128th JGS: 2021

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R5 [Regular Session]Regional geology and stratigraphy, chronostratigraphy

[3poster24-33] R5 [Regular Session]Regional geology and stratigraphy, chronostratigraphy

Mon. Sep 6, 2021 4:00 PM - 6:30 PM poster (poster)

4:00 PM - 6:30 PM

[R5-P-18] (entry) Chemical weathering and source evolution of Lake Suwa sediments since the last glacial period, based on the chemical composition of the sediments.

*Ritsuho Kawano1, Nozomi Hatano2, Kohki Yoshida1 (1. Shinshu University Graduate School of Science and technology, 2. Nagano Environmental Conservation Research Institute)

Keywords:chemical composition analysis, chemical weathering, paleoenvironmental restoration

諏訪湖とその沿岸ではこれまで安間ほか(1990),大嶋ほか(1997)などによりボーリングコアが掘削されている.安間ほか(1990)では花粉化石群集,珪藻化石群集を用いて古環境の推定がなされた.これらの研究からは,化石群集による古植生や珪藻の生息環境の推定と,それに伴う気候の推定がなされてきた一方で,化学組成による古環境復元は検討されていない.堆積物の化学組成からは風化の強度や供給源の推定が可能性である.よって本研究では諏訪湖南岸でボーリングコアを掘削し,堆積物の化学分析の結果から風化と起源についての検討を行った. 本研究で用いるボーリングコア(ST2020)は長野県中央部に位置する諏訪湖の南岸にて掘削され,採取された深度30mのうち上部4.8mは人工物であった.掘削されたコアの岩相からは,堆積場は河川チャネル・氾濫原から湖底,再び河川チャネルと変化した.コアの年代については14C年代法から最下部で約22000年前と推定される.岩相変化から5つのunitが認識され,それぞれの堆積年代は14C年代法で得られた結果から,unit1(22627年前~13800年前),unit2(13800~11700年前),unit3(11700年前~10500年前),unit4(10500年前~6000年前),unit5(6000年前~現在)と推定される.コアから採取した110試料を用いて蛍光X線分析による化学組成分析,25試料を用いてX線回折分析による粘土鉱物の同定を行った. X線回折分析の結果,unit3以外ではX線回折線の強度は低く,非晶質の物質が卓越していた.このことからunit3を除く堆積物は集水域の表層の土壌に由来したと考えられ,ガラス質な火山岩片をより多く供給する現在の上川が主な供給源であると推測される.化学分析により堆積物の起源と風化についてそれぞれ検討した.それぞれ化学的風化の過程で流失しない元素であるAl/Ti比は供給源の変化の指標として考えることができる.また,風化の指標としては風化の過程で流失しにくいAlに対して,流失する元素としてCa,Na,Kを用いたCIA値(Nesbitt and Young, 1982)を指標とした.コアのAl/Ti比の大部分は一般的な玄武岩~安山岩に近い値を示したが,Unit4のみ玄武岩~花崗岩・流紋岩付近の値までばらついた値を示した.また,Unit4のCIA値はAl/Ti比と一致した変化を示すが,Unit4全体で他のUnitよりも高い傾向を示す.よってUnit4以外では供給源はおよそ一定であり,CIA値からみられるように風化の強度が変化していたと考えられ,Unit4では供給源の変動が多く,より珪長質な堆積物が流入し,強い風化を受けていると推測できる.A-CNK-FM図(Nesbitt and Young, 1982)においてもUnit4は他と異なるトレンドを示し,供給源が他と異なることを示している.さらに,Unit3はCIA値が高かったことに加え,X線回折分析において他の層準と比較してカオリナイトのX 線回折線の強度が高く,供給源がより珪長質な岩石であったことが推測される.上下の層準で類似したX線回折線が得られなかったことからも,この時期に一時的な気候変動や供給源変化が推測される.また、供給源の変動が激しく,強い風化を受けていたUnit4の時期について,中国のチャイダム盆地で推定された気温(Xiaoping et al., 2004)は同時期に比較的高い値を示しており,グローバルな気候変動と連動したものであると言える.

引用文献
安間 恵・長岡正利・丹羽俊二・関本勝久・吉川昌伸・藤根久, 1990, 諏訪湖湖底の構造調査と環境地質, 地質学論集, 36, 179-194. H. W. Nesbitt and G. M. Young, 1982, Early Proterozoic climates and plate motions inferred from major element chemistry of lutites, Nature, 299, 715-717. 大嶋秀明・徳永重元・下川浩一・水野清秀・山崎晴雄, 1997, 長野県諏訪湖湖底堆積物の花粉化石群集とその対比, 第四紀研究, 36(3), 165-182. Xiaoping Yanga, Karl Tilman Rostb, Frank Lehmkuhlc, Zhu Zhendad, John Dodson, The evolution of dry lands in northern China and in the Republic of Mongolia since the Last Glacial Maximum, Quaternary International, 118–119, 2004, 69-85.