日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T14[トピック]原子力と地質科学

[1oral301-11] T14[トピック]原子力と地質科学

2023年9月17日(日) 09:00 〜 12:15 口頭第3会場 (4共30:吉田南4号館)

座長:竹内 真司(日本大学)、吉田 英一(名古屋大学)、梅田 浩司(弘前大学)

11:00 〜 11:15

[T14-O-7] 炭酸塩コンクリーションの水理・力学特性

*竹内 真司1、中村 祥子3、後藤 慧4、竹村 貴人1、吉田 英一2 (1. 日本大学、2. 名古屋大学、3. 日本ダイヤバルブ株式会社、4. 中央開発株式会社)

キーワード:炭酸塩コンクリーション、水理特性、力学特性、シーリング実証試験

【はじめに】
 炭酸塩コンクリーションは、海底堆積物中に埋没した生物遺骸から拡散した有機酸と海水中のカルシウムイオンとの過飽和・沈殿反応により、メートルサイズでも数年程度という地質学的に極めて短期間で形成され、形成後も、数万年~数千万年の長期間に渡って安定的に存在することが明らかとなっている。現在この特性を応用し、地下岩盤の長期的亀裂シーリング剤の開発及び原位置での実証試験が進められている。本報告では、コンクリーション化(CaCO3)による砕屑物セメンテーションの水理・力学特性について、その工学的な特性を評価するために実施した試験結果のほか、将来的に計画しているコンクリーション化剤による完新世未固結層のシーリング実証試験内容について報告する。
【実施内容・結果・考察】
 コンクリーションの水理・力学特性に関しては、瑞浪層群中のコンクリーション群のほか、三浦層群、瀬戸川層群など、計100試料以上の試料について、空隙率測定、エコーチップによる硬度試験、室内透水試験を実施した。室内透水試験の結果から、コンクリーションの透水係数は1.0×10-10m/sから1.0×10-12m/sと、周辺母岩と比べ3オーダー以上低いことが明らかとなった。これは、コンクリーション内部で、反応によって生じたカルサイトが砕屑粒子間の空隙をセメンテーションし、空隙率が低下することと矛盾しない。瑞浪層群中のコンクリーションにおいては、コンクリーションの空隙率は、周辺母岩の1/10以下であることが確認されている。またエコーチップ硬さ試験機による硬度測定からは、周辺母岩に比べてコンクリーション部分の硬度が非常に高いことが示された。これらの透水性や硬度は花崗岩と同等の数値を示すものも存在する。以上のことは、コンクリーション形成時に生じる炭酸カルシウムによる急速なシーリング化作用が、未固結砕屑物を短期間に花崗岩並の透水性や硬度に変化させ、また一旦コンクリーション化した後は、長期にわたって安定であることを示している。 このようなシーリング効果を実際の未固結層で再現できるかを確認するため、日本大学キャンパス内に設置されているボーリング孔を用いて、開発したコンクリーション化剤によるシーリング実証試験を現在、計画中である。今後、これらの実験結果についても本学会等で紹介していく予定である。