09:30 〜 09:45
[T14-O-1] 箱根ジオパーク実践報告
~テーマの補強とガイド研修への活用~
キーワード:箱根ジオパーク、ジオパークのテーマ、北と南をつなぐ自然のみち、東と西をつなぐ歴史のみち
1.はじめに 箱根ジオパークは2020年の審査で再認定はされたものの、多くの指摘事項があった。その中でテーマ「北と南をつなぐ自然のみち 東と西をつなぐ歴史のみち」の「北と南をつなぐ自然のみち」の「みち」が、依然として分かりにくいままであるという指摘があった。箱根は天然の障壁であることは広く知られているが、障壁を「歴史のみち(街道)」と語呂合わせをして「みち」と表現している。すなわち、人にとっての障壁は自然豊かな場所であり、野生生物が行き来し、分布を広げることのできる「みち」になるというのが、この「自然のみち」の意味である。テーマは「カルデラ」など火山としてのイメージを前面に出してはどうかという意見も審査で出されたが、10年近く使用したテーマで地域にも馴染んでおり、学術部会の検討でも変更せずに使用する事とした。しかし、何らかの補強は必要である。ここでは、この指摘を受けて著者が取り組んでいるテーマ補強の取り組みと、ガイド研修への応用について報告する。具体的には、このテーマを箱根ジオパークの南と北へ拡大して当てはめ、周辺地域全体の特徴として捉え、拡大した地域から箱根ジオパークを俯瞰してテーマ理解を深める試みである。これは箱根の地形、地質を客観的につかむ事にもつながり、ガイド研修にも効果があると考えている。現在、箱根ジオパーク推進協議会員向けのメーリングリストで、「テーマ解説」としてテーマ補強に関する話題を週一回程度配信することから始めている。
2.テーマの補強 この自然豊かな「北と南をつなぐ自然のみち」は、南は地形的に伊豆半島から始まり、箱根火山、足柄山地、丹沢山地、関東山地と北へ連なる。関東山地の北には浅間火山があるが、その付近から山並みは北東方向の越後山脈へと続く。南北方向につなぐと越後山脈の西側あたりがこの「みち」の北端と言える。ここには富士箱根伊豆国立公園、秩父多摩甲斐国立公園、上信越高原国立公園と「自然のみち」の要素が連なる。これらの地域はいわゆるフォッサマグナ地域内にあり、関東山地以南は、植物区のフォッサマグナ区に含まれ、植生の共通性がある。これも「自然のみち」の要素である。このように拡大することで生物のつながりが強調できると考えた。ジオパークの分布をみると、ここには伊豆半島、箱根、秩父、下仁田、浅間北麓、苗場山麓、さらに伊豆大島も含めると7つのジオパークが南北に連なっている点も注目される。
3.ガイド研修への応用 箱根ジオパークでは、ガイド研修の主体は箱根火山の理解になる。教科書的に使用している日本地質学会国立公園リーフレット1は記載が細かく、詳細な形成史にガイドの興味、知識が偏りがちな傾向が見受けられ、細かい形成史が語れても、地層や岩石の基本的な理解に著者は不安を感じる事がある。そのためガイド研修を城ヶ島で行ったこともあった。そこで「北と南をつなぐ自然のみち」を利用して、隣の伊豆半島ジオパークとの地質の類似性、秩父、下仁田ジオパークの付加体、変成岩などの多様な地質、岩石、伊豆大島、浅間北麓、苗場山麓ジオパークとの火山地質の共通点、相違点など、周辺ジオパークの勉強を通して地質学的な総合力を養い、解説にふくらみをもたせることが目的である。一方「歴史のみち」は、江戸時代の東海道、奈良平安時代の足柄古道である。地域を俯瞰すると、上記のジオパークにも「東と西をつなぐ歴史のみち」が存在する。伊豆半島は東海道の続き、秩父に秩父往還、下仁田に下仁田街道、浅間北麓に大笹(信州)街道がある。「北と南をつなぐ自然のみち」は江戸時代には江戸の防衛線としての役割が加わり、「歴史のみち」との接点では関所(箱根では箱根関所)が設けられたが、秩父に栃本関所、下仁田に西牧関所、浅間北麓に大戸関所がつくられている。この「歴史のみち」の共通点の話題も「自然のみち」同様、メーリングリストの返信でガイド団体からの反響が寄せられており、研修意欲向上になっていると思われる。
