130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T3[Topic Session]Geopark to enjoy and learn about the earth and human activities

[1oral701-07] T3[Topic Session]Geopark to enjoy and learn about the earth and human activities

Sun. Sep 17, 2023 10:00 AM - 12:15 PM oral-07 (38-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Yukiko Yamazaki(JGN), Suzuka Kooriyama, Yuki Fujiwara

11:45 AM - 12:00 PM

[T3-O-7] A new geostory of the Kinkowan area, Sakurajima-Kinkowan Geopark

*Yoshihiro MORINO1, Koji TAKAGI1, Ayane TANI 1, Maho KATANO1, Masamitsu SHIGAKI2, Hiroshi YAMAGUCHI2 (1. Pacific Consultants Co.,Ltd., 2. Sakurajima-Kinkowan Geopark Promotion Council)

Keywords:Sakurajima-Kinkowan Geopark, geostory, Aira Caldera

1.はじめに
 桜島・錦江湾ジオパークは、エリア拡大により姶良カルデラのほぼ全体が含まれ、ジオパークのテーマである「火山と人と自然のつながり」が深められるようになり、さらに付加体や貫入岩体を加えた地質多様性を考慮すると、火山だけでなくより大きく、多様なストーリーを語ることが可能となる。大地の形成過程を中心としたジオストーリーについて紹介する。
2.地質概要
 ジオパークエリアの地質はその形成過程から大きく分けて5つの地質時代から構成される。それらを地質時代の古い方から順に、白亜紀四万十累層群(付加体)、新第三紀高隈山花崗岩(貫入岩体)、新第三紀~第四紀北薩火山岩類、堆積岩類ほか、約30000年前の入戸火砕流堆積物(シラス、溶結凝灰岩)、26000年前から現在に至る桜島火山活動である。代表的な地質とそれに関連する主なジオサイトを表1に示す。
3.地域の成り立ち(地質形成過程のジオストーリー)とジオサイト(◆設定、◇未設定)
1)姶良カルデラ形成以前
①白亜紀の四万十累層群が付加・上昇する
   ◆四万十累層群を代表する露頭(錫山、太崎観音崎など;砂岩、泥岩、礫岩など)
②新第三紀中新世頃四万十累層群中に高隅山花崗岩が貫入する
   ◆高隈山花崗岩の代表する露頭(猿ヶ城渓谷など)
   ◇花崗岩縁辺部の接触変成作用(高隈山;花崗岩、ホルンフェルス)
③四万十累層群の上に重なる新第三紀~第四紀にかけての火山岩類や堆積岩類
   ◆各時代の火砕流堆積物を代表する露頭(慈眼寺公園など;加久藤、阿多火砕流堆積物など)
   ◆堆積岩類(城山層、国分層群や花倉層は未設定)
   ◆湯湾岳安山岩類と接触変成作用(龍門の滝、蔵王岳など;安山岩、ホルンフェルス)
2)姶良カルデラ形成以降の火山活動と錦江湾の環境変遷(鹿野和彦ほか,2022)
①約30000年前 巨大噴火で姶良カルデラ形成 当時は淡水湖
   ◆入戸火砕流堆積物(まさかり海岸・新城麓など;シラス台地形成)   
②約26000年前 カルデラ南縁で桜島火山の活動開始
   ◆桜島北岳の噴火活動(桜島古期北岳の溶岩流、桜島薩摩など)
③約15000年以降 湾奥海底から大量の軽石や火山灰の噴出
   ◆若尊カルデラの形成(たぎり)
④約14500年前 海面の上昇により海水の流入(約13000年前 水深100mを越える)
   ◇淡水から海水への環境変化を示す地質(新島地震観測井コア;珪藻化石)
⑤約8100年前~ 海域での堆積物と底生動物
   ◇蒲生川の貝化石
   ◆約6000年前 燃島貝層(新島)
⑥約8000年前 姶良地域でマール(爆裂火口)の形成
   ◆米丸マール、住吉池(上久徳の地層)
⑦桜島安永噴火(1779年)により、海底の隆起で新島ができる
   ◆安永諸島(新島)、
⑧大正噴火(1914年)により桜島が島から陸(陸続き)へ
   ◆大正溶岩(桜島口)
4.ジオストーリーの構築
1)高隈山花崗岩貫入のジオストーリー
 白亜紀の四万十累層群に、花崗岩類が貫入し、その接触部がホルンフェルス化して、硬くなる。その後の地盤の隆起、岩盤の風化・侵食により、硬くなった部分が残り、花崗岩は削られて、錦江湾に注ぎ込む大きな流域を形成する(本城川流域)。花崗岩体は冷えて固まる時に縦方向、横方向の亀裂が入り、立方体や直方体の岩塊となり、風化侵食によって、丸みを帯びることがある。平滑な面構造は、渓谷の谷底に滑らかな形状となり「白磁の床」をつくり出す。また、丸みを帯びた巨大な岩塊は、河床に堆積し、独特の景観(猿ヶ城渓谷)をつくるとともに、キャニオニングなどのアクティビティを提供している。
2)姶良カルデラ(錦江湾奥)の多様な地形地質が生んだ磯の生物多様性
 姶良市重富海岸に代表される「干潟」や「磯」、溶岩によって形成された「岩礁」は、錦江湾の海岸域の多様な地形地質から構成される。干潟や礫浜に生息する生き物や、岩礁地帯の生き物などはその種類や生活様式が多様性に富んでいる。
3)桜島大正噴火(大正溶岩)のジオストーリー
 大正噴火(大正溶岩)で桜島と大隅半島が陸続きになることにより、何が起こったのか。「大正噴火が及ぼしたもの」について列挙する。
 海域:海域の封鎖、海流の停滞、錦江湾の水質に変化
 陸域:溶岩と大量の降下軽石(ジオサイト:溶岩なぎさ遊歩道(桜島)、有村溶岩展望所(桜島)、黒神埋
    没鳥居(桜島)、牛根麓埋没鳥居(垂水))
 産業:掘り下げてみよう!ブリやカンパチの養殖は、大正溶岩のおかげ?
 生活:交通の利便性 集落の移設から生まれた特産品「つらさげ芋」
5.まとめと課題
 桜島・錦江湾ジオパークでは、「火山と人と自然のつながり」をメインテーマとし、ジオサイト等を通して、観光客や地域住民にわかりやすく伝えるために6つのストーリーで紹介している。構築したジオストーリーを6つのストーリーに組み込むことで、錦江湾エリアの活性化に繋げていく必要がある。

引用文献:鹿野和彦ほか,2022,地質雑,128,43-62.