日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-67)

2019年9月15日(日) 13:30 〜 15:30 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:30~14:30
偶数番号14:30~15:30

[PE28] 特別支援教育の作業学習(窯業班)における職能形成  

「型」の視点でとらえる伝統工芸技術の伝承

永井弘人 (愛知教育大学大学院)

キーワード:特別支援教育、伝統工芸、熟達

目  的
 模倣を繰り返し,技能の修得を経て,自立する過程は,伝統芸能と職業教育に共通する点が多い。知的障害特別支援学校における作業学習では,師匠―弟子の関係はなく,一芸の達人を目指してもいない。しかし,目標の難易度は別にしても,技術の獲得とともに内面的な成長などは,作業学習と伝統工芸施術の伝承(「型」を身につける過程)に通底しており,その精査は,知的障害の生徒の「学び」に寄与することができると考える。
 本研究の実践は,愛知県A市,岐阜県B市など窯業が地場産業として盛んな地域に隣接し,伝統工芸技術が数多く伝承されてきた地域である。このような地域的な特性は,職業教育に関連した作業学習などの学習場面にも反映されている。
 したがって,本研究では,伝統工芸技術の伝承をわざ言語(生田(1978))やオノマトペ(高野等(2007))を授業改善の具体的手立てとして導入し,授業実践を通してその有効性を検証する。
方  法
対象生徒(窯業班)
 本班は,2年生4名,3年生4名計8名(男子4名 女子4名)で構成され,障害の種類,程度,作業経験は多様である。この学習集団は作業学習時のみの集団である。
 手続き
 窯業班の授業として4月から7月にかけて行われた実習日誌の平均点の比較において顕著な上昇がみられた項目を比較検討した。
 なお,本実践では,以下のようなオノマトペや「わざ言語」を使用した。
・ 使用したオノマトペの一例
 「初めはソッと,二回目はグサッと」(成形道具を均一に使用する場合)
・ わざ言語の例とその活用の一例
 「土をコロス」  (粘土の表面を滑らかにする場合)
結  果
 4月から5月に実施した実習日誌(Table 1)の生徒自身による評価を比較して,平均点が大きく上昇した項目は,「型紙を利用して~」と「道具類の操作~」である。この2か月で基本的な成形技術が身についたと評価できる。
考  察
 「わざ言語」とオノマトペは,いずれも身体動作をよりイメージしやすい形で伝えることができる点で共通するため,作業学習の道具や材料の扱い方や操作方法の理解に活用し授業改善を図ることができ,その習得に寄与したと考える。
参考文献
生田久美子(1987). 『「わざ」から知る』 東京大学出版会
高野美由紀 有働眞理子(2007)「重度重複障害児への教育的支援におけるオノマトペの貢献」 学校教育学研究 第19巻 pp27-37