The 29th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題ポスター

症例・施設

症例・施設

Sat. Jun 23, 2018 9:30 AM - 3:30 PM ポスター会場 (7F イベントホール)

[P一般-102] 重度な摂食機能障害患者において中心静脈栄養管理下での摂食嚥下リハビリテーションが功を奏した一例

○鈴木 堅司1、熊倉 彩乃1、平井 皓之1,2、植田 耕一郎1 (1. 日本大学歯学部摂食機能療法学講座、2. 日本大学大学院歯学研究科歯学専攻)

【緒言】
 サルコペニアによる筋力低下や,頸椎の骨棘による嚥下障害が複合し重度嚥下機能障害となった患者に対し摂食嚥下リハビリテーションを行った症例を報告する。
【症例】
 80歳代男性。初診時の体重は42kg,上腕周囲長(AC)は19.0cmだった。5年前に胃癌のため胃全摘出しており著明な頸部拘縮を認めた。むせ込みが多く食事を摂取することが困難になり,誤嚥性肺炎にて入院,禁食の状態だった。経鼻経管栄養拒否のため末梢挿入中心静脈カテーテル(PICC)にて栄養管理中であり,主治医より食事の可否判断,および嚥下機能訓練に関して依頼があった。
【経過】
 介入初日,VEにて安静時咽頭内に泡状の唾液貯留を認め,咽頭後壁には喉頭前庭を覆い隠すほどの骨棘があり喉頭蓋の反転を妨げていた。骨棘を避けて嚥下するため左回旋での嚥下を試みたが,トロミ付きの水分やペースト食は骨棘に付着し残留した。トロミなし水分,ゼリーに関してはティースプーン半量ずつ嚥下可能だった。介入3日目以降,ゼリー嚥下訓練,おでこ体操を開始した。5日目以降頚部の可動域訓練開始を,7日以降は呼吸訓練を開始した。9日にCVポートが造設された。33日目,回旋を行わずにきざみ食まで摂取可能になった。34日目に回復期リハビリテーション病院に転院し,ゼリー食より摂取を開始した。
【結果・考察】
 114日目に自宅に退院した際はACが21.3cmで,回旋なしにきざみ食の自力摂取となった。本症例では機能的障害と器質的障害の複合した嚥下障害を呈していたが,経口摂取量の増加に伴い栄養の改善が認められた。それにより咽頭収縮が活発になり骨棘周囲の食塊貯留が減少したと考えられる。