130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology【EDI】

[2poster26-52] T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

Mon. Sep 18, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T6_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T6-P-16] (entry) Fan delta slope=Submarin fan sequence of Nakaminato Group influenced by Late Cretaceous East Asia tectonics

*Jumpei SAIGAN1, Kiichiro KAWAMURA1 (1. Yamaguchi university)

Keywords:Late Cretaceous, Nakaminato Group, Submarine Fan, Fan delta

《はじめに》
那珂湊層群は茨城県ひたちなか市の白亜紀後期の海成堆積層であり,下位より築港層・平磯層・磯合層で構成されている (築港層は現在消失).Masuda and Katsura(1978)ではWalker(1978)のWalker Fanとの対比から堆積域を海底扇状地としている.この海底扇状地のモデルは現在までに粒径や供給形態,地形を加味したさらに多様なモデルが示されている (Reading and Richards, 1994).
本研究では地表踏査を基に白亜紀後期の後背地・前弧環境を踏まえた海底扇状地モデルを考察し、那珂湊層群でのより詳細な堆積環境を提示する.
《野外調査による那珂湊層群堆積相の特徴と解釈》
以下に地表踏査の結果より,那珂湊層群の堆積相を6区分し,その特徴と解釈を記す.
1)平磯層下部(HL)(特徴)泥岩層が卓越し,変形を受けた数m厚の 厚層砂礫岩層が狭在する.泥岩層には変位量約10cm-3mの共役・逆断層とスランプ褶曲が広く発達する.(解釈)泥岩層の褶曲と共役・逆断層の一部は海底地すべりの末端部を示すと考え,変形厚層砂礫岩は斜面への近接を予感させる事から、堆積環境は斜面近傍の海盆~斜面下部と推定する.
2)平磯層上部(HU)(特徴)泥岩層がやや減少し,砂礫岩層が増加する上方粗粒化の傾向にある.植物片が多産し,貝化石片も確認された.ここでもスランプ褶曲が観察される.(解釈)上方粗粒化とスランプ褶曲からはHLより斜面上方の堆積環境を示すと考える.
3)磯合層下部1(IL1)(特徴)砂礫岩層の急激な増加によって特徴づけられる.礫組成は火成岩類が最も多く,約75%を占める.Convolute laminationを示す砂岩層と数m厚の中~巨礫岩互層の重力流堆積物が確認された.一部の砂岩層には生痕化石が見られる.ここでもスランプ褶曲が確認された.(解釈)礫の増加と砂岩中の生痕化石は更なる浅海化を予感させる.粗粒な礫岩層の堆積はChannel/Chute上の堆積物と解釈する.また,スランプ褶曲は堆積環境が引き続き斜面であったことを想定させる.
4)磯合層下部2(IL2)(特徴)ILIと対照的に再び泥岩層が卓越する.ILIとの境界は大規模な傾斜逆転層が見られ,礫主体のILIから本堆積相への変化過程は不明である.本堆積相の最上部では生痕化石が見られた.(解釈)泥岩層の卓越は深海化を想定させ,逆転層を大規模スランプ構造とすると深海化した斜面と考えることができる.
5)磯合層上部1(IU1)(特徴)泥質部に所々に砂礫岩層を挟在し,緩やかな上方粗粒化の傾向にある.生痕化石と生物擾乱が砂岩層と泥岩層で見られ,合弁二枚貝や炭化木片が泥岩層で見られた.スランプ褶曲は一か所のみ観察された.(解釈)上方粗粒化,化石の頻出,スランプ褶曲減少の三つの特徴は,陸に近接した浅海化する静穏な緩斜面を想定させる.
6)磯合層上部2(IU2)(特徴)引き続き上方粗粒化傾向にあり,砂礫岩層によって特徴づけられる.ここでもスランプ褶曲が一か所のみ観察された.IU2と同様生痕化石や炭化植物片も確認される.(解釈)砂礫岩層の増加と化石の頻出から,IU2から引き続き浅海化する緩斜面を想定する.
また,HU~IL1では粗粒化を示すのに対し,IL2では泥質優勢となるなど,堆積進行に伴い,海水準の影響を受けた可能性が示唆される.
以上より那珂湊層群は主として,斜面の発達と同時に浅海化を示す粗粒堆積物と地すべり体に富んだ堆積層であり,少なからず,海水準変動の影響を受けていたと考える.
《ファンデルタスロープ=海底扇状地》
石坂ほか(2021)では,白亜紀後期の前弧に沿った後背地隆起帯の存在がしめされており,那珂湊層群の礫組成からもこれを支持できると考える.この場合,隆起帯下のデルタから直接に埋積が進行する前弧海盆へと粗粒堆積物を供給するファンデルタの形成を推測する.Reading and Richards (1994) ではこのような後背地の隆起帯に起因したファンデルタのスロープ上の堆積体について,粗粒粒子や地すべり体に特徴づけられたGravel rich typeの海底扇状地としてモデル化している.上記の那珂湊層群の特徴,すなわち粗粒堆積物,地すべり体,浅海化と斜面の発達は前弧海盆を粗粒斜面が前進するというこのファンデルタスロープ上の海底扇状地の発達過程と符合するものであると考える.
《参考文献》
石坂ほか (2021) 地学雑, 130, 63-83.
Masuda and Katsura (1978) Ann. Rep. Inst. Geo., Univ. Tsukuba, 4, 26-29.
Reading and Richards (1994) AAPG Bull., 78, 792-822.
Walker (1978) AAPG Bull., 62, 932-966.