10:15 AM - 10:30 AM
[S1-O-2] [Invited] Igneous activity transition in East Asian convergent plate boundary from the view point of ages of the Cretaceous granitoids in Kyushu
Keywords:Kyushu, Cretaceous, granitic rocks, zircon age
西南日本内帯の白亜紀-古第三紀花崗岩類は,基本的に大陸側に向かって若くなる傾向を持ち(Iida et al., 2015),九州でも同様と考えられてきた(大和田ほか, 1999;Tsutsumi, 2022).しかしながら,最近のジルコンU-Pb年代測定により,九州の白亜紀花崗岩は大陸側に向けて単調に若くなるのではなく,大陸側と海洋側双方に向かって古くなる年代傾向を持つことが分かった(図A).
巨大海台の沈み込みによりイザナギプレートのスラブが水平となったため,ジュラ紀の火山前線はアジア大陸の内陸にあった(Kiminami & Imaoka, 2013).ジュラ紀末からのスラブの剥離とロールバックにより火山前線が海洋側に移動した結果,朝鮮半島の白亜紀花崗岩類は大陸側ほど古い(Kim et al., 2016).北部九州西部花崗岩類は大陸側ほど古くなる94 -112 Maの年代を示し,朝鮮半島南西部と深い関係が示唆される.
一方,北部九州東部花崗岩類は岩石学的特徴(石原ほか; 井沢ほか, 1989),秋吉帯および周防帯への貫入,山陽花崗岩のジルコンU-Pb年代(96-105 Ma; Imaoka et al., 2022; Skrzypek et al. 2016)に対応する北に向かって若くなる96-107 Maの年代などから,山陽帯の西側延長と思われる.また,国東半島中部から西部の花崗岩類は高温型変成岩を伴い,柳井地域および高縄半島の領家花崗岩の年代(主に94-105 Ma; Shimooka et al.,2019; Skrzypek et al. 2016)に対応する96 -100 Maの年代を示すため,領家帯の延長と思われる.国東半島東端は108-110 Maを示し,肥後深成岩類(108-113 Ma; Tsutsumi, 2022)に対応する.
さらに,東部花崗岩類で最も若く北端にある平尾岩体は,西部花崗岩類南端の佐賀岩体および草野岩体よりも古い.このずれは,磁鉄鉱系列花崗岩類の分布と同様,小倉-田川構造線の西側を北に戻すことで解消可能である(石原ほか, 1979).チタン鉄鉱系列と磁鉄鉱系列の境界の位置は海溝からの距離に依存する.よって,草野岩体と佐賀岩体の南部は東部花崗岩類と同様に山陽帯の西側延長部であると考えられる.
以上の結果より,白亜紀中期の東アジア収束域には時代と共に互いに接近する大陸側と海洋側の2つの火山帯が同時に存在したことが示唆される.朝鮮半島と西南日本の花崗岩類はその痕跡であり,九州の白亜紀花崗岩類は2 つの火山帯の「接合部」を示すと考えられる.白亜紀の海洋側の熱活動は120 Ma頃に始まったが,その痕跡は肥後帯や荷尾杵花崗岩などの中部九州南部にのみ残存し,多くは中央構造線(MTL)の衝上(Yanai et al., 2010)によって失われた.本研究の年代学的まとめを図Bに示す.
Iida et al. (2015) Island Arc 24, 205-220.; Imaoka et al. (2022) Eng. Geol. JPN, 12, 5-17.; 石原ほか (1979) 地雑 85, 47-50.; 井沢ほか (1990) 月刊地球 12, 435-439.; Kim et al. (2016) Lothos, 262, 88-106.; Kiminami & Imaoka (2013) Terra Nova, 25, 414–422.; 大和田ほか (1999) 地論 53, 349-363.; Shimooka et al. (2019) JMPS 114, 284-289.; Skrzypek et al. (2016) Lithos, 260, 9-27.; Tsutsumi (2022) Island Arc 31, e12446.; 柳井ほか (2010) 地雑 119, 1079-1124.
巨大海台の沈み込みによりイザナギプレートのスラブが水平となったため,ジュラ紀の火山前線はアジア大陸の内陸にあった(Kiminami & Imaoka, 2013).ジュラ紀末からのスラブの剥離とロールバックにより火山前線が海洋側に移動した結果,朝鮮半島の白亜紀花崗岩類は大陸側ほど古い(Kim et al., 2016).北部九州西部花崗岩類は大陸側ほど古くなる94 -112 Maの年代を示し,朝鮮半島南西部と深い関係が示唆される.
一方,北部九州東部花崗岩類は岩石学的特徴(石原ほか; 井沢ほか, 1989),秋吉帯および周防帯への貫入,山陽花崗岩のジルコンU-Pb年代(96-105 Ma; Imaoka et al., 2022; Skrzypek et al. 2016)に対応する北に向かって若くなる96-107 Maの年代などから,山陽帯の西側延長と思われる.また,国東半島中部から西部の花崗岩類は高温型変成岩を伴い,柳井地域および高縄半島の領家花崗岩の年代(主に94-105 Ma; Shimooka et al.,2019; Skrzypek et al. 2016)に対応する96 -100 Maの年代を示すため,領家帯の延長と思われる.国東半島東端は108-110 Maを示し,肥後深成岩類(108-113 Ma; Tsutsumi, 2022)に対応する.
さらに,東部花崗岩類で最も若く北端にある平尾岩体は,西部花崗岩類南端の佐賀岩体および草野岩体よりも古い.このずれは,磁鉄鉱系列花崗岩類の分布と同様,小倉-田川構造線の西側を北に戻すことで解消可能である(石原ほか, 1979).チタン鉄鉱系列と磁鉄鉱系列の境界の位置は海溝からの距離に依存する.よって,草野岩体と佐賀岩体の南部は東部花崗岩類と同様に山陽帯の西側延長部であると考えられる.
以上の結果より,白亜紀中期の東アジア収束域には時代と共に互いに接近する大陸側と海洋側の2つの火山帯が同時に存在したことが示唆される.朝鮮半島と西南日本の花崗岩類はその痕跡であり,九州の白亜紀花崗岩類は2 つの火山帯の「接合部」を示すと考えられる.白亜紀の海洋側の熱活動は120 Ma頃に始まったが,その痕跡は肥後帯や荷尾杵花崗岩などの中部九州南部にのみ残存し,多くは中央構造線(MTL)の衝上(Yanai et al., 2010)によって失われた.本研究の年代学的まとめを図Bに示す.
Iida et al. (2015) Island Arc 24, 205-220.; Imaoka et al. (2022) Eng. Geol. JPN, 12, 5-17.; 石原ほか (1979) 地雑 85, 47-50.; 井沢ほか (1990) 月刊地球 12, 435-439.; Kim et al. (2016) Lothos, 262, 88-106.; Kiminami & Imaoka (2013) Terra Nova, 25, 414–422.; 大和田ほか (1999) 地論 53, 349-363.; Shimooka et al. (2019) JMPS 114, 284-289.; Skrzypek et al. (2016) Lithos, 260, 9-27.; Tsutsumi (2022) Island Arc 31, e12446.; 柳井ほか (2010) 地雑 119, 1079-1124.