09:15 〜 09:30
[R1-O-5] ジルコンU-Pb年代による大崩山火山深成複合岩体形成活動史の制約
大崩山火山深成複合岩体は、大分県・宮崎県にまたがって分布するカルデラ火山群とそれに貫入する花崗岩体から構成されている。また本岩体は中期中新世に西南日本外帯で大規模かつ短期間に活動した酸性マグマ活動の一環として形成されたと考えられている。 大崩山火山深成複合岩体は、西南日本弧の付加体に対応するジュラ紀の三宝山帯・秩父帯と白亜紀の四万十帯、それらを覆う中新世の見立層群を基盤としている。また岩体北部の秩父帯には、蛇紋岩と花崗岩類・堆積岩類が混在している黒瀬川帯相当の岩相も含まれる。 大崩山火山深成複合岩体の形成活動史やマグマの地球化学的特徴については、Takahashi (1986)、高橋他(2014)などの詳細な地質調査と全岩化学組成分析によって、以下のように大きく4つの活動ステージに分類されている:
1.S-type的な地球化学的特徴を示す、前期コールドロン群の形成:祖母山流紋岩・デイサイト質火砕流堆積物(SDT)の噴出と祖母山コールドロンの形成→傾山無斑晶質流紋岩質溶岩(KRL)の噴出→傾山流紋岩・デイサイト質火砕流堆積物(KDT)の噴出と傾山コールドロンの形成 S-type的な貫入岩の活動:斜方輝石・黒雲母花崗閃緑岩(古期花崗岩類I, OKG3)
2.I-type的な地球化学的特徴を示す、祖母山安山岩・デイサイト質複成火山(SALT)の形成(コールドロンを埋積する形で噴出。厚い溶岩と火砕流堆積物からなる) I-type的な貫入岩の活動:石英モンゾニ閃緑岩・グラノフィア(古期花崗岩類II, OBG2)
3.I-type的な新規コールドロンの形成:国見岳流紋岩質火砕流堆積物(KRT)の噴出→大崩山コールドロンの形成 I-type的な貫入岩の活動:凝灰岩岩脈→珪長岩岩脈→花崗斑岩からなる環状岩脈
4.バソリス状I-type花崗岩(OKG1-2, FKG, HKG, OBG1など)の貫入・定置 本研究では大崩山火山深成複合岩体について、絶対年代に基づいて形成活動史を制約するために、火山岩類・深成岩類の系統的なジルコンU-Pb年代測定を行った。測定は国立科学博物館設置のレーザアブレーションICP質量分析計を用いて実施した。
その結果、大崩山火山深成複合岩体の火山活動
には二つの噴火ステージが存在することが明らかになった。
1. S-type的な火山活動(前期コールドロン群形成)に伴うSDT, KRL, KDTの活動:14.8 – 14.3 Ma
2. I-type的な火山活動(新期コールドロン形成)に伴うKRTの活動:13.9 Ma
また貫入岩・花崗岩類の活動についても、S-type的な特徴を示す古期花崗岩類I(OKG3)が、最も古い14.3 Maの年代を示し、それ以降のI-type的な岩体(グラノフィア, 環状岩脈, OKG1-2, FKG, HKG, OBG1)については火山岩類と同時期か更に若い、14.3 – 13.2 Maの年代が得られた。 バソリス状花崗岩(OKG1)について、Takahashi (1986)では地質学的観察に基づき、水平なルーフ境界をもつ岩体としている。また岩体上位は黒雲母花崗岩であるのに対し、より下位は角閃石黒雲母花崗閃緑岩から構成される、垂直方向累帯深成岩体であると解釈されいる。しかし本研究による年代測定によって、ルーフ近傍のバソリス上部花崗岩は14.3 – 14.1 Maの年代を示すのに対し、それより下位の部分は系統的に若い、13.9 – 13.2 Maの年代が得られた。これはバソリスが少なくとも2回のマグマ貫入によって形成された可能性が高いことを示している。
さらには岩体北部の基盤を構成する黒瀬川帯相当の変形花崗岩類からは、430 Ma前後の年代が得られ、これは紀伊半島・四国西部・九州中部の黒瀬川帯中の花崗岩類から報告されているジルコン年代(~440 Ma:Aoki et al., 2015)とよく一致しており、その延長が本地域にも分布していることが初めて確認された。
系統的なジルコンU-Pb年代測定によって、大崩山火山深成複合岩体の活動期間は約150 万年間に及ぶことが明らかになった。また外帯酸性マグマ活動においては、まずS-type的な活動が起こり、その後I-type的活動に漸移することが指摘されていたが(高橋他2014)、本研究によって、そのマグマ組成の変化は約40万年間という比較的短期間に起こった可能性が高いことが明らかになった。
