日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-67)

2019年9月15日(日) 16:00 〜 18:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号16:00~17:00
偶数番号17:00~18:00

[PF39] 感謝感情と負債感情が向社会的行動の実行コストに及ぼす影響

向社会的行動の動機を介した日誌法による検討

吉野優香1, 相川充2 (1.筑波大学, 2.筑波大学)

キーワード:感謝感情、負債感情、向社会的行動の実行コスト

問題と目的
 被援助場面において,受益者は,感謝感情と負債感情を経験する(蔵永・樋口,2011;吉野・相川,2018)。感謝感情は,実行にコストがかかる向社会的行動を促進することが示されている(Bartlett&DeSteno,2006)。しかし,感謝感情と実行にコストのかからない向社会的行動との関連を検討していないため,感謝感情と向社会的行動の実行コストの程度の関連が明らかではない。また,感謝感情の影響だけを想定し,負債感情の影響が考慮されていない。
 そこで,本研究では,感謝感情と負債感情を経験した程度が,翌日の向社会的行動の実行コストに及ぼす影響を検討することを目的とする。この目的に加え,感謝感情,負債感情が向社会的行動に及ぼす影響過程として,制御焦点理論に基づく動機を仮定し,その影響過程も同時に検討する。
方  法
 調査対象者 関東圏の大学生に実施し,欠損データを除き,回答日数が15日中14日以上であった148名(男性38名,女性105名,平均年齢19.31歳±1.28)を分析対象者とした。
 質問紙構成と調査スケジュール 15日間のインターネット上での調査を行った。1日目は,特性尺度への回答を求め,2日目から15日目まで,被援助経験と向社会的行動の経験に関して尋ねた。
 1日目の特性尺度 特性感謝は,対人的感謝尺度(藤原他, 2014)7件法で測定した。特性負債感は,心理的負債尺度(相川・吉森, 1995)のうち,感謝,恩に関する項目および信頼性を落とす1項目を削除した15項目6件法で測定した。特性的な制御焦点の測定には,促進予防焦点尺度邦訳版(尾崎・唐沢, 2011)7件法で測定した。
 2日目以降の被援助経験に関する質問項目 「被援助経験の有無」は,該当日に手助けされたかどうかを,「1:あり」,「0:なし」で尋ねた。「被援助時の感謝感情と負債感情」は,感謝感情4項目,負債感情4項目の計8項目(吉野・相川,2018)を用い11件法で測定した。
 2日目以降の向社会的行動の経験に関する質問項目 「向社会的行動の有無」は,該当日に援助を行ったかどうかを,「1:あり」,「0:なし」で尋ねた。「向社会的行動の実行にかけたコスト」は,調査対象者が援助に対してコスト(金銭,時間,労力など)をどの程度費やしたと思うかについて,「0:まったくない」から「10:非常に多い」の11件法で尋ねた。「向社会的行動の動機」は,吉野・相川(2017)と同様に制御焦点理論に基づく動機8項目を7件法で尋ねた。
結果と考察
 特性尺度以外の変数は,すべて調査日ごとに作成し,複数の項目で測定した変数は,項目平均値とした。感謝感情と負債感情の経験が,翌日の向社会的行動とその動機に影響を及ぼすことを示す仮説モデルを作成した。仮説モデルは,日にちの変動に関わらず一定であると考え,モデル内で,日にちごとに対応するパス,共分散はすべて等値であると仮定した。データ数の不足から,2日目から3日目と,4日目から5日目のデータを用いたモデルを作成した(Figure 1)。CFI=.84,RMSEA=.52の適合度が得られた。
 感謝感情は,予防焦点動機を介し,翌日の向社会的行動の実行コストへ正の影響を及ぼしていた。負債感情は,促進焦点動機,予防焦点動機のどちらの動機も介さず,直接,翌日の向社会的行動の実行コストへ正の影響を及ぼしていた。