[PG09] 「学び」における人生目標の役割に関する研究
大学生版人生目標尺度作成の試み
キーワード:人生目標、尺度作成、大学生
問題と目的
人生目標(Purpose)は青少年の健全な成長に肝心な要素だと主張され(Bronk,Riches,& Mangan,2018),「Purpose」はオーストリアの精神科医Franklによって提唱された「Meaning」と区別され,近年,アメリカの心理学者によって再定義されている。Damon,Menon, & Bronk(2003)によれば,人生目標は「自分を超える世界に意義がある(Beyond the self,以下BTS)」と「実際に努力する」という側面で,「Meaning」とは区別できると主張され,また,たくさんの「Goal」を管理するところで,「Goal」と区別できると主張されている(McKnight & Kashdan, 2009)。人生目標については,幅広い範囲で研究が行われている。「学び」に関する研究では,人生目標が成績や自己効力感の向上に影響し,BTS目標を持っている学生のほうが学習課題に意義を感じ,セルフコントロールがより上手くできることが検証されている(eg., Yeager & Bundick, 2009)。しかし,人生目標が非常に重要な概念である一方,その測定方法は難しい(Bronk,2014)。Damon et al.(2003)の定義に沿って作られた尺度はアメリカの文化背景に基づいている。アジアの国では異なる文化背景があるため,既存の尺度をそのまま用いるのは難しいと考えられる。以上を踏まえ,本研究では,大学生を主な対象として,日本の青少年に適用できる人生目標尺度を作成することを目的とする。
方 法
調査対象者 18歳以上の日本人大学生125名。
調査時期 2018年12月中旬から下旬であった。
調査内容
(1)人生目標尺度: Revised Youth Purpose Survey(Bundick, Andrews, Jones, Mariano, Bronk, & Damon, 2006)と Claremont Purpose Scale(Bronk, Riches, & Mangan, 2018)を参考にし,「Seeking Purpose」「Finding Purpose」「Engage-
ment」「Beyond the self」という4因子構造を想定して,32項目を作成した。質問項目は7件法であった。
(2)PIL研究会(1993)によるPIL尺度のPart A: 20項目,7件法。
(3)成田・下仲・中里・河合・佐藤・長田(1995)による特性的自己効力感尺度:23項目,5件法。
(4)尾崎・後藤・小林・沓澤(2016)によるセルフコントロール尺度(BSCS−J):13項目,5件法。
(5)岡田・中谷(2006)による大学生用学習動機づけ尺度:34項目,5件法。「内発」「同一化」「取り入れ」「外的」の4因子からなる尺度。
結果と考察
分析1:探索的因子分析と確認的因子分析
人生目標尺度について探索的因子分析を行い(最尤法・プロマックス回転),「自己超越」因子(5項目 α=.92),「生涯展望」因子(5項目 α=.92),「生きがい獲得」因子(5項目 α=.89),「努力体験」因子(4項目 α=.90),「探索意欲」因子(4項目 α=.84)の5因子が抽出された。その項目例をTable 1に示す。
また,確認的因子分析を行ったところ,GFI=.819,AGFI=.770,RMSEA=.063,AIC=405.579 ,CFI= .951,TLI= .943,IFI = .952であった。よって,このモデルが良好だったと考えられる。
分析2:妥当性の検討
次に,妥当性の検討のため,人生目標尺度の下位尺度得点及びその総得点と,PIL尺度得点,特性的自己効力感尺度得点,セルフコントロール尺度得点,大学生用学習動機づけ尺度の下位尺度得点との相関関係を分析した。ピアソンの積率相関係数はTable 2に示す。
本研究では人生目標の4因子構造を想定して,日本人大学生を対象に人生目標尺度の作成を試みたが,「Seeking Purpose」「Finding Purpose」の2因子が今回のデータで「探索意欲」「生きがい獲得」と「生涯展望」に分かれ,5因子構造になった。今回の対象者に対して,現在有意義なことを探索し獲得することと,「一生」という長い時間的な概念で考える目標を探索し獲得すること,とは別の概念だと考えられる。
