[PG15] 協働学習に対する児童・生徒の認識と学級適応感および学習行動の関連
キーワード:協働学習、学級適応感、学習行動
問題と目的
近年,他者との協働はこれからの社会において必要不可欠であることが指摘され,ペアや小グループ,学級全体で他者と関わりながら学ぶ協働学習の有効性が明らかにされている(e.g. Enyedy & Stevens, 2014)。一方,他者と関わって学ぶことに対して苦手意識をもつ児童・生徒の存在 (e.g. 丸山, 2014; 杉本, 2017)や,協働学習に対する認識が学校への適応感にも影響を及ぼすことが指摘されている(石橋, 2014)。そこで,本研究では主として学校生活を過ごし,ともに学ぶ集団である学級への適応感に着目し,さらには協働学習における学習行動にも着目し,協働学習の認識と学級への適応感や学習行動との関連を探索的に検討することを目的とする。
方 法
協力者 A県内の公立小学校2校に在籍する3年生136名,4年生168名,5年生137名,6年生176名および公立中学校2校に在籍する1年生172名,2年生114名,3年生121名。
調査内容 ①「協同学習中の学習行動尺度」(中西ら, 2018) 18項目について5件法で尋ねた。②「協同作業認識尺度」(長濱ら, 2009)18項目について5件法で尋ねた。いずれも大学生向けに作成されていたため小・中学生用に文言を修正した。③「学級適応感尺度」(江村・大久保, 2012)15項目について4件法で尋ねた。④石橋ら(2014)を参考に,協働学習において「苦手なこと」「不安に感じること」を自由記述で尋ねた。
結 果
因子分析の結果 因子分析の結果,「協同学習中の学習行動尺度」については「価値づけ」(α=.84),「意見表明」(α=.80),「傾聴」(α=.81),「関連情報の探索」(α=.79),「支援」(α=.83),「授業外学習」(α=.75)の6因子が,「協同作業認識尺度」については「協同効用」(α=.85),「個人志向」(α=.70),「互恵懸念」(α=.57)の3因子が,「学級適応感尺度」については「居心地の良さ」(α=.94),「被信頼感・受容感」(α=.86) ,「充実感」(α=.87)の3因子がそれぞれ抽出された。
相関関係 各尺度間の相関係数をTable 1に示す。学習行動のいずれの下位尺度も「協同効用」や「居心地の良さ」「被信頼感・受容感」「充実感」と有意な正の相関を示していた。一方,「協同作業認識」のうち「個人志向」や「互恵懸念」は他の変数と有意な負の相関係数を示していた。
自由記述の分類 得られた自由記述をその内容によってコーディングを行なった結果,Table 2のように分類することができた。
考 察
相関関係から,協働学習に対して否定的な認識を持つ児童・生徒ほど学級での適応感が低いことが示された。また,自由記述の分析から,協働学習において児童・生徒が苦手・不安に感じることは多岐にわたっていることも示された。今後,協働学習に対して否定的な認識を持つ児童・生徒がどのような点を苦手・不安に感じているのかを検討し,必要な支援の在り方を検討していくことが必要である。
近年,他者との協働はこれからの社会において必要不可欠であることが指摘され,ペアや小グループ,学級全体で他者と関わりながら学ぶ協働学習の有効性が明らかにされている(e.g. Enyedy & Stevens, 2014)。一方,他者と関わって学ぶことに対して苦手意識をもつ児童・生徒の存在 (e.g. 丸山, 2014; 杉本, 2017)や,協働学習に対する認識が学校への適応感にも影響を及ぼすことが指摘されている(石橋, 2014)。そこで,本研究では主として学校生活を過ごし,ともに学ぶ集団である学級への適応感に着目し,さらには協働学習における学習行動にも着目し,協働学習の認識と学級への適応感や学習行動との関連を探索的に検討することを目的とする。
方 法
協力者 A県内の公立小学校2校に在籍する3年生136名,4年生168名,5年生137名,6年生176名および公立中学校2校に在籍する1年生172名,2年生114名,3年生121名。
調査内容 ①「協同学習中の学習行動尺度」(中西ら, 2018) 18項目について5件法で尋ねた。②「協同作業認識尺度」(長濱ら, 2009)18項目について5件法で尋ねた。いずれも大学生向けに作成されていたため小・中学生用に文言を修正した。③「学級適応感尺度」(江村・大久保, 2012)15項目について4件法で尋ねた。④石橋ら(2014)を参考に,協働学習において「苦手なこと」「不安に感じること」を自由記述で尋ねた。
結 果
因子分析の結果 因子分析の結果,「協同学習中の学習行動尺度」については「価値づけ」(α=.84),「意見表明」(α=.80),「傾聴」(α=.81),「関連情報の探索」(α=.79),「支援」(α=.83),「授業外学習」(α=.75)の6因子が,「協同作業認識尺度」については「協同効用」(α=.85),「個人志向」(α=.70),「互恵懸念」(α=.57)の3因子が,「学級適応感尺度」については「居心地の良さ」(α=.94),「被信頼感・受容感」(α=.86) ,「充実感」(α=.87)の3因子がそれぞれ抽出された。
相関関係 各尺度間の相関係数をTable 1に示す。学習行動のいずれの下位尺度も「協同効用」や「居心地の良さ」「被信頼感・受容感」「充実感」と有意な正の相関を示していた。一方,「協同作業認識」のうち「個人志向」や「互恵懸念」は他の変数と有意な負の相関係数を示していた。
自由記述の分類 得られた自由記述をその内容によってコーディングを行なった結果,Table 2のように分類することができた。
考 察
相関関係から,協働学習に対して否定的な認識を持つ児童・生徒ほど学級での適応感が低いことが示された。また,自由記述の分析から,協働学習において児童・生徒が苦手・不安に感じることは多岐にわたっていることも示された。今後,協働学習に対して否定的な認識を持つ児童・生徒がどのような点を苦手・不安に感じているのかを検討し,必要な支援の在り方を検討していくことが必要である。