日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T10.[トピック]鉱物資源研究の最前線

[2oral111-23] T10.[トピック]鉱物資源研究の最前線

2022年9月5日(月) 13:30 〜 17:15 口頭第1会場 (14号館501教室)

座長:町田 嗣樹(千葉工業大学・次世代海洋資源研究センター)、浅見 慶志朗(早稲田大学)

14:15 〜 14:30

[T10-O-3] Spectrum adapted ECM algorithmを用いたレーザー誘起ブレークダウン分光法における高効率スペクトルデータ解析

*松村 太郎次郎1、高橋 朋子2,4、永田 賢二3、安藤 康伸1、矢田 陽1、桑谷 立2 (1. 国立研究開発法人 産業技術総合研究所、2. 国立研究開発法人 海洋研究開発機構、3. 国立研究開発法人 物質・材料研究機構、4. 東京大学)

キーワード:高効率スペクトルデータ解析、Spectrum adapted ECM アルゴリズム、レーザー誘起ブレークダウン分光法

レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)は,海洋底探査における海中の岩石や堆積物のオンサイトで実行可能な元素分析手法として知られている[1, 2].しかし,水中でのLIBSによって得られたスペクトルデータの解析は,観測プラズマの寿命が短いことや激しいピークブロードニングなどにより複雑な形状のバックグラウンド成分の除去や多数のピーク成分の分離といった煩雑な作業が必要になる.このような作業は,一般に,手作業による試行錯誤を要し,短時間に多くのスペクトルデータを処理することは困難である.そのため,大量のスペクトルデータが現場で手に入ったとしても,解析作業が手に負えず,実際に取り扱えるデータの数が制限されてしまっていた.
 発表者らは煩雑なスペクトルデータ解析作業の効率化を目指して,機械学習で利用されるEMアルゴリズムを応用したスペクトルデータ解析手法の開発に取り組んできた[3, 4].最近では,拡張手法として,柔軟にフィッティングモデルを扱えるspectrum adapted ECM algorithmを提案している[4].この手法はスペクトルデータの測定エネルギーステップに対応した強度をデータの重みとして取り扱うことによって,スペクトルデータの一次元への変換を行うことなく,計算挙動の安定化と高速化を実現している.
 本発表では,Spectrum adapted ECM algorithm のさらなる拡張として,ノンパラメトリックなバックグラウンド処理手法であるBaseline estimation and denoising using sparsity[5]とSpectrum adapted ECM algorithm[4]を組み合わせたスペクトルデータ解析手法を提案する.この手法によってバックグラウンド処理と効率的なピークフィッティングを同時に実行可能とした.本発表では,この手法の概要とレーザー誘起ブレークダウン分光法におけるスペクトルデータ解析への適用例を紹介する.

引用文献
[1] Thornton, B., Takahashi, T., Sato, T., Sakka, T., Tamura, A., Matsumoto, A., Nozaki, T., Ohki, T. & Ohki, K. (2015). Development of a deep-sea laser-induced breakdown spectrometer for in situ multi-element chemical analysis. Deep Sea Research Part I: Oceanographic Research Papers, 95, 20-36.

[2] Takahashi, T., Yoshino, S., Takaya, Y., Nozaki, T., Ohki, K., Ohki, T., Sakka, T. & Thornton, B. (2020). Quantitative in situ mapping of elements in deep-sea hydrothermal vents using laser-induced breakdown spectroscopy and multivariate analysis. Deep Sea Research Part I: Oceanographic Research Papers, 158, 103232.

[3] Matsumura, T., Nagamura, N., Akaho, S., Nagata, K., & Ando, Y. (2019). Spectrum adapted expectation-maximization algorithm for high-throughput peak shift analysis. Science and Technology of Advanced Materials, 20(1), 733-745.

[4] Matsumura, T., Nagamura, N., Akaho, S., Nagata, K., & Ando, Y. (2021). Spectrum adapted expectation-conditional maximization algorithm for extending high–throughput peak separation method in XPS analysis. Science and Technology of Advanced Materials: Methods, 1(1), 45-55.

[5] Ning, X., Selesnick, I. W., & Duval, L. (2014). Chromatogram baseline estimation and denoising using sparsity (BEADS). Chemometrics and Intelligent Laboratory Systems, 139, 156-167.