日本地質学会第128年学術大会

講演情報

口頭発表

R24[レギュラー]鉱物資源と地球物質循環

[3ch212-19] R24[レギュラー]鉱物資源と地球物質循環

2021年9月6日(月) 13:00 〜 15:30 第2 (第2)

座長:中村 謙太郎、見邨 和英

13:30 〜 13:45

[R24-O-2] 有機物に富む堆積物試料の簡便かつ迅速なRe-Os同位体分析手法の開発

*矢野 萌生1,2、大田 隼一郎2,1、野崎 達生3,2,4,1、加藤 泰浩2,1,3 (1. 千葉工業大学、2. 東京大学、3. 海洋研究開発機構、4. 神戸大学)

キーワード:Re-Os同位体分析、黒色頁岩、MC-ICP-MS

海水中のレニウム (Re)・オスミウム (Os) は有機物と共に沈殿することから,有機物に富む堆積物 (黒色頁岩) は一般的にRe,Osに富むことが知られている [1-4].Re-Os放射壊変系 (187Re-187Os) を用いた堆積物の直接的な年代測定手法は,黒色頁岩そのものや含金属黒色頁岩,原油試料に用いられてきている [5-9].さらに,海水のOs同位体比組成は河川水フラックス,熱水フラックスおよび宇宙塵フラックスの3つのフラックスの相対的なバランスによって決定するため,これらのフラックスの相対的変化とそれを生み出す古環境変動に関する情報を得ることができる.この特性は様々な時代の黒色頁岩に適用され,火成活動と黒色頁岩形成との関係や,生物大量絶滅と隕石衝突イベントの関係性などが議論されている [10-13].
黒色頁岩のRe-Os同位体分析には,一般的に負イオン表面電離型質量分析装置 (N-TIMS) が用いられてきた.N-TIMSによる同位体分析には前処理と測定に多くの手間と時間を要し,大量のデータを取得することへの障害となっていた.また,有機物に富む試料の酸化分解には,高い酸化分解力をもつ硫酸酸性クロム酸溶液が用いられてきたが,この方法は環境負荷の高い六価クロムの処理が煩雑であった.これらの分析の煩雑さ,人体への危険性,環境負荷を解決できる可能性のある手法が,MC-ICP-MSと気化法を組み合わせた分析手法である [14-17].しかし,本手法はOsを十分に酸化させてArキャリアガスとともにOsO4分子の形で分析機器に導入させるため,有機物の多い試料に対しては十分な酸化力をもつ試薬を選択する必要がある.
そこで本研究では,SGR-1b (USGS, oil shale),JSl-1 (GSJ, slate) の2つの標準岩石試料を分析対象とし,酸化分解には逆王水,過塩素酸を加えた逆王水,硫酸酸性クロム酸溶液を用い,それぞれ酸の量を変えて分析を行った.測定はマルチコレクタ誘導結合プラズマ質量分析装置 (MC-ICP-MS) と気化法により行った.分析の結果,逆王水のみの場合は酸化力が不十分で測定可能なイオンビーム強度が得られないことがあったのに対し,過塩素酸を加えた逆王水と硫酸酸性クロム酸溶液では試料が十分に酸化され測定することができた.本発表ではこれらの結果の詳細を発表し,分析を行う上での最適な試料の前処理条件について議論する.

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