日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッションポスター発表

T7[トピック]鉱物資源研究の最前線

[1poster25-27] T7[トピック]鉱物資源研究の最前線

2023年9月17日(日) 13:30 〜 15:00 T7_ポスター会場 (吉田南総合館北棟1-2階)

[T7-P-3] 多変量解析および同位体分析に基づく北西太平洋レアアース泥の高次元化学層序とその起源

*安川 和孝1、田中 えりか2,3,1、宮崎 隆4、Vaglarov Bogdan4、常 青4、中村 謙太郎1,3、大田 隼一郎1,3、藤永 公一郎3,1、岩森 光5,4、加藤 泰浩1,3 (1. 東京大学大学院工学系研究科、2. 高知大学、3. 千葉工業大学、4. 海洋研究開発機構、5. 東京大学地震研究所)

キーワード:レアアース泥、海底鉱物資源、遠洋性粘土、多変量解析、同位体分析

南鳥島周辺のレアアース泥を含む深海堆積物 (遠洋性粘土) 層は,その全岩化学組成の特徴に基づき,5つのユニットとそれらに挟在する3つのレアアース濃集層に区分されてきた [1].この化学層序によって,外見上均質な遠洋性粘土であるレアアース泥の各層がコア間で対比可能となり,これによってレアアース濃集層の空間的連続性や大規模な堆積層削剥の存在が明らかとなった [1].
本研究では,南鳥島周辺のレアアース泥に見られる化学層序のより包括的なキャラクタリゼーションを目指して,当該海域で採取された計66本のピストンコア試料から分取された計1,646試料×41元素の全岩化学組成データ [2–6] を対象に統計解析を行った.解析にあたっては,元素濃度データに対数比変換を施してから白色化 (変数同士を無相関かつ分散1に規格化する操作) を行い,k-meansクラスター分析 [7] を適用し,統計的および地質学的観点に基づいて全データを計10個のクラスターに分類した.得られた10個のクラスターで各堆積物試料をラベリングし,海底面下でのそれらの深度方向分布に着目すると,多数のコア間において共通した順序でクラスターが並ぶことが分かった.すなわち,本研究のクラスタリングにより,41元素の情報を反映した高次元化学層序が構築された.
さらに,各クラスターの中心に最も近い試料を各クラスター (化学層序ユニット) の代表試料と見なし,その10試料からケイ酸塩成分を分離してSr-Nd-Pb同位体分析を実施した.その結果,堆積層の下位から上位に向かって,マトリックス成分としての風成塵が北米由来とアジア由来の混合からアジア由来の卓越へと長期的かつ不可逆的に変化していることが明らかとなった.また,その間に西太平洋の島弧火山由来と考えられる火山起源成分の影響が重なることも示された.レアアース泥の化学層序として記録されたこれら一連の変化は,太平洋プレートの移動および伊豆-小笠原-マリアナ島弧の活動に影響を受けてきた,北西太平洋の長期的な堆積史を反映していると考えられる.

[1] Tanaka et al. (2020) Ore Geol. Rev. 119, 103392. [2] Iijima et al. (2016) Geochem. J. 50, 557-573. [3] Fujinaga et al. (2016) Geochem. J. 50, 575-590. [4] Takaya et al. (2018) Sci. Rep. 8, 5763. [5] Yasukawa et al. (2019) Geochem. Geophys. Geosyst. 20, 3402-3430. [6] Tanaka et al. (2021) Minerals 10, 575. [7] Iwamori et al. (2017) Geochem. Geophys. Geosyst. 18, 994-1012.