130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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G. General Session

[1poster39-68] G. General Session

Sun. Sep 17, 2023 1:30 PM - 3:00 PM G1-1_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[G-P-8] Paleo-environment and pre-volcanic eruption of Genbudo Cave basalt, Toyooka city, Hyogo prefecture.

*Noritaka Matsubara1,2, Kyohei Sano1,2, Teina Nakashima3, Taisei Fujiwara4, Koshi Yagi4, Ryo Takahashi5, Kouichi Kawai5 (1. Graduate School of Regional Resource Management, University of Hyogo, 2. San'in Kaigan Geopark Promotion Council, 3. genbudo-museum, 4. Hiruzen Institute for Geology and Chronology Co., Ltd., 5. CTI Engineering Co., Ltd.)

Keywords:geopark, paleoenvironment, genbudo, basalt, Quaternary period

兵庫県北部,豊岡市の円山川沿いには,松山基範博士が世界で初めて地磁気逆転現象を提唱するきっかけとなる研究が行われた玄武洞がある(Matuyama, M., 1929).玄武洞周辺にはアルカリ玄武岩からなる溶岩やスコリアが分布し,それらは大きく玄武洞玄武岩と赤石溶岩に分けられる(玄武洞団体研究グループ,1991).また,これら玄武岩の絶対年代は,川井・広岡(1966)によって1.61 MaのK-Ar年代が,先山ほか(1995)によって玄武洞溶岩のかんらん石玄武岩について1.53±0.06Ma, 玄武洞対岸の伊賀谷の無斑品質玄武岩について1.75±0.14MaというK-Ar年代が報告されている.  これらの玄武岩溶岩は,その分布から玄武洞の対岸に噴火口があり,そこから流れ出した溶岩か当時の谷の地形に沿って流れ下ったものと考えられている(鈴木,1925;玄武洞団体研究グループ,1991).しかし,玄武洞玄武岩が活動する直前の古環境についての具体的な議論については不十分である.また,玄武洞の対岸にあるスコリアが,玄武洞玄武岩の活動に関連して形成したかどうかも十分議論されていない.
 今回,玄武洞において,玄武洞溶岩と考えられている玄武岩溶岩と,その基盤となる河川堆積物と考えられる上方に細粒化する未固結礫岩砂岩シルト岩互層の境界付近において,ペペライトと考えられる玄武岩と砂の混在相が,玄武洞の対岸に原地性ハイアロクラスタイトと考えられるジグソーフィット構造のある玄武岩を見出した.また,玄武洞周辺において,下部に砂との混在相を有する溶岩が玄武洞溶岩と別のユニットであり,玄武洞溶岩の下部に溶岩の境界があることを見出した.そこで,玄武洞溶岩と玄武洞溶岩の下位に当たるものと考えられる下部に混在相を有する玄武岩,玄武洞の対岸に露出するジグソーフィット構造のある玄武岩,そして玄武洞の対岸二見山付近に分布するスコリアを対象にK-Ar年代を行った.その結果,玄武洞玄武岩からは今までと矛盾しない年代値(1.64±0.09Ma)が出たが,それ以外では玄武洞玄武岩から報告されていたものより古い,約2Ma前後のまとまった年代値(玄武洞下玄武岩・砂礫互層混在相2.19±0.10Ma, 玄武洞対岸ジグソーフィット構造のある玄武岩2.10±0.09Ma, 二見山付近に分布するスコリア2.04±0.23Ma)が見いだされた.これは,玄武洞玄武岩が活動する以前にも玄武岩が噴出する火山活動があり,スコリア丘はその活動で形成したことを示唆している.また,ハイアロクラスタイトや,母岩と火山岩の同時性を示す混在相,ペペライト(Skiling, et. al., 2002など)が河川堆積物中に存在したことは,これら火山活動が起きた際の古環境が,一部水域を伴う河川環境だったことを示唆している.
<引用文献>
玄武洞団体研究グループ(1991)兵庫県北部玄武洞地域の第四紀火山岩の地質と岩石, 地球科学. 45, 131-144.
川井直人・広岡公夫(1966),西南日本新生代火成岩類若干についての年代測定結果(演旨),総合討論会資料:年代測定結果を中心としてみた日本の酸性岩類の形成時期,日本地質学会関連4学会連合学術大会総合討論会資料集, 5-5.
Matuyama, M. (1929) On the direction of magnetization of basalt in Japan, Tyosen and Manchuria, Proc. Imp. Acad. Japan, 5, 203-205.
先山徹・松田高明・森永速男・後藤篤・加藤茂弘(1995)兵庫県北部の鮮新世~更新世火山岩類-K-Ar年代・古地磁気・主化学組成-,人と自然,6,149-170.
Skilling, I. P., White, J.D.L. and McPhie, b, J.(2002)Peperite: a review of magma–sediment mingling, Journal of Volcanology and Geothermal Research, 114, 1–2, 1-17.
鈴木醇(1925)但馬玄武洞附近の地形に就いて,地理学評論,1,4,356-365.