Aoki, K. et al., 2015, JAES, 97, 125-135
Takahashi, M, 1986, JVGR, 29, 33-70
高橋正樹ほか, 2014, 日大文理学部紀要, 49, 173-195
1.S-type的な地球化学的特徴を示す、前期コールドロン群の形成:祖母山流紋岩・デイサイト質火砕流堆積物(SDT)の噴出と祖母山コールドロンの形成→傾山無斑晶質流紋岩質溶岩(KRL)の噴出→傾山流紋岩・デイサイト質火砕流堆積物(KDT)の噴出と傾山コールドロンの形成 S-type的な貫入岩の活動:斜方輝石・黒雲母花崗閃緑岩(古期花崗岩類I, OKG3)
2.I-type的な地球化学的特徴を示す、祖母山安山岩・デイサイト質複成火山(SALT)の形成(コールドロンを埋積する形で噴出。厚い溶岩と火砕流堆積物からなる) I-type的な貫入岩の活動:石英モンゾニ閃緑岩・グラノフィア(古期花崗岩類II, OBG2)
3.I-type的な新規コールドロンの形成:国見岳流紋岩質火砕流堆積物(KRT)の噴出→大崩山コールドロンの形成 I-type的な貫入岩の活動:凝灰岩岩脈→珪長岩岩脈→花崗斑岩からなる環状岩脈
4.バソリス状I-type花崗岩(OKG1-2, FKG, HKG, OBG1など)の貫入・定置 本研究では大崩山火山深成複合岩体について、絶対年代に基づいて形成活動史を制約するために、火山岩類・深成岩類の系統的なジルコンU-Pb年代測定を行った。測定は国立科学博物館設置のレーザアブレーションICP質量分析計を用いて実施した。
その結果、大崩山火山深成複合岩体の火山活動
には二つの噴火ステージが存在することが明らかになった。
1. S-type的な火山活動(前期コールドロン群形成)に伴うSDT, KRL, KDTの活動:14.8 – 14.3 Ma
2. I-type的な火山活動(新期コールドロン形成)に伴うKRTの活動:13.9 Ma
また貫入岩・花崗岩類の活動についても、S-type的な特徴を示す古期花崗岩類I(OKG3)が、最も古い14.3 Maの年代を示し、それ以降のI-type的な岩体(グラノフィア, 環状岩脈, OKG1-2, FKG, HKG, OBG1)については火山岩類と同時期か更に若い、14.3 – 13.2 Maの年代が得られた。 バソリス状花崗岩(OKG1)について、Takahashi (1986)では地質学的観察に基づき、水平なルーフ境界をもつ岩体としている。また岩体上位は黒雲母花崗岩であるのに対し、より下位は角閃石黒雲母花崗閃緑岩から構成される、垂直方向累帯深成岩体であると解釈されいる。しかし本研究による年代測定によって、ルーフ近傍のバソリス上部花崗岩は14.3 – 14.1 Maの年代を示すのに対し、それより下位の部分は系統的に若い、13.9 – 13.2 Maの年代が得られた。これはバソリスが少なくとも2回のマグマ貫入によって形成された可能性が高いことを示している。
さらには岩体北部の基盤を構成する黒瀬川帯相当の変形花崗岩類からは、430 Ma前後の年代が得られ、これは紀伊半島・四国西部・九州中部の黒瀬川帯中の花崗岩類から報告されているジルコン年代(~440 Ma:Aoki et al., 2015)とよく一致しており、その延長が本地域にも分布していることが初めて確認された。
系統的なジルコンU-Pb年代測定によって、大崩山火山深成複合岩体の活動期間は約150 万年間に及ぶことが明らかになった。また外帯酸性マグマ活動においては、まずS-type的な活動が起こり、その後I-type的活動に漸移することが指摘されていたが(高橋他2014)、本研究によって、そのマグマ組成の変化は約40万年間という比較的短期間に起こった可能性が高いことが明らかになった。
Aoki, K. et al., 2015, JAES, 97, 125-135
Takahashi, M, 1986, JVGR, 29, 33-70
高橋正樹ほか, 2014, 日大文理学部紀要, 49, 173-195