日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッションポスター発表

T2.[トピック]新生界地質から読み解く西南日本弧の成立—付加体形成から背弧拡大まで

[8poster14-20] T2.[トピック]新生界地質から読み解く西南日本弧の成立—付加体形成から背弧拡大まで

2022年9月11日(日) 09:00 〜 13:00 ポスター会場 (ポスター会場)


フラッシュトーク有り 9:00-10:00頃/ポスターコアタイム 11:00-13:00

[T2-P-7] 精密地球物理探査による北部沖縄トラフの地質構造

*高下 裕章1、佐藤 太一1、石野 沙季1、三澤 文慶1、有元 純1、鈴木 克明1、石塚 治1、横山 由香2、佐藤 悠介3,2、永井 あすか2、古山 精史朗4、梶原 勘吉2、田村 千織5、小松 亮介6、井上 卓彦1 (1. 産業技術総合研究所、2. 東海大学、3. 株式会社マリン・ワーク・ジャパン、4. 東京海洋大学、5. 東京大学、6. MOLマリン&エンジニアリング株式会社)


キーワード:沖縄トラフ、海底地形、磁気異常、背弧

大陸縁辺の沈み込み帯で初期背弧拡大が活動的な場所は,地球上に沖縄トラフと南極半島・ブランスフィールド海峡のみである.両海域は沈み込み帯縁辺での背弧拡大が始まるメカニズムを理解するための重要な研究対象地域であるため,現在も活発な研究や議論が行われている.沖縄トラフは後期中新世から現在に至るまでリフティングが継続する活動的な背弧海盆として知られ,地形的な凹地であるトカラギャップ及び慶良間海裂により北部・中部・南部の3つに区分される.この3区画ではリフティングの進行過程が異なることが明らかになっており,同じ海域内でリフト形成過程の時間変化を調査することができる特徴を持つ. 産業技術総合研究所では,地質情報整備の一環である海洋地質図の作成を目的として,2021年よりトカラ列島周辺の海底地質調査を実施しており(神鷹丸GS21, GS22; 望星丸GB21-1, 2, 3, GB22-1),本研究ではそれらのデータに加え,白鳳丸KH-22-2のデータも加えて,沖縄トラフ内でも最も若いリフティング域として知られる北部海域のトカラ列島周辺海域で最も高密度な地球物理学データ(地形・磁気)を観測し,コンパイルを行った.また,コンパイルした地形データを基にブーゲー重力異常の計算を行った. これらの地球物理学的データの集積により,沖縄トラフ北部内では活発な断層・火成活動が認められた.まず,調査海域内に2系統のリニアメント(N24°E及びN73°E方向)が混在することが明らかになった.これらのうちN73°Eのリニアメントで構成される海丘群を横当雁行海丘群と名付け,その地形学的記載を行った.横当雁行海丘群は磁気異常の特徴から火山性の構造が示唆され,かつ周囲に存在するグラーベンも同様のリニアメントを示す.このことから,横当雁行海丘群および周辺海域の一部ではN73°Eのリニアメントを形成するようなローカルな伸長場が存在し,この伸長速度と地下からのメルト供給のバランスで海丘群が形成されたと考えられる.本海域は沖縄トラフの拡大・トカラギャップの形成という2つのテクトニクスの影響を強く受けた海域であり,今後の課題として横当雁行海丘群や周辺の海底火山群の地形探査を進め、さらにそれらの形成年代を海底岩石調査などで調べて相互に比較することが背弧リフト形成史の理解につながると考えられる.