130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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G. General Session

[1poster39-68] G. General Session

Sun. Sep 17, 2023 1:30 PM - 3:00 PM G1-1_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[G-P-7] Discovery of undescribed volcanic ash layer from south offshore of Iriomote island

*Masataka AIZAWA1, Shotaro MINETA2, Atsushi YAFUSO2, Ke-han SONG2, Ryo NAKANISHI3, Ryuichi SHINJO2,4 (1. Science Engineering, Akita Univ., 2. Engineering and Science, Univ. Ryukyus, 3. Science, Kyoto Univ., 4. RIHN.)

Keywords:EAGER/MD214, Volcanic ash, Marine sediment, Ryukyu arc

はじめに
2018年6月5日~27日,台湾周辺における甚大な熱帯性の気象災害(台風・大雨・高潮など)やテクトニックイベント(地震・津波など)による地質記録をアーカイブすることを目的として,フランス国立海洋開発研究所(IFREMER),国立台湾大学(NTU),台湾国立中央大学(NCU),台湾海洋科技研究センター(TORI)などが共同で,R/V Marion Dufresneによるピストンコアリング調査などを実施した[1]。本航海はEAGER(Extreme events Archived in marine GEological Records off Taiwan)航海と命名され,日本からは琉球大学の新城・相澤(当時)の2名が参加した。本航海では,琉球列島の先島諸島周辺および台湾近海において,最大層厚が数十cm~1 mに達するいくつかの火山灰層を発見した。本発表では,沖縄県西表島南方の海底堆積物中から発見された未知の火山灰層について,基本的な記載と化学組成分析の結果を報告する。

試料
コアサイトMD18-3530およびMD18-3531では,それぞれ22.68 mおよび23.59 mのピストンコアが得られた。大部分はシルト質であるが,MD18-3530の1074–1114 cm bsf(below seafloor)から灰白色の火山灰層(以下,MD-Aテフラと呼ぶ)を発見した。火山灰はシルトを挟みながら,断続的に1200 cm bsfまで確認されている。また,MD18-3531の600–603 cm bsfから暗灰色~灰色の火山灰層(以下,MD-Bテフラ),1495–1696 cm bsfから暗灰色~灰色の火山灰層(以下,MD-Cテフラ)を発見した。MD-Cテフラは所々にシルトとのラミネーションがみられ,正級化構造を繰り返す。

分析結果
これらの火山灰は火山ガラスに非常に富み,鉱物および岩片は極めて少ない。軽鉱物は石英と斜長石,重鉱物は普通輝石,シソ輝石,普通角閃石,黒雲母を含む。火山ガラスはいずれも完全に水和しており,水和層と非水和層の二重構造はみられなかった。軽石型とバブルウォール型がほぼ半々の割合で含まれている。量としてはごく少量だが,褐色ガラスも含まれる。
MD-Bテフラ中の火山ガラスは,未脱水状態で1.499–1.502の屈折率を有し,EPMA分析では,全分析点の平均がSiO2 = 79.53 wt%,TiO2 = 0.13 wt%,Na2O = 2.02 wt%,K2O = 3.46 wt%で,かなりシリカに富む流紋岩組成であった。MD-AとMD-Cテフラの化学組成は類似しており,未脱水状態の火山ガラスの屈折率は1.507–1.513と極めて高く,EPMA分析では,SiO2 = 75.21–77.69 wt%,TiO2 = 0.45–0.53 wt%,Na2O = 1.49–3.58 wt%,K2O = 2.16–3.20 wt%で,MD-Bテフラに比べるとシリカに乏しい流紋岩組成を示した。
火山ガラスのみを集め,酸分解法により微量元素組成を測定したところ,いずれの火山ガラスにおいてもNb-Taの負異常とPbの正異常,高いLILE/HFSEを示した。また,REEパターンはLREEからMREEにかけては左上がりで,Euの負異常が明瞭に認められ,MREE~HREEはほぼフラットである。ただしMD-Bテフラは,他のテフラに比べてCsに富み,高いLREE/MREEおよび顕著なEuの負異常を示す。

屈折率および主要元素・微量元素組成の類似性より,コアサイトMD18-3530のMD-AテフラとコアサイトMD18-3531のMD-Cテフラは,同一のテフラ層と考えられる。MD-Bテフラは,MD-A, -Cテフラとは異なる給源あるいは噴火イベントに由来する。 南西諸島の周辺には,北東に九州のカルデラ群,北に沖縄トラフ,北西に台湾の活火山群(大屯火山群,亀山火山),南西にフィリピン諸島がある。本発表では,これらの地域で報告されている火山岩や火山灰の化学組成などに基づき,給源の可能性がある火山地域についても議論する。

引用文献
[1] Babonneau, N. and Ratzov, G., 2018, MD214/EAGER cruise, RV Marion Dufresne.