日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッションポスター発表

G1-5.ジェネラル サブセッション地域地質・層序・年代

[7poster31-36] G1-5.ジェネラル サブセッション地域地質・層序・年代

2022年9月10日(土) 09:00 〜 12:30 ポスター会場 (ポスター会場)


フラッシュトーク有り 9:00-10:00頃 ポスターコアタイム 10:30-12:30

[G5-P-3] 兵庫県北西端,浜坂地域の新第三系層序の改定:中新統七釜層,鮮新統千谷火山噴出物および鐘尾火砕流堆積物の提案

*羽地 俊樹1、工藤 崇1、佐藤 大介1、仁木 創太2、平田 岳史2 (1. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター、2. 東京大学大学院理学系研究科)

(注)【みなし発表】著者都合により「みなし発表」となります.要旨は公開されますが,コアタイムでの本人の説明はありません.e-posterもありません.



キーワード:中新世、鮮新世、北但層群、西南日本、ジルコンU-Pb年代



山陰東部の但馬地域でよく参照される地質図と層序は,1960年代中頃に公表されたものである(池辺ほか,1965; 弘原海ほか,1966).この地質図は東西約80 kmに及ぶ広域を調査対象として約25万分の1の縮尺で描かれたもので,あくまでも層序の概要を示したものに過ぎなかった.ゆえに,その解像度は堆積盆発達史の制約条件として十分とは言い難い.しかしながら,後続の地域地質的な研究例はほとんどなく,精査が必要な状況であった.
 そこで発表者は但馬地域の堆積盆発達史の解明を目指し,層序と地質構造の調査を進めている.本発表では兵庫県の北西端に位置する浜坂地域の新第三系(中新統・鮮新統)について,暫定版の地質図面を基に層序の改定案を提示する.
中新統北但層群
  中新統は北但層群と呼ばれる京都府北部から兵庫県北部にかけて広く分布する地質体からなる.浜坂地域に分布する北但層群は,下位から順に八鹿層・豊岡層・七釜層(新称)に分けられる.
  八鹿層は陸上噴出の安山岩の溶岩および同質火山砕屑岩を主体とする地層である.本研究で,安山岩溶岩に挟在する珪長質火山岩および火山砕屑岩から19.5 Ma頃のジルコンU‒Pb年代を得た.
  豊岡層は八鹿層を不整合に覆う地層である.岩相は植物片を多産する氾濫原の細粒砕屑岩とチャネル状の河川成礫岩の互層であり,沖積平野の堆積物からなる地層と判断される.従来の研究では本地域の豊岡層は上記の砕屑岩だけでなく,それを覆う珪長質火山岩類も含めた地層とされていた(例えば,池辺ほか,1965).しかし本研究では珪長質火山岩類を豊岡層から独立させ,七釜層という新しい地層名を与える.
  七釜層は海成泥岩の偽礫を多量に含む珪長質な火山礫岩および凝灰角礫岩からなる.七釜層は七釜集落を中心として北西–南東方向に約8 km,北東–南西方向に約4 kmの幅を持つ楕円形の盆地の内部を埋積した地層であり,八鹿層・豊岡層に高角度にアバットしている.以上のように,本火山岩類と豊岡層の砕屑岩は岩相が明確に異なり,また両者には構造差が存在する.したがって,本火山岩類は独立した地層として定義すべきと判断した.本層の凝灰角礫岩から17.7 MaのジルコンU‒Pb年代の報告がある(松原ほか,2021).
鮮新統千谷火山噴出物および鐘尾火砕流堆積物
 鮮新統は千谷火山噴出物と鐘尾火砕流堆積物(いずれも新称)からなる.浜坂地域の西部の尾根上には玄武岩溶岩を主体とする火山岩類が存在する.この火山岩類は従来,浜坂火山(Furuyama et al., 1993)と呼称されていた.しかし,浜坂の地名は別の地層名で利用されていることや,推定される噴出源が浜坂集落から離れていることなどから,本研究ではこれを模式的な岩相が分布する千谷の地名を利用して千谷火山噴出物と再定義する.千谷集落の西方で溶岩と同質のスコリア丘堆積物や火道岩脈が見いだされ,千谷火山噴出物は単成火山(千谷火山と命名)起源の地層であることが明らかになった.
  鐘尾火砕流堆積物は,鐘尾集落西方の山地の2地点で今回新たに発見された厚さ約10 mの珪長質な火山礫凝灰岩を主体とする火砕流堆積物である.本火砕流堆積物は,千谷層の玄武岩溶岩に挟まれる.2地点の軽石火山礫凝灰岩試料から,共に3.65 MaのジルコンU‒Pb年代を得た.
分布と地質構造
 本研究で地層の分布が大幅に修正された.例えば,池辺ほか(1965)では三成山西方では基盤の花崗岩を鮮新統玄武岩(本報告の千谷火山噴出物)が直接覆うとされていたが,両者の間には広く中新統が分布することが分かった.また,上述のように豊岡層の砕屑岩類と七釜層の火山岩類の分布,層序および構造関係が明らかになった.
  本地域の中新統は各層が下位の地層とアバット不整合の関係にあることが明らかになった.従来の地質図では基盤と八鹿層境界に断層が想定されていたが,それは認定されなかった(羽地,本大会口頭発表).浜坂地域の中新統の各層は,比高100 mを超える地形的起伏を埋積して堆積したものと考えられる.

<引用文献>
Furuyama et al., 1993, Earth Sci., 47, 519‒532; 池辺ほか,1965,日本地質学会第72年大会見学案内書; 松原ほか,2021, 日本地質学会第128年学術大会講演要旨, R7-P-2; 弘原海ほか, 1966,松下進教授記念論文集,105‒116.