[PB59] 教員を対象としたいじめ予防・対応に関する研修の効果の検討
キーワード:いじめ、教員研修、効果検討
問題と目的
学校では深刻ないじめの発生が続いている。2013年にいじめ防止対策推進法が公布され,いじめの防止及びいじめの対応における,学校の役割,教員の役割が強調されている。いじめの予防や対応を学校で積極的に行っていくためには,教員のいじめに対応する自信(いじめ対応効力感)を高めることが欠かせない。海外では,教員のいじめ対応効力感に関する研究がいくつか見られ(Nicolaides et al., 2002;Sela-Shayovitz, 2009),測定する尺度も作成されている。本研究では,このいじめ対応効力感を高めるための教員研修を行い,その効果を検討することを目的とする。
方 法
調査協力者 第1著者が所属する大学の公開講座で6時間の研修を実施した。参加者は15名,属性は教員13名,学校事務員1名,大学院生1名であった(男性6名,女性8名,無記名1名)。
実施時期 2018年8月
プログラムの内容 各90分で実施した。
1.いじめに関する基本的知識
2.いじめへの学校全体の対応(管理職の視点)
3.いじめへの個別の対応(ピアメディエーション)
4.いじめへの学級・学校の対応(PBIS)
調査内容 事前アンケートでは1~3,事後は2,3を実施した。アンケートは無記名で実施した。
1.いじめに関する学習機会 5項目。
2.いじめ予防・対応に関連する知識 攻撃の分類,攻撃の機能,ネットいじめ,援助要請,ピアメディエーション,PBISに関する知識を尋ねる項目を独自に作成し,5件法で尋ねた。
3.いじめ対応効力感を測定する項目 前述のNicolaides et al.(2002)が作成した尺度を著者に許可をとりバックトランスレーションを行い,実施した。10項目5件法。
結 果
1.いじめの研修機会について
研修の機会については,「学校で配られる配布資料」13名,「教職課程中に学習した」1名,「教員になってから校内研修及び教育委員会主催の研修会で学習した」11名,「他機関の研修会等に参加した」5名,「その他」5名であった。
2.いじめに関する知識への効果
いじめに関する知識の事前事後得点のt検定の結果,「ネットいじめ」に関する知識を除いて,いずれも有意な得点の上昇が見られた(t=-3.11~-7.87,ps<.001)(Table 1)。
3.いじめ対応効力感への効果
いじめ対応効力感のt検定の結果をTable 1に示す。いずれも有意な得点の上昇が見られた(t=-2.43~-6.96,ps<.05)が,効果量を見ると被害児童生徒のサポートと傍観者への働きかけは.50~.60台と他よりも低い傾向が見られた。
考 察
いじめ知識・いじめ対応効力感の得点の変化から,今回行った研修が教員のいじめ知識・いじめ対応効力感の上昇に寄与したことが示された。教員は第一線でいじめの予防・対応に関わることが求められる一方で,研修の機会は学校での配布資料や校内研修・教育委員会主催の研修に限られている。教員のいじめに関する知識・いじめ対応効力感を高める研修の普及が今後の課題である。
付 記
本研究は,日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究C,課題番号17K04341)の助成を受けている。
学校では深刻ないじめの発生が続いている。2013年にいじめ防止対策推進法が公布され,いじめの防止及びいじめの対応における,学校の役割,教員の役割が強調されている。いじめの予防や対応を学校で積極的に行っていくためには,教員のいじめに対応する自信(いじめ対応効力感)を高めることが欠かせない。海外では,教員のいじめ対応効力感に関する研究がいくつか見られ(Nicolaides et al., 2002;Sela-Shayovitz, 2009),測定する尺度も作成されている。本研究では,このいじめ対応効力感を高めるための教員研修を行い,その効果を検討することを目的とする。
方 法
調査協力者 第1著者が所属する大学の公開講座で6時間の研修を実施した。参加者は15名,属性は教員13名,学校事務員1名,大学院生1名であった(男性6名,女性8名,無記名1名)。
実施時期 2018年8月
プログラムの内容 各90分で実施した。
1.いじめに関する基本的知識
2.いじめへの学校全体の対応(管理職の視点)
3.いじめへの個別の対応(ピアメディエーション)
4.いじめへの学級・学校の対応(PBIS)
調査内容 事前アンケートでは1~3,事後は2,3を実施した。アンケートは無記名で実施した。
1.いじめに関する学習機会 5項目。
2.いじめ予防・対応に関連する知識 攻撃の分類,攻撃の機能,ネットいじめ,援助要請,ピアメディエーション,PBISに関する知識を尋ねる項目を独自に作成し,5件法で尋ねた。
3.いじめ対応効力感を測定する項目 前述のNicolaides et al.(2002)が作成した尺度を著者に許可をとりバックトランスレーションを行い,実施した。10項目5件法。
結 果
1.いじめの研修機会について
研修の機会については,「学校で配られる配布資料」13名,「教職課程中に学習した」1名,「教員になってから校内研修及び教育委員会主催の研修会で学習した」11名,「他機関の研修会等に参加した」5名,「その他」5名であった。
2.いじめに関する知識への効果
いじめに関する知識の事前事後得点のt検定の結果,「ネットいじめ」に関する知識を除いて,いずれも有意な得点の上昇が見られた(t=-3.11~-7.87,ps<.001)(Table 1)。
3.いじめ対応効力感への効果
いじめ対応効力感のt検定の結果をTable 1に示す。いずれも有意な得点の上昇が見られた(t=-2.43~-6.96,ps<.05)が,効果量を見ると被害児童生徒のサポートと傍観者への働きかけは.50~.60台と他よりも低い傾向が見られた。
考 察
いじめ知識・いじめ対応効力感の得点の変化から,今回行った研修が教員のいじめ知識・いじめ対応効力感の上昇に寄与したことが示された。教員は第一線でいじめの予防・対応に関わることが求められる一方で,研修の機会は学校での配布資料や校内研修・教育委員会主催の研修に限られている。教員のいじめに関する知識・いじめ対応効力感を高める研修の普及が今後の課題である。
付 記
本研究は,日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究C,課題番号17K04341)の助成を受けている。