日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T9[トピック]マグマソースからマグマ供給システムまで【EDI】

[3oral501-08] T9[トピック]マグマソースからマグマ供給システムまで【EDI】

2023年9月19日(火) 09:00 〜 11:00 口頭第5会場 (共北27:吉田南総合館北棟)

座長:齊藤 哲(愛媛大学理工学研究科)、江島 圭祐(山口大学)

09:00 〜 09:15

[T9-O-1] [招待講演] 北部九州白亜紀花崗岩類の岩体区分―特に糸島花崗閃緑岩についての提言

【ハイライト講演】

*村岡 やよい1、宮崎 一博1 (1. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)

世話人よりハイライトの紹介:北部九州白亜紀花崗岩バソリス群の中で最大の分布面積を誇る糸島花崗閃緑岩については, これまで単一のマグマ活動で形成された岩体なのか議論があった. 本講演は,詳細な野外調査により新たに見出した記載岩石学的特徴の異なる岩体の報告など, 糸島花崗閃緑岩について岩体再区分・細分化の可能性を提案するものであり, フィールドジオロジスト必聴の講演である.※ハイライトとは

キーワード:北部九州、花崗岩類

北部九州には白亜紀に活動した花崗岩類が広く分布する.これらの花崗岩類は岩相や貫入関係,ジルコンの性質,年代などから17岩体に大別され(大和田・亀井,2010など),その後にも各花崗岩体についての詳細な調査が進められている.例えば,福岡県添田町や京都郡みやこ町周辺に産する添田花崗閃緑岩はその岩石学的特徴・年代・同位体比組成から,落合花崗閃緑岩と伊良原花崗閃緑岩で構成される複合岩体であることが明らかになるなど(柚原ほか2019,2020など),岩体区分が見直された例もある.また,堤・谷(2022)は北部九州花崗岩類のジルコンU-Pb年代を多数報告した.その中で,花崗岩体ごとにジルコンU-Pb年代のまとまりがあることを指摘する一方で,糸島花崗閃緑岩と深江花崗岩はサンプルごとに年代がばらつくことから,岩体区分の再考の余地があることも指摘されている(堤・谷,2022).
 糸島花崗閃緑岩は北部九州花崗岩類の中でも最大の分布面積(東西約60km,南北約35km)を誇り,糸島半島から脊振山地にかけての広い範囲に分布する.背振山地南部では深江花崗岩と漸移関係にあり,累帯深成岩体を形成している(矢田・大和田,2003;大和田・亀井,2010).特に糸島花崗閃緑岩に関して,この大規模な花崗岩体が1度のマグマ活動で形成されたものなのか,同一岩体なのかは疑問視されることもあった.
 現在,産業技術総合研究所地質調査総合センターでは5万分の1地質図幅「前原及び玄界島」を作成中である.「前原及び玄界島」地域は福岡県西部に位置する糸島半島周辺を区画としており,図幅範囲(南北約25 km x 東西約23 km)内には北部九州白亜紀花崗岩類の内,北崎花崗閃緑岩・志賀島花崗閃緑岩・糸島花崗閃緑岩・深江花崗岩・早良花崗岩が分布する.各岩体の分布の概要は,糸島半島北部に北崎花崗閃緑岩とこれに貫入する志賀島花崗閃緑岩,間に変成岩を挟みその南には糸島花崗閃緑岩とこれに貫入する深江花崗岩及び早良花崗岩である.北崎花崗閃緑岩と糸島花崗閃緑岩はいずれも三郡蓮華変成岩に貫入し熱変成を与えている.糸島花崗閃緑岩は図幅内に最も広く産する岩体である.図幅調査にて,従来糸島花崗閃緑岩分布するとされてきた地域に糸島花崗閃緑岩とは記載岩石学的特徴が異なる岩体を見出し,これらを姫島花崗閃緑岩と立石山花崗岩の2岩体に区分した.本発表では図幅調査にて得られた知見,特に新たに区分した2岩体の特徴を紹介する.さらに,地質調査およびその他分析で得られたデータを基に,北部九州最大の面積を誇る糸島花崗閃緑岩の岩体区分と細分化の可能性について考察する.

【参考文献】
・大和田・亀井(2010)日本地方地質誌8:九州・沖縄地方,304-311.
・柚原ほか(2019)地質学雑誌,125,405-420.
・柚原ほか(2020)地球科学,74,83-98.
・堤・谷(2022)日本地質学会(要旨)
・矢田・大和田(2003)地質学雑誌,109,518-532.