130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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G. General Session

[1poster39-68] G. General Session

Sun. Sep 17, 2023 1:30 PM - 3:00 PM G1-1_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[G-P-16] Geological structure of slope covered by tephras, prepared for tephra slide

*Wataru HIROSE1 (1. Hokkaido Research Organization)

Keywords:2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake, Stratified Tephra Slide

【はじめに】
 2018年9月6日午前3時6分に発生した平成30年(2018年)北海道胆振東部地震(以下,胆振東部地震:Mjma6.7)では,安平町,厚真町およびむかわ町の丘陵~山地で地震直後にテフラ層すべりが発生した.テフラ層すべりの大半では,斜面に堆積していた後期更新世~完新世テフラが成層構造を保ったまま滑落したことが指摘されている(廣瀬,2019;石丸ほか,2020など).一方,テフラ層すべりは必ずしも崩壊発生域の斜面全面で発生したわけではなく,斜面上部の遷急線より下位で,斜面の凹状地形において顕著に発生した傾向が認められる.本研究では,崩壊に寄与した地質体の斜面における物性の不均一について地質学的アプローチにより解明することを目指している.
【崩壊に関与した地質】
 テフラ層すべりが多発した厚真町,安平町(旧早来町),むかわ町と,テフラ層すべりが発生しなかった千歳市・苫小牧市・安平町(旧追分町)で,Ta-dテフラを中心に,後期更新世~完新世テフラを対象に現地調査を実施した.テフラ層すべりが発生した斜面では,Ta-dテフラは下位から白色~灰白色細粒火山灰(i層),細粒で淘汰の極めてよい降下軽石堆積物(ii層),灰褐色で緻密かつ細粒の気泡を有する降下軽石堆積物(iii層),赤褐色で細粒~やや粗粒な気泡を有する降下軽石堆積物(iv層),暗灰~茶灰色でやや比重の大きな降下スコリア堆積物(v層)で構成される.層厚分布および軽石の特徴から,iii~iv層は古川ほか(2010)のTa-d2,v層はTa-d1に相当する.Ta-d中には白色で極めて高含水な粘土化軽石(argillized zone:az)が認められ,千木良ほか(2019)の粘土化軽石層(argillized pumice),雨宮・中川(2019)の粘土化帯に相当する.一部の例外を除き,azはiii層中に形成されている.斜面の凹部では側方連続性がよい一方で,斜面の尾根部ではあまり発達しない傾向がある.Ta-d中,ii層の上面~iii層下部にすべり面が形成されている場合が多い.テフラ層すべりが発生しなかった千歳市,追分町などでは,iii層はよく発達するものの,azは規模が小さく,認められないことも多い.
【斜面に堆積したTa-dテフラ層の物性】
 厚真町幌内の,テフラ層すべりが発生した斜面に隣接し崩落を免れた谷頭凹地でテフラ層の物性を検討した.この谷頭凹地におけるTa-dテフラの層厚は100~130cm前後(検土杖で確認)であり,凹地の底付近では極めて高含水で荷重により泥濘化するazが厚さ25cm前後発達している.Ta-dテフラの直下には,厚さ数cm程度の火山灰土を挟んでこの地域の基盤を構成する川端層の砂岩が分布する.Ta-d最下部付近(貫入不能深度から10cm程度上位)において,せん断強度を土研棒(土壌強度検査棒:佐々木,2010)によるベーンコーンせん断試験で求めた.結果は,凹地底部ではCdk=4.8~10.9kN/m2,φdk=4.6°,凹地縁辺をなす比高1~2mの低尾根部ではCdk=3~10.2kN/m2,φdk=9~21.3°となった.一方,テフラすべり発生箇所の側端崖でiii層(非粘土化部)を対象に水平方向に実施したせん断試験では,Cdk=13.5kN/m2,φdk=9.9°となった.azにおいて粘着力・内部摩擦角ともに小さくなる傾向が認められるが,低加重時の最大回転トルクに関するデータが不足しており,引き続き検証を進める. 本研究で科学研究費補助金(基盤B一般:課題番号20H02404)を使用した.

【引用文献】
雨宮和夫・中川雄平(2020)地震によるテフラ層の高速地すべり機構.地震による地すべり災害-2018年北海道胆振東部地震,「地震による地すべり災害」刊行委員会,210-219.
古川竜太・中川光弘(2010)樽前火山地質図.1 : 30,000. 地質調査総合センター.
千木良雅弘・田近 淳・石丸 聡(2019)2018年胆振東部地震による降下火砕物の崩壊:特に火砕物の風化状況について.京都大学防災研究所年報,62B,348-356.
廣瀬 亘・川上源太郎・加瀬善洋・石丸 聡・輿水健一・小安浩理・高橋 良(2018)平成30年北海道胆振東部地震に伴う厚真町およびその周辺地域での斜面崩壊調査(速報).北海道地質研究所報告,90,33-44.
石丸 聡・廣瀬 亘・川上源太郎・輿水健一・小安浩理・加瀬善洋・高橋 良・千木良雅弘・田近 淳(2020)北海道胆振東部地震により多発したテフラ層すべり:地形発達史的にみた崩壊発生場の特徴.地形,41,147-167.
佐々木靖人(2010)土層強度検査棒による 斜面の土層調査マニュアル(案).土木研究所資料,第4176号,40p.