件法で回答を求めた。
結  果
 内発的動機づけを測定する6項目の平均を内発的動機づけ得点とした。交流活動を測定する4項目の平均を交流活動得点とした。各尺度の級内相関は,内発的動機づけが.10であり,交流活動が.11であった。デザインエフェクトは,内発的動機づけが3.59,交流活動が4.04であった。
 階層線形モデルによって,交流活動が内発的動機づけに及ぼす影響を検討した。レベル1を児童レベル,レベル2を学級レベルとした。レベル1の切片に対して,レベル2で交流活動の学級平均と学年,学級サイズを投入するモデル(モデル1)と,レベル1に交流活動の得点を投入するモデル(モデル2)を分析した。レベル1の変数は学級平均で中心化し,レベル2の変数は全体平均で中心化した。学年は3年生を0とし,学級サイズは全体平均で中心化した。尤度比検定の結果,モデル間の差が有意であった(χ2(3)=448.35, p<.001)。モデル2の結果はTable 1の通りである。学級レベルにおいて,交流活動は正の効果を示した(γ=.49, p<.001)。学年は負の効果を示した(γ=−.11, p<.001)。児童レベルにおいても,交流活動は正の効果を示した(γ=.51, p<.001)。
考  察
 本研究では,交流活動が内発的動機づけにもたらす効果を検討した。学級レベルで考えたときに,交流活動が多い学級ほど,児童の内発的動機づけは高くなっていた。そのため,日常の授業に交流活動を取り入れることは,学習意欲を促すという点で有効であると考えられる。ただし,交流活動の得点には学級内の分散もあり,学級内における交流活動の個人差が内発的動機づけと関連していた。授業中に交流活動を取り入れることは効果があるが,それだけでは必ずしも十分ではなく,個々の児童を確実に活動に取り組ませることが必要であるといえる。児童の積極的な取り組みを促すために,協同学習の技法(杉江, 2011)を参考にしたり,協同的な活動に対する動機づけ(岡田, 2018)に目を向けることが有効であると考えられる。