130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T8[Topic Session]Stress Inverse Analysis on Field Data

[1oral501-09] T8[Topic Session]Stress Inverse Analysis on Field Data

Sun. Sep 17, 2023 9:00 AM - 12:15 PM oral room 5 (27-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Noriaki Abe, Kiyokazu Oohashi, Makoto Otsubo

10:45 AM - 11:00 AM

[T8-O-6] Classification and genetic assessment viewed from paleostress and property of faults

*Kenta KOBAYASHI1, Takuya ISHII1, Yinhan MA1, Hiroki HAYASHI2, Marika HAYASHI2 (1. Department of Geology, Faculty of Science, Niigata University, 2. Regulatory Standard and Research Department, Secretariat of Nuclear Regulation Authority)

Keywords:mesoscale fault, multiple inverse method, paleostress, Niitsu Hill, Niigata Prefecture

応力逆解析は多数の小断層について姿勢とセンス(以下,スリップデータ)を測定し,応力を求める手法である.その結果を,より広域で認識されている応力変遷と比較することにより,変形ステージ区分がなされてきた.しかしながら,それが時間・空間的にどの範囲で一定なのか,必ずしも明確ではない.そこで,中新世〜更新世の堆積岩・火山岩類が分布し,東西ないし北西-南東圧縮が進行する,新潟県新津丘陵に形成された小断層を対象に,性状の記載と応力逆解析を行った.なお,本研究は新潟大学と原子力規制庁の共同研究「断層の成因評価に関する基礎的研究」の一部として実施した.

金津地域に分布する上部中新統〜鮮新統金津層について,9露頭を調査した.100条以上の断層を記載し,約80セットのスリップデータを得た.主に砂岩泥岩からなる地層は北方に中角度で傾斜する.断層は北または南傾斜であり,累重する地層を切断しながら連続,数cm-10数cm程度の傾斜隔離を与える.ほとんどは断層ガウジを伴わない.また,連続性は悪いが群集し,個々の隔離は小さいものの,表面に条線が観察され断層と判断されるもの(以下,“割れ目”)が識別された.さらに,断層ガウジを伴う複数の断層が並走し,変位量が数mを示すものがある.下盤の地層が連続的あるいは分断されつつ引きずられ,断層スミアを形成する.矢代田地域に分布する更新統矢代田層については,約20セットのスリップデータを得た.主に未固結の砂からなる下部層と,礫・シルトからなる上部層に分けられる.ともにほぼ水平ないし北西に緩傾斜する.断層は下部層では北西,上部層では北東あるいは南西に傾斜するものが多い.
取得したスリップデータについて,当地域の先行研究である冨田・山路(2001)と同じ条件で多重逆解法を用いて応力解析を行った.金津層からの結果として,σ1は共通して鉛直,σ3は1)基円上に分布(一軸短縮),2)北北西-南南東,3)北東-南西を各々示し,3つのクラスターが識別された.“割れ目”ではクラスター3,それを除いた断層ではクラスター2が卓越する.一方,大変位を示す断層では,σ3が東北東-西南西を向く(一軸伸長).矢代田層下部の結果は異質であり,σ1が低角度で北東-南西を向く応力(一軸短縮)が,最も多くのデータを説明する.矢代田層上部のデータは少ないが,σ1は鉛直,σ3は北北東-南南西を向く結果となった.
断層の表面(鏡肌)を実体顕微鏡および卓上型SEMで,断層ガウジ帯を挟在する試料をX線CTを用いて,それぞれ観察した.“割れ目”上には不連続なくぼみ状の条線が形成され,直線的な溝は認められない点で,一般的な条線とは異なる.X線CT画像では,微細な剪断面やガウジ帯が明瞭に識別できることを確認した.

金津層から認識した応力(クラスター)1・2・3は,冨田・山路(2001)の応力A・B・Cに,各々対比される.応力AはBに付随して現れた見かけ上のものとされたため,応力1も同様と考える.彼らは各応力が卓越する断層の性状を示していないが,今回それがなされたことになる.応力Cは矢代田層からも認識されることからその堆積後,認識されない応力Bは堆積前との考察にはほぼ同意する.彼らが図示したデータ採取地点は矢代田層の下部層(〜0.61Ma:村松,2007)であるが,我々が応力3を得たのは,同上部層であり,応力3はより新期まで継続した可能性がある.同時に,“割れ目”はそれ以外の断層に切断される場合もあり,応力2と3は共存した期間があると考えられる.なお,我々が同下部層から得た応力の意義については,現時点で合理的な解釈に至っていない.いずれにせよ,現在の広域応力場とは異なる応力を被った断層,あるいは別の成因による断層等が,最近まで形成されていた可能性が高い.

文献:
冨田 智・山路 敦,2001,共役断層による小断層解析はすべて誤りか? 新潟県新津丘陵における多重逆解法と共役断層法との比較.地質雑,107,711-721.
村松敏雄,2007,新潟市新津丘陵に分布する凝灰岩及び火山岩のフィッション・トラック年代.フィッション・トラックニュースレター,第20号,44−47.