130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T10[Topic Session]Culture geology【EDI】

[2oral701-10] T10[Topic Session]Culture geology

Mon. Sep 18, 2023 8:45 AM - 12:00 PM oral-07 (38-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Masami INOMATA, Yoshihiro MORINO, Hisashi SUZUKI

11:15 AM - 11:30 AM

[T10-O-9] Stone materials of Seven Holy Sites at Mt.Inariyama of Fushimi in Kyoto, Japan.

*Teiji MIKAMI1, Michio KIJI2 (1. Ryukoku Univ., 2. Ritsumeikan High School)

Keywords:Mt. Inariyama, Seven Holy Sites, stone materials

1. はじめに
京都市伏見区にある伏見稲荷大社の背後にそびえ立つ稲荷山には,数多くの岩石によるお塚が祀られている.稲荷山には七神蹟と呼ばれる神蹟があり,それぞれのお塚の御親石には祀られている神名が刻まれている.これらのお塚の岩石を観察すると,お塚ごとに使用されている岩石種が違い,また稲荷山を構成しているジュラ紀付加体丹波帯の堆積岩類やそれらに貫入している火成岩類とは異なった岩石も多数あることが窺える(三上・貴治,2022).ここでは,七神蹟(田中社,下社,荷田社,中社,上社,御剣社,御膳谷)のお塚の岩石やその周囲の玉垣,眷属(狛狐)などの石材について調べ,その産地についても調査した.

2. 各神蹟の石材と産地
稲荷山の四ツ辻から荒神峯に至る途中に,田中社がある.ここに祀られているお塚の御神石は砂岩で,またその御神石の台座となっている神石台・四ツ石・石垣は緑色片岩や石灰岩,砂岩,石英閃緑岩(鞍馬石),石英片岩,玄武岩(緑色岩),層状および塊状チャートから構成されている.さらに下の台座には花崗斑岩が使用されている.田中社での構成岩類の特徴は多種多様で,特にお塚の中では唯一石灰岩が含まれている.周囲の石玉垣は花崗岩が使用されている.下ノ社(三ノ峯)の御神石は砂岩であり,御神石の台座となっている神石台・四ツ石,石垣は玄武岩(緑色岩)や泥質岩,層状チャート,石英閃緑岩(鞍馬石)からなり,最下部石垣の花崗岩には淡桃色のアルカリ長石を含む花崗岩が使用されている.眷属や神石台の鳥居は花崗岩(北木島産)である.荷田社(間ノ峰)の御神石には石英閃緑岩(鞍馬石)が使用され,神石台・四つ石,石垣には石英閃緑岩の他,泥質岩類,層状チャート,最下部石垣には層状チャート,砂岩,泥質岩が使用されている.中社(二ノ峯)では御神石に砂岩,神石台・四ツ石・石垣には富士山の玄武岩が用いられているのが特徴である.上社(一ノ峯)も岩石種が多様で,御神石は砂岩および石英閃緑岩,神石台・四ツ石および石垣には,石英閃緑岩,緑色片岩,チャート,玄武岩(緑色岩),砂岩が用いられている.長者社(御剣社)については,御神石は現地性の大きな磐座にしめ縄を施して祀られている.これは稲荷山の層状チャートである.奥村社(御膳谷)の御神石は石英閃緑岩が,祭事に使用される御饌石には稲荷山の層状チャートが用いられている.また産地については伏見稲荷大社から修繕の依頼を受けた石材店の職人や各神蹟茶店の方の話から産地が確かめられた.御神石に使用されている砂岩の多くは和泉層群の砂岩で,和泉石の特徴とも一致する.ただし台座や石垣に使用されているものは一部付加体起源(丹波帯)と思われるの砂岩もある.中社(二ノ峯)の石垣については茶店の方からの話で産地が富士山であることが判明し,岩石種の様相に一致する.石玉垣や眷属の花崗岩については,建立年代の古いものは白川花崗岩が使用されており,比較的建立年代が新しい(昭和以降)のものは北木島産の花崗岩が使用されているものが多い.ただし下社(三ノ峯)最下部の花崗岩は万成石や六甲などの淡桃色のアルカリ長石を特徴的に含む花崗岩である可能性がある.

3. まとめ
以上のことから,稲荷山のお塚の石材は,稲荷山を構成している丹波帯やそれを貫く火成岩などの構成岩類とは異なる岩石種も多い.このことは,地元の稲荷山周辺の石材よりも,建立した石材商の流通や取引に関係の深い地域の石材が使用されている可能性が高いことを示している.

<文献> 三上禎次・貴治康夫(2022),伏見稲荷大社「朱」第65号,p154-167.