130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

Presentation information

Session Oral

T14[Topic Session]Nuclear Energy and Geological Sciences

[1oral301-11] T14[Topic Session]Nuclear Energy and Geological Sciences

Sun. Sep 17, 2023 9:00 AM - 12:15 PM oral room 3 (4-30, Yoshida-South Campus Bldg. No 4)

Chiar:Shinji Takeuchi, Hidekazu Yoshida, Koji Umeda(Hirosaki University)

11:15 AM - 11:30 AM

[T14-O-8] Data Collection and Predictive Analysis of River Denudation

*Makoto KAWAMURA1, Hua JIA2, Yukiko KOIZUMI2, Nariaki NISHIYAMA1, Koji UMEDA3 (1. Japan Atomic Energy Agency, 2. Mitsubishi Materials Techno Corp., 3. Hirosaki Univ.)

Keywords:Geological Disposal, Uplift and Denudation, River Denudation, GIS, Performance Assessment Model, Topographic Change Simulation

【背景・目的】
 高レベル放射性廃棄物の地層処分事業や安全規制において、地層処分のサイト選定や安全評価における重要な隆起・侵食に関する調査・評価技術における課題の一つとして、河川下刻が遠い将来における地表の地形や地下の地質環境に与える変化やその影響について、定量的評価を可能にする必要がある。地形形成には侵食が大きく作用しており、特に河川は下刻作用による谷の形成のみならず、扇状地の形成や河口付近における堆積作用による平野の形成などにも大きく寄与している。河川下刻による地表地形の変化は、地下水流動に変化を及ぼすほか処分場が地表近傍に接近した際の処分場の削剥についても影響が及ぶ。地形の変化を取り入れた性能評価モデルとしては、過去にはMiyahara et al. (2011)、近年においては山口ほか(2020)による検討がなされている。
 このような検討には、最低限、両河岸の尾根間の距離、河川幅、下刻深さ、河岸法面の傾斜角など、河川の横断面形状の情報が必要になるが、研究対象となることが多い河川縦断形に比べ参考になる情報が少ない。そこで本検討では我が国における主要な河川を対象に国土地理院の10m DEMを用いたGISによる地形解析により、河川を中心とした横断面形状を河口から上流にかけて多数取得した。
【実施内容】
 予察的な検討として河川の条件は以下のとおりとした。
・地質が比較的一様で海岸から山地までの距離が比較的短い地域
・隆起・侵食速度データなどがある程度推定、把握されている山地を流れている河川
・上記隆起・侵食速度のバリエーションを考慮し複数の河川を選択
 上記条件を満たす河川として一級河川から、安倍川(幹川流路延長51km)、大井川(同168km)及び熊野川(同183km)の3河川を選定した。 各河川データについては、ArcGISのリニアリファレンスツールを用い、河口を起点とし、距離3km毎に河川の流路に直交する片側2kmの河川横断線を作成した。河川横断線の位置情報については、横断線中央の緯度、経度、標高および方位を抽出した。標高データは対象範囲の10m DEMデータとし、方位は真北から時計回りの角度をArcGISで算出した。河川横断線の地質情報については、対象地域の20万分の1日本シームレス地質図と重ね合わせて、地質境界部の地質情報を抽出した。
【結果】
 安倍川19本、大井川63本、熊野川52本の河川横断線を抽出した。3河川の横断面線を同一表示させると、上流ほど河床が上昇し起伏が大きくなる様子が見てとれる。横断面形状を比較すると3河川とも似た傾向を示すことがわかり、中~上流部の河川両岸の起伏のピークは河川中央からおおよそ500~1500mに位置し、河床とピークの比高はおおよそ200~600mになる傾向がある。また、シームレス地質図の情報であるが、下流から中流域にかけて段丘堆積物が分布しているエリアを特定することができ、河川を中心とした両岸の地形変化を視覚的に捉えることができた。
 予察的な解析として、河床と両岸の比高がある程度形成されてからの平均的な横断面線を作成した結果、3河川とも平坦な面から両岸約1000mより河川に向かって傾斜し、河川の深さは300~400m程度となった。また、河川両岸のピークと河床の標高差は上流程大きくなる、すなわち、上流ほど河床までの谷の深さが増す傾向がみられた。河床標高から作成した河川縦断の河床勾配を取ると、地質や地質構造にかかわらず3河川ともある程度の上流域から勾配トレンドが上昇する変曲点がみられた。
 河口付近の比較的平坦な地形から上流にさかのぼった河床高度の上昇や起伏の増加の傾向は疑似的ではあるものの、平坦な低地から隆起・侵食による地形形成の時間的な過程を示唆するものと考えられ、このことは、地形変化シミュレーションなど将来予測や地形変化を取り入れた性能評価モデルの妥当性の検証等に寄与する情報になる。
 今後は一級河川の事例の拡充のみならず二級河川など河川規模を変えた情報収集も検討予定である。また、今後は地形判読等に基づいた段丘や地すべり、その他河川流域に関する地形特徴量も含めた横断線のデータ収集を検討予定である。
【参考文献】
Miyahara et al., (2011): Journal of NUCLEAR SCIENCE and TECHNOLOGY, Vol. 48, pp. 1069-1076.
山口ほか(2020): 原子力バックエンド研究, Vol. 27, pp.72-82.
【謝辞】
 本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和4年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」の成果の一部である。