日本地質学会第130年学術大会

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セッションポスター発表

T8[トピック]フィールドデータにおける応力逆解析総決算

[1poster28-37] T8[トピック]フィールドデータにおける応力逆解析総決算

2023年9月17日(日) 13:30 〜 15:00 T8_ポスター会場 (吉田南総合館北棟1-2階)

[T8-P-4] 日本海拡大時の棚倉堆積盆から得られた応力解析結果の評価

*細井 淳1 (1. 産総研・地質調査総合センター)

キーワード:棚倉断層帯、岩脈、小断層、男体山火山角礫岩、栃原流紋岩

棚倉断層帯沿いには、日本海拡大時にその運動によって形成された棚倉堆積盆が分布する.棚倉堆積盆は17–15 Ma頃に短期間の間に,急速な堆積盆の発達と沈降・海進,堆積盆の埋積,隆起が生じた (Hosoi et al., 2020, 2023).しかし,堆積盆の発達を左右した棚倉断層帯の運動については諸説ある.また,正確な年代に基づく堆積盆形成前後の古応力とその変遷については明らかになっていない.
応力解析法のうち,岩脈を用いた手法はその応力の時期を岩脈貫入の時期に制約できる.そこで発表者は岩脈を用いた解析を実施し,古応力とその時期の推定を行った.具体的には,棚倉堆積盆埋積物中の男体山火山角礫岩から得られた52条の岩脈を用いた.男体山火山角礫岩の年代は16.6 Ma頃である(Hosoi et al., 2023).応力解析は岩脈の姿勢の分布をビンガム分布に当てはめて推定する手法(Yamaji and Sato, 2011; Yamaji, 2016)を用いた.
応力解析の結果,応力比中程度のNW–SE引張応力が検出された.棚倉堆積盆の近傍に分布する栃原流紋岩(約17.2 Ma)からは応力比中程度のWNW–ESE引張応力が得られている(細井ほか,2021).これは男体山火山角礫岩から得られた応力と比較して引張方向が似ており.応力角距離に基づく応力の類似度判定(Yamaji and Sato, 2009)では中程度の類似度(resemble)であった.シンプルに考えれば,栃原流紋岩から男体山火山角礫岩の火山活動まで(約17.2–16.6 Maまで),概ねNW–SE引張応力であったことになる.しかし棚倉堆積盆では丁度その時期に反時計回りのブロック回転運動が生じており(Hosoi et al., 2023),その運動を加味する必要がある.回転運動が生じたブロックの認定と戻す回転量によって,古応力とその変遷は異なる結果になる可能性がある.日本海拡大時には島弧の回転又はブロック回転が生じていることから,当時の正確な古応力を求めるためには,その応力の時代推定だけでなく、回転運動の有無とその時期、回転量の評価が必要になるだろう. 本発表では,別途実施中の小断層解析の予察的結果と考察についても触れ,棚倉堆積盆の応力史と発達史についても議論する.
文献: Hosoi et al., 2020. Journal of Asian Earth Sciences, 104157. 細井ほか, 2021, 地質雑, 395–402. Hosoi et al., 2023. Tectonics, e2022TC007642. Yamaji, 2016, Island Arc, 25, 72–83., Yamaji and Sato, 2009. Journal of Structural Geology, 125, 296–310. Yamaji and Sato, 2011, Journal of Structural Geology, 33, 1148–1157.