人生目標(Purpose)は青少年の健全な成長に肝心な要素だと主張され(Bronk,Riches,& Mangan,2018),「Purpose」はオーストリアの精神科医Franklによって提唱された「Meaning」と区別され,近年,アメリカの心理学者によって再定義されている。Damon,Menon, & Bronk(2003)によれば,人生目標は「自分を超える世界に意義がある(Beyond the self,以下BTS)」と「実際に努力する」という側面で,「Meaning」とは区別できると主張され,また,たくさんの「Goal」を管理するところで,「Goal」と区別できると主張されている(McKnight & Kashdan, 2009)。人生目標については,幅広い範囲で研究が行われている。「学び」に関する研究では,人生目標が成績や自己効力感の向上に影響し,BTS目標を持っている学生のほうが学習課題に意義を感じ,セルフコントロールがより上手くできることが検証されている(eg., Yeager & Bundick, 2009)。しかし,人生目標が非常に重要な概念である一方,その測定方法は難しい(Bronk,2014)。Damon et al.(2003)の定義に沿って作られた尺度はアメリカの文化背景に基づいている。アジアの国では異なる文化背景があるため,既存の尺度をそのまま用いるのは難しいと考えられる。以上を踏まえ,本研究では,大学生を主な対象として,日本の青少年に適用できる人生目標尺度を作成することを目的とする。
方 法
調査対象者 18歳以上の日本人大学生125名。
調査時期 2018年12月中旬から下旬であった。
調査内容
(1)人生目標尺度: Revised Youth Purpose Survey(Bundick, Andrews, Jones, Mariano, Bronk, & Damon, 2006)と Claremont Purpose Scale(Bronk, Riches, & Mangan, 2018)を参考にし,「Seeking Purpose」「Finding Purpose」「Engage-
ment」「Beyond the self」という4因子構造を想定して,32項目を作成した。質問項目は7件法であった。
(2)PIL研究会(1993)によるPIL尺度のPart A: 20項目,7件法。
(3)成田・下仲・中里・河合・佐藤・長田(1995)による特性的自己効力感尺度:23項目,5件法。
(4)尾崎・後藤・小林・沓澤(2016)によるセルフコントロール尺度(BSCS−J):13項目,5件法。
(5)岡田・中谷(2006)による大学生用学習動機づけ尺度:34項目,5件法。「内発」「同一化」「取り入れ」「外的」の4因子からなる尺度。
結果と考察
分析1:探索的因子分析と確認的因子分析
人生目標尺度について探索的因子分析を行い(最尤法・プロマックス回転),「自己超越」因子(5項目 α=.92),「生涯展望」因子(5項目 α=.92),「生きがい獲得」因子(5項目 α=.89),「努力体験」因子(4項目 α=.90),「探索意欲」因子(4項目 α=.84)の5因子が抽出された。その項目例をTable 1に示す。
また,確認的因子分析を行ったところ,GFI=.819,AGFI=.770,RMSEA=.063,AIC=405.579 ,CFI= .951,TLI= .943,IFI = .952であった。よって,このモデルが良好だったと考えられる。
分析2:妥当性の検討
次に,妥当性の検討のため,人生目標尺度の下位尺度得点及びその総得点と,PIL尺度得点,特性的自己効力感尺度得点,セルフコントロール尺度得点,大学生用学習動機づけ尺度の下位尺度得点との相関関係を分析した。ピアソンの積率相関係数はTable 2に示す。
本研究では人生目標の4因子構造を想定して,日本人大学生を対象に人生目標尺度の作成を試みたが,「Seeking Purpose」「Finding Purpose」の2因子が今回のデータで「探索意欲」「生きがい獲得」と「生涯展望」に分かれ,5因子構造になった。今回の対象者に対して,現在有意義なことを探索し獲得することと,「一生」という長い時間的な概念で考える目標を探索し獲得すること,とは別の概念だと考えられる。