一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

2018年6月22日(金) 09:50 〜 16:50 ポスター会場 (7F イベントホール)

[認定P-05] 診療室での診療から訪問歯科診療に移行した顎補綴の一症例

○吉川 浩郎1 (1. 吉川歯科クリニック)

【緒言】
 わが国の頭頸部がんの全がんに占める割合は約5%で,発症ピークは40歳以降であり,高齢社会を迎えたわが国では増加傾向にあり,罹患率が増えてきているといわれている。この度,鼻腔悪性腫瘍に対し摘出手術の既往がある高齢患者の顎補綴義歯の作製とその後のケアと調整を要する事例を経験したので報告する。
【症例】
 患者:A. Y,男性74歳,要介護度5。
 左鼻腔悪性腫瘍に対し摘出手術,放射線療法の既往(左側硬口蓋に摘出窩あり) 脳梗塞, 脳出血の既往あり。
 平成25年6月上旬初診時,主介護者である妻が自家用車で診療所へ付き添い, 患者本人は杖を用いてゆっくりと室内歩行。主訴は副鼻腔のケアと上顎顎補綴義歯の作製希望であり,同日,印象採得を開始した。併せて口腔と副鼻腔ケア(副鼻腔に乾燥した痂皮状の汚れが停滞するため),口輪筋のストレッチ(口唇閉鎖機能低下あり)を開始した。
【経過】
 通法に従い同年7月上旬に顎補綴義歯を完成させ,装着した。その後,義歯調整等を継続していたが一時中断となった。
 平成28年10月に誤嚥性肺炎で入院後,急激にADLが低下し,施設入所となった。その頃から食事中に上顎顎補綴義歯が落ちるようになってきたため,義歯の再作製の依頼を受けた。同年11月上旬より訪問歯科診療にて義歯作製を開始,同時に下顎総義歯(残根上)の作製も開始した。同年12月中旬に装着し,義歯の安定を確認した。
【考察】
 身体機能の低下に伴い顎補綴義歯が不安定になった事例を経験した。義歯を支える口輪筋等の筋力の低下や口腔機能の巧緻性の低下,顎の偏位等の原因が考えられるが,より安定した顎補綴義歯を訪問診療下で作製し,患者の状態に応じた対応ができたと考えている。