日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-67)

2019年9月15日(日) 16:00 〜 18:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号16:00~17:00
偶数番号17:00~18:00

[PF28] 教育実習のエンゲージメントと教員志望度の関連

清水優菜 (慶應義塾大学)

キーワード:教育実習、エンゲージメント、教員志望度

問題と目的
 教育実習は,教員養成課程の学生にとって最大の学びの場であり,同時に職業選択の場となる。先行研究では,教育実習を経て教員志望度が高まることは示されてきたが,その規定要因は検討されていない。そこで,本研究では,教育実習後の教員志望度の規定要因として,教育実習前の教員志望度と教育実習のエンゲージメントに焦点を当て,その影響を明らかにする。
方  法
 対象者:首都圏の国立大学の教員養成課程に在籍し,2017年7月上旬までに小学校の教育実習を行った学生201名(男性95名,女性105名,性別不明1名)を対象とした。
 調査内容:①教育実習前の教員志望度(1項目),②教育実習のエンゲージメント(8項目),③教育実習後の教員志望度(1項目)を測定した。①と③は「あなたは教員志望ですか」と教示し,5件法(1.志望していない〜5.志望している)で回答を求めた。③はShimazu et al.(2008)の短縮版ワークエンゲージメント尺度をもとに作成し,6件法(1.全くそう感じなかった~6.とてもそう感じた)で回答を求めた。
 手続き:調査実施校の教育実習に関する委員会の承認を得た上で調査を実施した。①を2017年4月上旬の教育実習事前指導の際に,②および③を2017年7月中旬の教育実習事後指導の際に測定した。調査は集団自記式で行われた。
結果と考察
 まず,各変数の記述統計量および相関係数をTable 1に記す。教育実習のエンゲージメントについて,十分な信頼性が確認された(ω =.93)。
 次に,教育実習後の教員志望度に対して,教育実習前の教員志望度と教育実習のエンゲージメントが及ぼす影響を検討するために,重回帰分析(ベイズ推定法)を行った(Table 2)。その結果,教育実習後の教員志望度に対して,教育実習前の教員志望度および教育実習のエンゲージメントが正の効果を,交互作用項が負の効果を与えることが明らかとなった。したがって,教育実習後の教員志望度を高める上で,教育実習前の教員志望度および教育実習のエンゲージメントが重要な役割を果たすことが示唆される。
 さらに,交互作用項の効果の詳細を検討するために,単純傾斜分析を行った(Figure 1)。その結果,エンゲージメント低群(-1SD)およびエンゲージメント高群(+1SD)とも教育実習前の教員志望度が高いほど,教育実習後の教員志望度が高くなることが明らかとなった(B =0.40[0.24, 0.55]; B =0.82[0.65, 0.99])。すなわち,教育実習前から教員志望度が高い学生は,教育実習のエンゲージメントによらず,教育実習後も教員志望度が高いことが示された。一方,教育実習前に教員志望度が低い学生は,教育実習のエンゲージメントが高い場合,教育実習後の教員志望度が高くなることが示された。そのため,教育実習後の教員志望度を高める上で,とくに教育実習前に教員志望度が低い学生の教育実習のエンゲージメントを高めることが重要であろう。