日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T14.[トピック]大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク

[2oral101-10] T14.[トピック]大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク

2022年9月5日(月) 09:30 〜 12:00 口頭第1会場 (14号館501教室)

座長:天野 一男(東京大学空間情報科学研究センター)、松原 典孝(兵庫県立大学 大学院 地域資源マネジメント研究科)

09:45 〜 10:00

[T14-O-2] 箱根ジオパークによる国土地理院自然災害伝承碑への取組み及びその活用

*小笹 直人1、市川 燈1 (1. 箱根ジオパーク推進協議会)

キーワード:自然災害伝承碑、国土地理院、箱根ジオパーク

箱根ジオパークでは、過去に発生した自然災害を風化させず後世に語り継ぎ、今後の災害に備えるため、2021年4月から国土地理院が行っている自然災害伝承碑の公開に向けた取り組みを開始した。取り組み開始時の神奈川県内にある自然災害伝承碑公開数は、寒川町の5基、箱根ジオパークである南足柄市の1基のみであったが、同年9月1日に箱根町が10基(同日、秦野市も3基公開)の自然災害伝承碑を公開した後、県内でも取り組む市町が増え、公開数は増加した。箱根町が記者発表したことで新聞紙や地元テレビで紹介されたことにより広まったと考えられる。箱根ジオパークエリアでは、2021年12月21日に小田原市が6基、南足柄市が2基、2022年1月14日には真鶴町が2基の石碑を公開した。これにより箱根ジオパークエリアには合計21基の自然災害伝承碑が公開されている。県内の自然災害伝承碑公開数が49基(2022年6月23日時点)であることから、箱根ジオパークエリアの自然災害伝承碑が県内では多くを占めている。自然災害伝承碑から分かる箱根ジオパークエリアの災害は時代順に①洪水(1708年、1711年、1734年(宝永噴火によるもの))②洪水(1913年)③関東大震災(1923年)④北伊豆地震(1930年)⑤アイオン台風(1948年)⑥土砂災害(1953年(早雲山地すべり))である。また箱根ジオパークエリアのみで考えると、①は南足柄市、②は小田原市、④⑤⑥は箱根町のみ被害があったが、③は箱根ジオパークエリア全体で被害があったことが分かる。自然災害伝承碑があることで、一つの災害が広範囲に影響を及ぼしている災害か、あるいは地域特有の災害かを判別する指標として活用できる。その点において、複数市町で構成される箱根ジオパークが自然災害伝承碑に取り組んだことで、③の災害が市町毎の災害ではなく、箱根ジオパークエリア全体で、地震、津波、土砂災害といった様々な災害を引き起こしたことを整理することができた。公開に向けた情報収集では、箱根ジオパークエリアの各市町で把握している石碑関係の調査資料や国土地理院からの情報提供の他、地域住民にも身近にある石碑の情報提供を求めた。広報紙(箱根町・真鶴町・湯河原町)や、記者発表(箱根町)による新聞紙への掲載により情報収集を行った他、真鶴町では箱根ジオ真鶴町では箱根ジオパークガイドとして活動している真鶴観光ボランティアガイドが調査を行った。なお、2022年度は、南足柄市で活動している箱根ジオパークガイド南足柄ジオガイドの会が調査を行い、追加公開へ取り組む予定である。公開された自然災害伝承碑は、広報紙(箱根町・真鶴町・南足柄市)や箱根ジオパークホームページ等に掲載している。また、箱根町では総務防災課と協力し、「はこね防災ガイドブック」への掲載や防災出前講座での取組み紹介を箱根ジオパーク推進室がしており、自然災害伝承碑の取組み目的である地域住民による防災意識の向上に役立てている。箱根ジオパーク推進協議会では、県立高校図書館で行っている展示活動(小笹・笠間,2022 JpGU発表)の一環として自然災害伝承碑を紹介するパネルを作成した。本展示では、箱根ジオパークエリアの災害の他、相模湾を震源域として発生した関東大震災について、箱根ジオパークエリアと大磯町の被害から、これからの防災を考える内容となっている。なお、本展示では、国土地理院に協力を依頼し、パネルデータの提供を受けている。これらの取組みは、国土地理院ホームページの自然災害伝承碑活用事例として紹介されている。(https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/denshouhi_utilization.html)