4.おわりに テーマの分かりにくさの補強から、ガイド研修への発展について述べた。ガイド研修は自己ジオパーク内で完結することが一般であるが、近隣ジオパークとの比較から学ぶも事も当然多い。ここでは近隣ジオパークを、テーマの地域的俯瞰から結び付け、ガイド研修に役立てる可能性について言及したが、この試みはまだ始まったばかりである。取り組み具合を含め、今後どのような効果があるか検証していく。
「歴史のみち」、関所については箱根町立郷土資料館および箱根関所の学芸員に助言をしていただいた。
2.テーマの補強 この自然豊かな「北と南をつなぐ自然のみち」は、南は地形的に伊豆半島から始まり、箱根火山、足柄山地、丹沢山地、関東山地と北へ連なる。関東山地の北には浅間火山があるが、その付近から山並みは北東方向の越後山脈へと続く。南北方向につなぐと越後山脈の西側あたりがこの「みち」の北端と言える。ここには富士箱根伊豆国立公園、秩父多摩甲斐国立公園、上信越高原国立公園と「自然のみち」の要素が連なる。これらの地域はいわゆるフォッサマグナ地域内にあり、関東山地以南は、植物区のフォッサマグナ区に含まれ、植生の共通性がある。これも「自然のみち」の要素である。このように拡大することで生物のつながりが強調できると考えた。ジオパークの分布をみると、ここには伊豆半島、箱根、秩父、下仁田、浅間北麓、苗場山麓、さらに伊豆大島も含めると7つのジオパークが南北に連なっている点も注目される。
3.ガイド研修への応用 箱根ジオパークでは、ガイド研修の主体は箱根火山の理解になる。教科書的に使用している日本地質学会国立公園リーフレット1は記載が細かく、詳細な形成史にガイドの興味、知識が偏りがちな傾向が見受けられ、細かい形成史が語れても、地層や岩石の基本的な理解に著者は不安を感じる事がある。そのためガイド研修を城ヶ島で行ったこともあった。そこで「北と南をつなぐ自然のみち」を利用して、隣の伊豆半島ジオパークとの地質の類似性、秩父、下仁田ジオパークの付加体、変成岩などの多様な地質、岩石、伊豆大島、浅間北麓、苗場山麓ジオパークとの火山地質の共通点、相違点など、周辺ジオパークの勉強を通して地質学的な総合力を養い、解説にふくらみをもたせることが目的である。一方「歴史のみち」は、江戸時代の東海道、奈良平安時代の足柄古道である。地域を俯瞰すると、上記のジオパークにも「東と西をつなぐ歴史のみち」が存在する。伊豆半島は東海道の続き、秩父に秩父往還、下仁田に下仁田街道、浅間北麓に大笹(信州)街道がある。「北と南をつなぐ自然のみち」は江戸時代には江戸の防衛線としての役割が加わり、「歴史のみち」との接点では関所(箱根では箱根関所)が設けられたが、秩父に栃本関所、下仁田に西牧関所、浅間北麓に大戸関所がつくられている。この「歴史のみち」の共通点の話題も「自然のみち」同様、メーリングリストの返信でガイド団体からの反響が寄せられており、研修意欲向上になっていると思われる。
4.おわりに テーマの分かりにくさの補強から、ガイド研修への発展について述べた。ガイド研修は自己ジオパーク内で完結することが一般であるが、近隣ジオパークとの比較から学ぶも事も当然多い。ここでは近隣ジオパークを、テーマの地域的俯瞰から結び付け、ガイド研修に役立てる可能性について言及したが、この試みはまだ始まったばかりである。取り組み具合を含め、今後どのような効果があるか検証していく。
「歴史のみち」、関所については箱根町立郷土資料館および箱根関所の学芸員に助言をしていただいた。